kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

好企画だったサンプロの静岡空港問題特集

「御用番組」とのレッテルを張られがちなテレビ朝日サンデープロジェクト』だが、今日(12日)は、前半の6党政治家の論戦は退屈極まりなく、新自由主義者の対論となった竹中平蔵吉崎達彦の議論には苛立ったとはいえ、日本経済の今後の浮揚は蓄電池技術にかかっているという財部誠一の意見には同感だった。しかし何といっても今日の白眉は後半の静岡空港問題の特集で、静岡県外在住者の目からはさっぱり理解できなかった先日の静岡県知事選の対立構図が、ようやく理解できた。

キーワードは「静岡空港建設」と「オール与党体制」の2つである。バブル初期の1987年から進められた空港建設は、オール与党体制(当時は自民、社会、公明、民社)のもとで着々と進められたが、住民の抵抗が強く、石川嘉延前知事も手を焼いていた。2001年の知事選で水野誠一氏が建設反対を叫んで立候補したが、水野氏を擁立したのが民主党参院議員(当時)の海野徹氏だった。しかし、空港建設推進の立場に立つ連合は石川氏を推薦し、水野氏の民主党本部推薦を得られなかった(当時の民主党代表は鳩山由紀夫氏だった)民主党静岡県連は自主投票に追い込まれ、水野氏は惨敗した。

この2001年の県知事選は、コイズミが「カイカク」を叫んで自民党が圧勝した参院選と同日投票だったが、正しい「改革」であると思われる水野氏の主張は有権者には受け入れられなかった。この選挙の前に、石川知事は空港建設の是非を問う住民投票を行うと公言した。つまりこれによって石川氏は静岡空港建設問題を争点からそらし、それが功を奏したのだが、住民投票は県議会与党・自民党の反対にあって実現しなかった。つまり石川氏は静岡県民を騙したのだが、「公言はしたが公約はしていない」との詭弁を弄した。留意すべきは、当時の自民党は、「小泉改革」を信奉する改革者集団を自称していたはずだったことで、つまり「小泉改革」自体が国民を騙す偽装に過ぎなかったのである。

今回、石川知事が辞意を表明する前から海野氏が立候補の意向を公言していたにもかかわらず、民主党が他の候補を探したのは、静岡空港建設に反対していた海野氏が連合にずっと嫌われ続けていたためだ。決して民主党が「海野氏では勝てない」と判断したためではない。社民党川勝平太氏を推したのも、連合の意向に社民党が逆らえなかったためだ。そして、民主党はオール与党の相乗りを模索したのだがうまくいかず、結局自民党坂本由紀子氏を擁立し、民主党は連合の意向を最大限に配慮し、静岡空港容認派であり、石川前知事の息のかかった川勝氏を擁立したのである。社民党も連合には逆らえないので川勝氏に相乗りした。こうして本来、「石川県政の継承」を主張する坂本氏と、これに反対する海野氏の戦いになるべきところが、「県政に新しい風を吹き込む」と主張する川勝氏の立候補によって地方選に国政の対立構図が持ち込まれてしまった、というのが実情だったようだ。

地元メディア(静岡新聞や放送局など)も、坂本氏と川勝氏の2人だけをクローズアップして、海野氏や共産党推薦の平野定義氏を意識的に黙殺したそうだが、これも地元メディアが地元の利権と深くつながっていると考えれば理解できる。

川勝氏が「つくる会」に参加していた事実はなかったそうだが、地方選の本来の対立構図が国政にねじ曲げられてしまった方が大きな問題といえそうだ。

それにしても、こうした経緯を知るにつけ、海野氏が「自公の工作員」であるという一部狂信ネット左翼の主張が、とんでもない妄言であることがよくわかる。川勝平太氏こそ、「オール与党体制」にしがみつく連合の「工作員」というべき人だった。そして、経済学者としての川勝氏は新自由主義者なのである。今回のサンプロの特集で浮き彫りになったのは、地方選挙における「オール与党体制」の問題点であり、それを推進してきた「連合」の問題点だ。鳩山由紀夫は、小沢一郎の反対を押し切って、川勝平太氏の党推薦を決定したが、鳩山氏は連合を右傾させた旧「同盟」を支持母体としていた政治家であり、右傾化した連合の意を汲む傾向が強い。だから、小沢氏に逆らってまでも川勝氏の推薦を強行したものだろう。

狂信者たちは、ふだんマスコミを「マスゴミ」呼ばわりする。しかし、マスコミ報道の中には今回のサンプロ静岡空港特集のように評価できるものがあるが、信者たちの絶叫には見るべきものは何一つない。


[追記] (2009.7.13)

静岡県知事選の分析については、静岡県民のid:RRDさんが7月6日に書かれたエントリ
静岡県知事選挙を簡単にまとめてみる - NOW HERE
がたいへん参考になります。未読の方には是非ご一読をおすすめします。