昨日、ソ連(ロシア)の作曲・ショスタコーヴィチについて調べている過程で、同じソ連の作曲家・プロコフィエフがユダヤ人であることを知った。ユダヤ人の作曲家として私が認識していたのは、マーラーとメンデルスゾーン、それに大指揮者でもあったレナード・バーンスタインくらいだったが、調べてみるとたくさんのユダヤ人作曲家がいた。
20世紀の音楽関係では、「12音音楽」で知られるシェーンベルクや、「ポーギーとベス」のガーシュウィンが目立つ。ジャズとクラシックの両方で知られるアンドレ・プレヴィンもユダヤ人だ。
演奏家となると、ユダヤ人は枚挙にいとまがないが、反面、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーやヘルベルト・フォン・カラヤンのようにナチスに協力した大指揮者もいる。フルトヴェングラーは政治的な優柔不断さから心ならずもナチスに協力してしまったと同情されているが、カラヤンは確信的なナチ党員だった。しかし、そのカラヤンにもユダヤ人の血が流れていた。
音楽を離れると、フロイト、マルクス、アインシュタインらがユダヤ人である。物理学者にはとりわけユダヤ人が多く、シュレーディンガーもそうだし、ボーア、ディラック、パウリ、ランダウ、ファインマン、その他その他、ユダヤ人なくして現代物理学もエレクトロニクス商品も社会主義も精神分析も何もかもあり得なかった。
そして、音楽に戻ると、「日本を愛したユダヤ人ピアニスト」、レオ・シロタの名前を忘れてはならない。なぜかというと、シロタの娘であるベアテ・シロタ・ゴードンは「男女同権」を盛り込んだ日本国憲法第24条の草稿を執筆した人物として知られているからだ。つまり、日本国憲法もユダヤ人なくしてはあり得なかった。
だから、「護憲派」が「反ユダヤ主義」というか「ユダヤ陰謀論」に入れ込むこと自体、自家撞着であって、反日本国憲法的な態度なのである。
ところで、この記事を書くためにネット検索をしていたところ、3年前を最後に更新されていないブログではあるが、シュレーディンガーと副島隆彦をともに肯定的に取り上げている人がいるのを発見した。
「総合」を志した理論物理学者・シュレディンガー~著書「生命とは何か」からひもとくメッセージ - 日常感覚
「ユダヤ人」について考えてみる~副島隆彦「重税国家 日本の奈落」を読んで - 日常感覚
後者から、副島隆彦の記述の引用を含む箇所を、孫引きで引用する。
彼らの背後に控えるニューヨークのユダヤ系の金融財界の支配者、ロックフェラー財団に目をつけられて、反抗分子と見なされることが日本の指導者層の人々は死ぬほど怖いのである。
アメリカの経済を実質的に牛耳っているのは、このロックフェラー系のユダヤ人。当主にあたるデーヴィット・ロックフェラーという人物は、当年90歳、「世界皇帝」などとも呼ばれているそうだ。
ちなみに、ヨーロッパの経済を牛耳るのは、こちらも巨大財閥として知られるロスチャイルド家の流れを汲むユダヤ人であるらしい。
こうしたユダヤ人の金融財閥に、フリーメーソンだとかイルミナティといった「秘密結社」が絡んでくる。
どうやらブログ主は、副島隆彦の記述を真に受けてしまったらしい。そもそも、ロックフェラーはユダヤ系ではない。ロスチャイルドの方は確かにユダヤ系だけれど。陰謀論者の強弁はとどまるところを知らず、上記ブログではないが、「ロックフェラーがユダヤ系であることは、アメリカでさえほとんど知られていない」と書く始末だが、ここまでくるともう手に負えない。
上記ブログ主は、ソエジーのユダヤ陰謀論を「郵政民営化」批判に結びつけるのだが、郵政民営化を批判する言論の中に、ユダヤ陰謀論と結びついた人たちがいることを、郵政民営化を批判する側の人間(私を含む)はよく気をつけなければならない。それはそれ、これはこれで、筋の通らない「ユダヤ陰謀論」は排斥する必要がある。その人間が、「護憲」を旗印にするならなおさらのことである。
なお、上記ブログ主は、シュレーディンガーがユダヤ人であることを知らなかったのだろう。ソエジーに騙されるようでは、そもそもどうしようもないけれど‥‥