kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

プロ野球開幕記念・元阪急「アホの加藤」の野次

プロ野球が開幕したが、WBCはともかく、どうしても今のプロ野球を熱心に見る気にはならない。そして、どういうわけか子供の頃のことを思い出す。

関西では、一般的なガキは阪神か巨人のファンだったが、マニアは阪急、南海、近鉄などのパ・リーグの球団を応援していた。私は「阪神−巨人戦」をテレビで見るだけの普通の子供だったが、パ・リーグファンはテレビの放送もほとんどなかったので、しょっちゅう球場に出かけていた。今でこそ「阪神ファンは熱狂的」などと言われるが、本当に熱狂的だったのはパ・リーグのファンだったのである(阪神ファンの過激さは、後年大阪のマスコミが煽ったことによって生じたと私は考えている。歴史的には1950年代の甲子園球場は、野次に迫力がないなどと評されていたらしい)。

当時のパ・リーグの球場では在阪球団同士の応援合戦が盛んで、「勝った、勝った、また勝った、弱い××にまた勝った、××電車ではよ帰れ」などという野次(××には阪急、南海、近鉄が入る)が有名だが、阪急ブレーブス加藤秀司一塁手(のち英司と改名)が、近鉄や南海のファンから「アホの加藤」と野次られるのが名物だったらしい。時々、なぜ加藤が「アホ」と野次られていたのか、という質問がネットなどに載り、よくわからない、にっくき敵だったからだろうなどと片付けられることが多いが、私には思い当たることがある。

加藤がレギュラーに定着した年のシーズンオフだったかに、地元・大阪の毎日放送テレビが全国ネットで放送していた「アップダウンクイズ」に加藤が出演した時のことだ。

30分枠のこのクイズ番組では、1問正解するごとにゴンドラが1段階上がり、10問正解で「夢のハワイにご招待」になるが、1問でも不正解だとゴンドラが一番下まで下がってしまうというルールだった。

ところが、加藤秀司は、正解どころか不正解さえ、一度も答えることなく、全く無言のまま番組が終わってしまったのである。今のクイズ番組だったら、選手の評判を配慮して、あらかじめ加藤に答えさせるための質問を用意しておいて、それを加藤にも知らせて、八百長で加藤が答える場面を作ると思うのだが、当時の「アップダウンクイズ」はどうやらガチンコでやっていたようだ。

この番組のせいで、「1問も答えられなかった加藤はアホ」ということになって、近鉄および南海のファンによる加藤への野次が始まったのではないかと私は想像している。

ちなみに、こんな野次だったらしい。

「打てば三振、守ればエラー、歩く姿はボケの花。アホっ、アホっ、アホの加藤!」

なんとものどかなスタンドの風景だったに違いない。私も子供の頃、阪神や巨人の試合をテレビで見るだけじゃなくて、パ・リーグの球場に行ってれば面白かったのにと思うのだが、あとの祭りである。

なお、数年前に甲子園球場で行われたセパ交流戦で、阪神に勝ったソフトバンクホークスの応援団が、「阪神電車ではよ帰れ♪」と野次ったら、阪神ファンが怒り狂ったらしい。阪神ファンも、昔を知らないというべきか、はたまたいつの間にか読売的な体質が伝染したというべきか、いずれにしても無粋な話である。