kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

ある意味で岸信介にも劣る「野ダメ」

昨夕、ネット仲間数人と官邸前デモに参加する予定だったが、例によって詰めの甘い私は仕事のラップアップに手間取って待ち合わせ時刻に20分も遅れてしまい、官邸から相当離れたデモ隊の最後尾で「反原発右派」を掲げる右翼の隣で、はためく日の丸とともに「『右』も『左』もない」デモを実体験させられる羽目に陥ってしまった。私自身は今週風邪を引いて喉を痛めていたので、シュプレヒコールの声も出さず、「参加することに意義がある」を決め込んでいた。

昨年9月に代々木公園で行われた脱原発集会では、だいたい数万人規模だなと想像がついたが、今回のような形態ではデモ参加者数はどうやって推計するんだろうと思っていた。朝日新聞デジタルはカギ括弧つきで報じている。主催者も「15万〜18万人が集まった」と、幅のある言い方をしている。下記記事の見出しは最初「10万人」となっていたが、その後主催者発表の数字が増えたらしく、「15万人」と書き換えられた。


http://www.asahi.com/national/update/0629/TKY201206290577.html

全国各地で原発抗議 官邸前「15万人」で騒然


 関西電力大飯原発福井県)の再起動を7月1日に控え、反対する市民らの抗議行動が29日夜、首相官邸前であった。毎週金曜日夜を中心に実施されてきたが、主催者はこれまで最高だった前回の約4万5千人を大きく上回る15万〜18万人が集まったとしており、官邸周辺は騒然となった(警視庁調べで約1万7千人)。同じ時間帯に全国各地でも抗議行動があり、反対の声は広がりを見せた。

 官邸前では参加者がマイクで「名誉ある撤回を」「国民の声を聴け」などと次々と声を張り上げた。車道にまであふれた参加者は中高年から子連れまで年齢層もさまざま。

 東京都足立区の主婦(36)は、長男(7)とベビーカーの次男(3)を連れ初めて参加。「政府は私たちの生活を全く考えていない。これまで黙ってみていたが、我慢の限界に達した」と話した。「私たちは、選挙かデモでしか訴えられない。自分たちの気持ちを伝えていくうえで、結局、数にまさるものはない」と力を込めた。

朝日新聞デジタル 2012年6月29日23時4分)


毎日新聞の記事。末尾に「主催者は参加者を約20万人としている」と書かれている。

http://mainichi.jp/select/news/20120630k0000m040057000c.html

大飯再稼働:ネットで集結「反対」…官邸前に人の波


 関西電力大飯原発3、4号機の再稼働を2日後に控えた29日夕、東京・永田町の首相官邸前で毎週金曜日に行われている再稼働への抗議行動が一気に拡大し、官邸前から霞が関への車道が人で埋め尽くされた。警察の機動隊も出動した。ツイッターフェイスブックでの呼びかけなどで集まった人々は組織化されておらず、デモ行進はなし。官邸前でひたすら「再稼働反対」と叫ぶのが特徴だ。なぜ、これほど多く集まるのか−−。騒然とする官邸周辺を歩いた。【町田結子、池田知広】

 人が集まり始めたのは午後4時ごろ。「再稼働に断固反対」と書かれたプラカードを手にしている人がいれば、帰宅途中の会社員や手ぶらの家族連れ、お年寄りの姿もある。埼玉県蓮田市の会社員、田中秀行さん(38)は勤務先からスーツ姿で初めて参加。「集会やデモに出たことはないが、もう無関心ではいられない。政治色もなさそうなので抵抗感はなかった」と言う。

 「再稼働反対、再稼働反対」。同6時になると声が上がり始め、一帯はヒートアップ。6〜15歳の子供3人と初参加の静岡県袋井市の無職、中田里美さん(44)は「平和的に抗議しているとネットで知り、子供を連れて来た。参加者は『普通に生きたい、家庭を守りたい』という思いだけ。私も一緒です」。

 呼びかけたのは有志の市民ネットワーク「首都圏反原発連合」。4月3日の原発再稼働を巡る1回目の閣僚会合を前に行動を起こした。当初の参加者は約300人。再稼働決定前日の6月15日、主催者発表で参加者が1万人を超えると、インターネット上で更に話題を呼んだ。主催者の一人、ミサオ・レッドウルフさん(ペンネーム)によると、従来のデモや集会のような雰囲気を一掃し、誰でも参加できる器づくりに徹しているという。

 午後7時、参加者が歩道からあふれた。警察車両も出動し、同8時までの予定だった抗議は同7時45分に打ち切り。マイクを握ったミサオさんは、興奮が冷めない参加者に「ここで事故が起きても原発は止まらない。冷静に判断して帰路について」と促した。

 野田佳彦首相は抗議行動が続く午後7時前、首相官邸から隣接する首相公邸へ戻った。構内にも響く「再稼働反対」のどよめきを歩きながら聞き「大きな音だね」と警護の警官に話しかけたという。

 主催者は参加者を約20万人としているが、警視庁は約1万7000人としている。

 この日は大阪市北区の関電本店前でも約2200人(主催者発表)が集まり、抗議の声を上げた。

毎日新聞 2012年06月29日 21時32分(最終更新 06月30日 00時27分)


「政治色がない」というが、現場には松木謙公がいた。デモを政治利用しようという下心があるのは明白だ。松木は、北海道の泊原発建設に反対したことなどないばかりか、推進派だったのではないか。ただ、昨年6月の内閣不信任案否決劇で裏切られながらも、今なお自らを切り捨てた親分に忠誠を尽くす松木謙公は、それなりに面白い人間だとは思う。

余談だが、同じ「♪わかれてもー すきなひとー♪」でも、こちらは全くいただけない。

https://twitter.com/iidatetsunari/status/217428233740754945

飯田てつなり
@iidatetsunari


○の週刊現代と×の週刊朝日。飯田の山口県知事選挙への出馬表明と橋下市長との関係について、微妙な点を含めて正確に記述してくれた週刊現代に対して、ありもしない発言で橋下さんとのありもしない対立を煽る週刊朝日の記事は何の悪意によるのか?

この週刊朝日の記事を立ち読みしたが、署名記事だった。立ち読みなので記者の名前は忘れたが、『週刊朝日』編集部および記事を書いた記者は、売られた喧嘩は買った方が良いと思う今日この頃だ。


再稼働反対デモの件に戻ると、私はこのデモに「なんとか革命」だとかいう名を冠して語るつもりはない。ただ、総理大臣の「野ダメ」野田佳彦に政策転換をさせるべく圧力をかける意味は決して小さくないと思う。

デモに懐疑的な人の中には、「対案を示せ」と言う人が多い。小泉純一郎をはじめとして、権力者が偏愛した言い分だ。

しかし、対案よりもっと大事なのは、東日本大震災・東電原発事故が起きたという現実をふまえて、政権が「ビジョン」を示すことだ。前首相の菅直人は「脱原発」を掲げようとしたもののすぐに「脱原発依存」に後退を余儀なくされ、菅のあとを襲った「野ダメ」は、口先だけ「脱原発依存を継承する」と言いながら、なし崩しの原発維持ないし推進を狙っている。「脱原発」の大方針を示さないままの「原発再稼働」だから私は反対している*1

呆れるのは、デモを評して「野ダメ」が語ったという「大きな音だね」という言葉だ。私が思い出したのは岸信介だ。岸は、1960年の安保反対デモを評して、「国会周辺は騒がしいが、銀座や後楽園球場はいつも通りである。私には『声なき声』が聞こえる」と語った。岸も「騒がしい」とは言ったが、「音」とは言わなかった。銀座や後楽園(今ならクソ東京ドーム)の人々から「声なき声」を聞くという岸の言葉は、デモに参加する人々の「声」を前提として語っている。しかるに、「野ダメ」は「音」としか言わない。ある意味で「野ダメ」は岸信介にも劣る。岸の言葉は悪評とともに今なお記憶されているが、「野ダメ」の言葉など1年後には誰も覚えていないだろう。

60年安保闘争は最終的に岸政権を打倒した。2012年のわれわれは、野田政権を打倒しなければならない。

*1:もちろん、大前提として核分裂エネルギーの利用そのものが誤りであるとも考えているが。