kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

借金は財政にどんな意味をもつか(神野直彦『財政のしくみがわかる本』より)

神野直彦著『財政のしくみがわかる本』(岩波ジュニア新書、2007年)の第5章より、自らの勉強の意味を兼ねて抜き書きする。

章と節のタイトルと、ポイントのみ紹介。未読の方は是非読んでください。


5 借金は財政にどんな意味をもつか

  • 財政は借金しない方が良い(126頁) = 政府に防衛や警察サービスなどの小さな機能しかなかった頃には、均衡財政が良いとされていた。
  • 資本的な経費は借金しても良い(127頁) = 学校・病院・橋・道路などの建設や建て替え・修復などに使う資本的経費については、借金しても良いと考えられるようになった(「建設公債の原則」)。
  • 景気基準による借金(130頁) = 不況時には、政府が需要をつくるために財政が借金をすることが認められる。好況で税収が増えた時に借金を返す。
  • 誰から借金をしているのだろう(131頁) = 国民から借金している。日本は外国債を発行していないので、国家破産はしない。国家破産をするのは、外国から借金している場合。
  • 借金をしていることで何が問題なのか(135頁) = 借金返済に金が使われると、国民生活や企業活動を支えるサービスができなくなる。また、所得再分配の機能を果たせなくなる。消費税は負担が逆進的なので、消費税増税による財政再建には、逆再分配が行われる危険がある。
  • 借金増にどう対処するか(138頁) = [1]借金を増やさない。[2]借金の元本を返さず、利払いだけをする(利率は低いので、負担は小さい)。[3]政府支出を減らさず、公共サービスの量を確保する。[4]逆再分配が起こらないよう、租税構造をできるだけ公平にする(金持ちの負担を増やす)。[5]インフレや金利上昇が起こらないよう、国債を適切に管理する(日銀などの金融政策を間違わずに管理する)。
  • 国の借金と自治体の借金(141頁) = 国の借金と自治体の借金は意味が違う。自治体の借金は、地域外の人々からの借金なので、負担が本当に将来世代に転嫁する(国の借金の場合は転嫁しない)。他国では地方自治体の借金は少ないが、日本では地方自治体の財政が国に統制されており、自治体が国によって借金させられているため、自治体の借金が多い。
  • 自治体の財政赤字とは何か(144頁) = 国の場合、赤字国債は財政法違反になるが、毎年特例法を作って赤字国債を発行している。これにより決算上の赤字は出ない。地方自治体の場合、法律を変えられないので、赤字地方債を発行することができず、決算上の赤字が出る。
  • 自主再建か財政再建団体(147頁) = 決算上の赤字が、道府県では5%、市町村では20%を超えると、財政再建団体になるか自主再建の道を選ぶかのどちらかになる。夕張市は前者で、最低限の公共サービスしかできなくなる。しかし、借金をしておいて、いざ返す段になった時みんなでどこかに逃げて行ってしまう「食い逃げ」をさせないために、地方自治体には借金させない方が良いとされている。神野教授らは、師に当たる鈴木武雄氏の考えに基づき、「地方自治体が共同発行する地方金融公庫(金庫)をつくろう」と主張している。