kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

自民党が参院選の選挙公約に「10月の消費税増税」を明記した

 昨日(6/8)、読書ブログに公開した記事を書くのに時間がかかって書きそびれたのだが、自民党参院選の公約を発表し、目立たない形ではあるが今秋に予定通り消費税の増税を行うことが明記された。

 

https://www.asahi.com/articles/ASM675RZKM67UTFK01C.html

 

自民公約、10月の消費増税明記 「早期改憲」盛り込む

 

 自民党は7日、参院選公約を決定し、発表した。10月の消費税率10%への引き上げを明記したほか、憲法改正の実現を重点項目に掲げるなど、おおむね2017年衆院選公約を踏襲した内容となった。外交分野では党の主張をにじませた。

 

 参院選公約は「日本の明日を切り拓(ひら)く。」をキャッチフレーズに、①外交・防衛②経済③社会保障④地方⑤防災⑥憲法改正――の6項目を重点項目に挙げた。

 17年衆院選公約では、重点項目に入った教育無償化の財源として消費税率10%についても記したが、今回の重点項目からは消費税の文言が消えた。具体的な政策を網羅した「政策BANK」のなかで、「本年10月に消費税率を10%に引き上げます」と記した。

 党内では、消費増税に否定的な声があり、増税延期を掲げて衆院を解散する衆参同日選論もくすぶる。公約について議論した7日の総務会でも「景気・経済動向についていろんな議論がある。G20での米中の議論や、これから出てくる(経済指標の)数値を見ていく必要があるのではないか」との声が上がったという。

 岸田文雄政調会長は公約発表会見で、「いま現在、消費税は予定通り引き上げるべきだと考えている。政府はリーマン・ショック級の出来事がない限り引き上げると強調しているが、少なくとも現在、遭遇していない」と説明。衆参同日選になった場合の公約修正について問われると、「仮定に基づいて答えることは控えないといけない」とだけ述べた。

「力強い外交」、党内の不満に配慮か

 公約のトップに掲げたのは外交だ。安倍晋三首相とトランプ米大統領のゴルフ時の写真や、ロシアのプーチン大統領との写真をちりばめ、「力強い外交・防衛で、国益を守る」とうたう。

 特徴は、外務省が4月に公表した19年版外交青書と違いがあることだ。

 19年版外交青書は、18年版にあった「北方四島は日本に帰属する」との表現を削除。対北朝鮮でも「重大かつ差し迫った脅威」「圧力を最大限まで高めていく」との記述がなくなった。ロシアとの領土交渉進展への期待や、北朝鮮から前向きな対応を引き出すための対応とみられている。

 ところが、党公約では北方四島について「わが国固有の領土である」と明記。対北朝鮮についても「国際社会と結束して圧力を最大限に高める」と表記した。

 背景にあるのが、自民党内にくすぶる不満だ。先月の党の会合では、外交青書に対し、「(ロシアとの)交渉が何も進展していないのにメッセージだけ弱めている」「ロシアから文句を言われ、自発的に日本の基本原則を捨てた」などと批判が相次いだ。岸田氏も青書には異論があったとされ、7日の公約発表では「従来の政権与党の訴えていた中身、表現とまったく違いはない」と述べた。

改憲の期限は設けず

 憲法については17年公約と同様、9条への自衛隊明記を含む党の「改憲4項目」を列挙した。そのうえで、17年にあった「党内外の十分な議論を踏まえ」という部分を、「党内外での議論をさらに活発に行う」と変更。「衆参の憲法審査会において、国民のための憲法論議を丁寧に深める」との文言を加えた。

 安倍首相は20年の改正憲法施行を公言しているが、公約では期限は明示せず、「早期の憲法改正を目指す」との表現にとどめた。

 1月からの通常国会自民党改憲4項目の国会への提示をめざしたが、その前段階の国民投票法改正案をめぐって野党側との調整が不調に終わった。党幹部は「参院選を前に憲法論議は進まない」として参院選後にある次期国会で仕切り直す方針に転じている。

 参院選では、首相が改憲発議に必要な3分の2議席を確保できるかも一つの焦点となる。

自民党参院選公約のポイント

【外交・安全保障】

北朝鮮に対する制裁措置の厳格な実施とさらなる制裁の検討

○わが国固有の領土である北方領土問題の解決に向けた日ロ平和条約締結交渉を加速

普天間飛行場辺野古移設を着実に推進

憲法

○初めての憲法改正への取り組み強化

○党内外での議論をさらに活発に。衆参の憲法審査会で、憲法論議を丁寧に深めつつ、早期の憲法改正を目指す

消費税

○10月に消費税率を10%に引き上げ

○ポイント還元の実施、プレミアム付商品券の発行などにより対策

社会保障・子育て】

○人生100年時代へ「3つの100」を実現(人生100年型の年金▽100人100色の働き方改革▽保育受け入れ100%)

在職老齢年金の廃止・縮小

厚生年金の適用拡大

○勤労者皆社会保険の実現(社会保険の適用拡大)

【経済】

○中小企業・小規模事業者の第三者承継を含めた支援策の検討

原発・エネルギー】

原発依存度の可能な限りの低減。2050年に向けたエネルギー転換・脱炭素化

○立地自治体の理解と協力を得て原発を再稼働

 

朝日新聞デジタルより)

 

 普通に考えれば、これで安倍政権は今年10月の消費税増税を予定通り実施するとともに、衆参同日選挙をやる可能性が低くなったといえる。

 ただ、過去二度行われた衆参同日選挙の2回目は、中曽根康弘による「死んだふり解散」だった事実が頭に引っかかってはいる。あれは渡邉恒雄ナベツネ)の入れ知恵によるもので、土壇場まで「衆議院解散はない」と見せかけた中曽根が、突然衆議院を解散した。

 上記朝日新聞デジタルの長文記事も、よく読むと岸田文雄

衆参同日選になった場合の公約修正について問われると、「仮定に基づいて答えることは控えないといけない」とだけ述べた。

と言ったと書いている。また、この記事を書きながらBGMのように流している『サンデーモーニング』でも解散と衆参同日選挙の話をやっている(3番目の話題として取り上げられている)。

 しかし、私は消費税増税の撤回と解散・衆参同日選挙の可能性は低いと思う。それには理由がいくつかある。

 まず、消費税増税に関しては、既に消費税増税ありきで進んでいる事項が結構ある。また、安倍晋三は四選を視野に入れて財務省を敵に回したくないと思っているのではないか。さらに、仮に消費税増税を予定通り行うことを明らかにして参院選を戦っても十分自民党が勝てるくらい現在の野党に勢いがない。また、5月20日に発表された2019年1~3月期の実質国内総生産GDPでも予想に反してプラス材料になった。

 それから衆院解散については、これは誰も指摘していないが、安倍晋三には2017年に小池百合子(と前原誠司小沢一郎)を潰した「成功体験」が忘れられないのではないか。

 思えば、2016年の参院選前にも、安倍晋三衆院選との同日選挙にするのではないかとの声がかまびすしかった。しかし安倍は衆議院を解散しなかった。すると、衆院選の1か月後に行われた東京都知事選に当選した小池百合子のバブル人気が発生し、括弧付きの「リベラル」たちを「ワクワク」させた(笑)。その勢いは翌年夏の東京都議選で「都民ファ□ストの会」が自民党をKOするところまで続き、街宣に出た安倍晋三は罵声を浴びた。図に乗った小池百合子は、前原誠司小沢一郎と共謀して国政進出を図ったが、この局面で前年に安倍晋三衆議院を解散せず、衆参同日選挙を行わなかったことが効いた。安倍は小池一派が衆院選の準備が整わないうちに衆議院解散を打ち、小池一派を潰すとともに、前原誠司民進党を分裂させることにも成功した。こうして「安倍一強」体制がさらに確固たるものになったのだった。

 この成功体験があるから、今は解散権を温存しておきたいという気持ちが安倍晋三に働いても不思議はない。

 もちろん33年前の中曽根康弘にあやかりたいという気持ちの方が安倍晋三に強いことも十分あり得るし、その際に参院選の公約をちゃぶ台返しできるくらいの独裁権力を現在の安倍晋三は持ってしまっているから、そちらの可能性もあるが。

 現在のように権力を批判する言説が絶え果てた「崩壊の時代」においては、独裁権力者は何でもできてしまうという身も蓋もない結論に、今回もまた行き着いてしまった。

国境近くの地域では「いま現地に生きている人たちの意思」よりも重視すべきことがある。それは戦争を起こさせない方策だ

 今日(6/7)ちくま新書から新刊が発売される三春充希氏のTwitterサイトを見に行ったら下記のツイートが目に入ったが、この意見には同意できない。

 

 

 国境に近い地域には、現在住んでいる人たちを思うよりも大事なことがある。それは国家間の争いが起きないような緩衝地域にするという知恵だ。上記ツイートにはその視点が欠落している。この意見では国後島択捉島に軍事基地を建設しまくるプーチンの所業を批判できない。

 昔、ウルップ島は北海道アイヌと千島アイヌの間の緩衝地域とされていたそうだが、現在のロシアの独裁者・プーチンにはそんな知恵はない。もちろん安倍晋三にもない。だから丸山穂高のように戦争をけしかける馬鹿者が出てくる。

 現代に生きる人間は、少しは昔のアイヌの知恵に学んだ方が良い。

「山本太郎支持クラスタ」に懸念される「ファシズムへの傾斜」

 日本でピケティの『21世紀の資本』の邦訳が発売されたのは2014年だった。あの本には膨大な統計データをまとめたグラフが多数載ってたりして、そういうのに慣れていない読者はへこたれるだろうなとは私も思ったが、あの本では本来数学が得意なピケティが本来の数学の演繹的なアプローチを放棄して、「文系数学」的というか帰納的なわかりやすいアプローチをしている。彼が課題としているのは「戦争によらない格差の解消」にほかならないのだが、なぜか日本ではそういう方向の議論が深まらず、ピケティが「ブーム」として消費されてしまったことは痛恨の極みだった。

 特にマルクスというか「宇野経済学」を引き合いに出してピケティを「国家社会主義者だ」と論難した佐藤優の議論には腹が立った。この日記のコメント欄に、佐藤が「安倍のあとにくるであろうファシズムこそ問題だ」と言っていたと指摘された方がいたが、私は「佐藤優こそファシズムを招き寄せようとしている張本人ではないか」と言いたくなる。

 「薔薇マークキャンペーン」についていえば、当初は旧民主・民進系のTwitterアカウントの発信者たちが「薔薇マーク」を頭ごなしに否定しているのを見て腹を立てた。しかし最近では、山本太郎による立憲民主党への強い憎悪を示す発言(これは昨日の日記で少し触れた)や、「日本経済復活の会」へのかかわりが発掘されたりしたことに強い危機感を持っている。後者については、こたつぬこ(木下ちがや)氏もTwitterで取り上げたので(下記)、知る人が増えたようだが、私は「政権交代」の前に当時の反自公ブロガーとしては異端に近いくらいに積極財政政策を推す記事をよく書いていた2008年頃に「日本経済復活の会」へのお誘いをいただいたことがあったので、当時からこの会が極右の巣窟であることは知っていた。なお当然ながら、私は新自由主義者と同じくらい極右が大嫌いなので、お誘いには乗らなかった。

 

 

 結局私は坂野潤治に立ち返ってしまう。坂野は、戦前に行った「反軍演説」が有名な斎藤隆夫が格差には鈍感で、社会大衆党ファシズムに走ってしまったことを繰り返し指摘している。現在も、旧民主・民進系支持の人たちは、90年代の民主党がとってしまった新自由主義路線の惰性が残っているのか格差には鈍感である一方、「大きな政府」を志向しようとするとファシズムの罠が待ち構えているように思われる。

 山本太郎についていえば、この人は本当に小沢一郎に心酔してるんだなあと思う。あれこそ小沢一郎の本音の代弁なのだ。小沢には、自らが仕掛けた小池百合子前原誠司との野合を、立憲民主党の立ち上げによって邪魔されたという強い怨念があるに違いない。それを小沢は自分では言わず、周りの人間である山本太郎に言わせている。それが昔からの典型的な「小沢流」なのだ。

 まあ山本太郎というのは純粋な人なのだろう。だから彼が変な方向に行こうとしてると思ったらそれを正直に指摘して強く批判しなければならない。その意味で、先日こたつぬこ氏が「山本太郎はリベラルとファシズムの間の線上に立っている」と指摘したのは、実に良いことだった。今も少し覗いてみたら、山本氏が変な方向に行かないように歯止めを掛けようとする懸命なツイートがいくつかあった。

 

 

 しかしアブナイのは「山本太郎は間違わない」と断言して憚らない「信者」的なあり方の人が少なくないことだ。これにもこたつぬこ氏は警告している。

 

 

 確かガルブレイスが晩年の著書に書いていたことだったと思うが、政治家は支持者が望む政策しかとれない。「山本太郎が判断を間違わないことは、山本太郎を支持する方々が判断を間違わないことを保証しません」というのは本当にその通りで、これは山本太郎枝野幸男に置き換えても成り立つ。私は、一昨年の衆院選の直前に立憲民主党を立ち上げた枝野幸男が、政権を獲ってもいきなり金融緩和を止めたりはしないと明言したことに接して、この人のもともとの保守的な思想信条には共感できないけれども「風を読む」ことには長けているなあと思ったものだ。しかし現在の立憲民主党は前述のような90年代の民主党がとっていた新自由主義的な惰性を脱せずにいる。それはそういう方向性を立民の支持者が望んでいるからだ。「枝野幸男が判断を間違わないことは、枝野幸男を支持する方々が判断を間違わないことを保証しない」ことの好例だと思う。

 同じことが山本太郎支持者についてもいえる。民主・民進クラスタに対しては新自由主義への傾斜が懸念されるが、山本太郎支持クラスタに対してはファシズムへの傾斜が懸念される今日この頃なのである。

山本太郎に「政党政治否認」のアブナイ前兆を感じる

 何やら、予算委員会もずっと開いていないくせに、安倍晋三通常国会の会期を延長して衆議院の解散を目論んでいるとかいう話だが、それを『news23』(予想通り「リニューアル」しても視聴率はさっぱりだったらしい)が、新サブキャスターの山本恵里伽といういかにも線の細そうな人の声だったと思うが、「総理大臣の専権事項」などと断定的に伝えていたのを聞いて「こりゃダメだ」と思った。報道番組であるならば、ここ数年安倍晋三が弄んでいる7条解散による「解散権」なるものが本当に合憲なのか、総理大臣が好き勝手に短い間隔で解散総選挙を行っている現状を追認していて良いのかという問題意識がまず必要だろう、そうしたこともできないようでは「報道のTBS」の復活など夢のまた夢だろうと思った。15歳近くも年上の雨宮塔子と比較しても安定感を感じさせる小川彩佳はさすがではあるが、メインキャスターの首をすげ替えるだけで番組の視聴率が稼げると思ったとしたら、そう考えたTBSの幹部社員は無能の一語に尽きるだろう。「解散風」など存在しないのだ。

 前置きはこれくらいにして、「野党共闘」の現状を眺めてみると、「野党共闘」の軍師たるこたつぬこ(木下ちがや)氏の最近のツイートを見れば明らかな通り、この共闘は「民共共闘」、あるいは「民共合作」的なものへと性格を変えつつある。これは、いうまでもなく自由党の国民民主党への合流に伴うものだが、民民に合流しなかった山本太郎元号政治団体が「共闘」の枠組みから外れたことを指摘する人が少ないことに奇異の感を抱くのは私だけだろうか。

 元号政治団体への支持率はメディア各社の世論調査の選択肢にも含まれていないためによくわからない。元号政治団体名と「支持率」を検索語としてネット検索をかけたら、日本共産党を天敵視する「日本共産党(左派)」(毛沢東主義系)の事実上の機関紙とされる『長周新聞』の記事*1が筆頭で引っかかり、それには

朝日新聞世論調査では野党では立憲をこえてトップの支持率9%という

と書かれているが、これはこたつぬこ氏が下記ツイートで指摘した通り、ネットで流布するデマを拡散したものに過ぎない。

 

 

 共産党が勢いを失うと喜ぶ立場にある『長周新聞』が山本太郎人気を煽ろうとしていることは前にも指摘したが、山本太郎自身も、どうやら自らが「野党共闘」から離脱したにもかかわらず、「立民主敵論」みたいな立場に立った発言をしているらしく、立民支持者たちから不快の念が表明されている。

 

 

 

 どうやら、上記2件のツイートで引用されている元ツイートの呟きの主が問題ありの人物のようだが、それはともかく、山本太郎自身が政党政治否認に傾く兆しが見え始めたのではないかと危惧する。

 立憲民主党や国民民主党を含む旧民主・民進系のあり方に対しては、私も強い不満を批判を持っているが、それが政党政治否認につながってしまったら元も子もない。それこそ戦前の歴史を繰り返してしまう。

 「崩壊の時代」の中でも、重大なターニング・ポイントが近づいてきたようだ。

経済政策を議論する諸勢力は、財政政策と金融政策の立ち位置をわかりやすく示す二次元グラフを作ってみてはいかがか

 昨日(6/4)で天安門事件から30年。同じ「改元」とやらがあった年でも、息の詰まりそうな重苦しい閉塞感の時代である2019年とは全く異なり、1989年は激動の年だった。年明けの1週間目の日の昭和天皇の死で幕を開けたこの年は、年の終わりまであと1週間を切った日のルーマニアの独裁者・チャウシェスク夫妻の銃殺で幕を閉じた。イランでサルマン・ラシュディに死刑を宣告したばかりだったアヤトラ・ホメイニの死の翌日に起きた天安門事件はその中間にあり、その後に東欧諸国の共産党政権が相次いで倒れた。年の終わりには日本ではバブル景気に浮かれた日経株価指数が最高値を叩き出したりもした。

 『広島瀬戸内新聞ニュース』によれば、アメリカと中国の経済政策はかつてと入れ替わった感があるという。

 

hiroseto.exblog.jp

 

hiroseto.exblog.jp

 

hiroseto.exblog.jp

 

 リンクを張った最後の記事に関して、「課税ベース(課税対象とされる範囲)の拡大」はかつてのレーガン政権同様、安倍政権(第2次内閣以降)でも、法人税率の引き下げとセットで行われてはきている。しかしその中身は、外形標準課税の拡大のように、赤字企業や中小企業に苦しく、黒字出しまくりの某自動車メーカーに代表されるようなガリバー企業には優しいものではないかとの疑念が拭えない。

 とはいえ、この記事を読んで思ったのは、現在、中身の議論を伴わずにネットの一部に熱狂の声が挙がっているMMT(現代金融理論)主唱者やそれに反対する人たち、あるいはリフレ派左派とリフレ派右派、積極財政派と緊縮財政派等々の立ち位置を明らかにするために、さまざまな座標軸をとった二次元(あるいは三次元)のグラフを作ってみてはどうかということだ。

 たとえば、横軸の右側に直接税増税、左側に直接税減税をとり、縦軸の上側に異次元の金融緩和賛成、下側に金融緩和反対をとると、グラフの第一象限(右上)に松尾匡はくるだろうし、日本共産党第四象限(右下)にくるだろう。またリフレ派右派は第二象限(左上)にくるはずだし、大の反リフレ派にして新自由主義者である池田信夫(ノビー)は間違いなく第三象限(左下)にくる。また別系列の反リフレ派である金子勝神野直彦らは日本共産党と同じ第四象限に位置するはずだ。河村たかし減税日本などは直接税減税を訴えているので、彼らの金融緩和に対する姿勢はわからないが少なくともグラフの下側(第三または第四象限)にくると思われる。山本太郎はおそらく松尾匡と同じ第一象限だろうが、河村たかしら「減税真理教」との関係がいまいちはっきりしない。

 別に二次元グラフでなくとも、毎日新聞が国政選挙の度にやっている「えらぼーと」でも良いし、二次元グラフの軸は上記以外に、もっとも普通にとられるであろう消費増税/減税と金融緩和/引き締めや、財政政策内で直接税を横軸、間接税を縦軸にするなどいろいろとり方はあるだろう。

 こんなことを長々と書くのも、「野党共闘」系・共産党系とされるこたつぬこ(木下ちがや)氏が昨日発した一連のツイートを読んで、「薔薇マークキャンペーン」の立ち位置は相変わらず周知及び議論が活発な状態というよりは、こたつぬこ氏が「デマゴーグ」だと言い、私もそれには強く同意する田中龍作を筆頭とする一部の「山本太郎信者」*1による煽動に引っ掻き回されている状態としか思えないからだ。私自身は、基本的には「薔薇マークキャンペーン」に賛同する立場なので、よけいに現状に強い苛立ちを覚える。

 

 

 

 

 

 

 現在、MMT自民党若手議員も推し始め、安倍官邸も興味を示しているという。上記に引用したこたつぬこ氏のツイートの4件目を最初に引用した『広島瀬戸内新聞ニュース』の記事に絡めていえば、トランプも安倍政権もこたつぬこ氏の指摘する「市場の民」に食い込もうとしているかに見える。

 また、民主党政権時代、特に菅政権時代(2010年6月〜2011年8月)に、民主党内や自民党の特に若手タカ派の議員たちの間で、リフレ政策の導入を求める声が強く挙がったことも思い出される。たとえば松原仁(民主、現無所属)の名前がすぐに思い出される。

 自民党参院議員の西田昌司もそうだったかと思いきや、ネット検索をかけたら西田昌司MMT支持だが反リフレで、真逆の立場をとる高橋洋一とやり合ったらしい。あの「経済右派」の朝日新聞編集委員・原真人のツイートで知った。

 

 

 西田昌司高橋洋一の立ち位置の比較などは、先に書いた二次元グラフにプロットすればよくわかるのではないだろうか。

 現状は、共産党系と見られるこたつぬこ氏や、旧民主・民進系と見られる「軍畑先輩」氏*2の双方から「薔薇マークキャンペーン」は「減税真理教」の同類ではないかとの疑念*3が提起されている。そのような誤解を解くとともに、現在のような煽り文句先行ではないまっとうな議論へと導くために、二次元グラフの活用を含めた「薔薇マークキャンペーン」の立ち位置の説明が必要なのではないかと強く思う。

*1:田中龍作が立憲民主党以外に小沢一郎が属する国民民主党をも批判のターゲットにしていることから推して、もはや「小沢信者」から分化したとみるべきだろう。

*2:https://twitter.com/ixabata

*3:もちろん両氏はそのような言い方はしてしないが、私はそういう意味に理解した。

「安倍政権のメディア支配」という問題の核心を避けたリニューアル『news23』の前途多難

 リニューアルされた『news23*1の初回、やはりダメだった。私は近年帰宅時間が遅くなってこの番組を見ることを余儀なくされる日が多いが(新聞もプロ野球も反読売なので日テレのゼロとかいうのは見ない)、一昨年に安倍晋三の圧力で大幅に番組が変わっていこうダメになった部分が基本的に継承されていた。

 一昨年以降、この番組の何がダメになったかといって、番組の前半でどうでも良いワイドショー的な話題を延々とやるようになったことほど番組の堕落を表すものはなかった。それはまさか朝日新聞で長年政治記者をやっていた星浩の趣味とも思われないから、局の上層部の意向がそのまま反映され、念願かなって夜のテレビニュースの「アンカー」になれた星浩はそれに異を唱えなかったということだろう。このあたりの信念のなさが星浩の特徴であり、その星をアンカーに据え置いた時点で、他局で安倍政権がらみでキャスターを降ろされた小川彩佳を「メインキャスター」に迎え入れようが番組が良くなることを期待できないのは当然だった。星浩でさえ逆らえないのに小川彩佳が逆らえるはずがない。もっとも、これまでのワイドショー的な趣向は「ネット論」に置き換えられてはいたが(もちろんネット論は昨日だけで、何らかの「ジャーナリズム的な」トピックを論じるコーナーを最初に据えるのではないかと推測される)、その中身も問題が大ありだった。

 番組が問題にしていたのは「左右の分断」だったが、日本のネットに限らない言論でもっとも問題なのは安倍政権による事実上の言論統制であって、それでNEWS23の故岸井成格報道ステーション古舘伊知郎小川彩佳も放逐されたのだ。しかし、番組はその核心に触れることを避けた。「安倍タブー」がリニューアル初日に早くも発動したといえる。番組ではトランプが分断に積極的に関与していることまでは指摘していたが、トランプに触れるのであれば当然触れなければならない安倍晋三を避けていた。これではどうしようもない。

 それに、少し前までのワイドショー仕立ては論外にしても、昨夜やったようなトピックに焦点を当てるコーナーは、本来番組の後半に持ってくるべきだろうし、そもそもそういうコーナーを設けるのであれば、番組の時間帯を拡大すべきだろう。筑紫哲也時代の初期には0時を過ぎても延々とやっていて、そうしたコーナーは「第2部」と称していたが、そのくらいの余裕がなければニュース番組としては成り立たないはずだ。今回のリニューアルの前から、いつになったらニュースをやるんだよと苛立たせて、始まるやあっという間に終わってしまってあまりの薄味さにあっけにとられていたが*2、それは基本的には昨夜も変わっていなかった。

 ただ、一箇所だけポジティブな意味で注目したのは「異論! 反論! OBJECTION」のコーナーの復活で、あれは岸井成格時代にも見た記憶がないから、筑紫哲也時代から10年あまりを経ての復活ではないか。もしかしたら「多事争論」も復活するかなと一瞬思ったが、さすがにそれはなかった。考えてみれば「多事争論」が復活するのであればそれは星浩の役柄だが、星に「多事争論」は似合わない。とはいえ「異論! 反論! OBJECTION」の復活には、TBS局内にはかつての「報道のTBS」の復活を期して臥薪嘗胆の日々を送っている人たちがいるであろうことを感じさせてくれた。

 とはいえ、「敵の本丸」であるところの「官邸によるメディア支配」という問題の核心から目をそらしている間は、低迷していたと伝えられる番組視聴率の向上など夢のまた夢だろう。思い出されるのは、昨年秋に日テレ夜のニュースに進出した元NHK有働由美子が、自らの「持ち味」であるらしいバラエティ色を前面に出そうとして転けた一件であって(その後視聴率が持ち直したかどうかは知らない)、昨夜の放送を見る限り、小川彩佳有働由美子と同じくスポーツ紙や週刊誌の「掌返し」の洗礼を受ける可能性が高いと思われる。

*1:番組名に私は全く無頓着だったが、今までは『NEWS23』だったが昨夜(6/3)から『news23』に代わったらしい

*2:リニューアル前の2か月は、スポーツニュースも端折るようになっていた。それで、先に「卒業」させた皆川玲奈の分を本来スポーツ担当の宇内梨沙が兼務していたのだった。