kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

所得税の累進性を強化した時代、日本経済は高度成長を遂げた

http://www.news.janjan.jp/government/0809/0809237953/1.php より。去年の記事だが、その主張は今でも生きている。

【累進制とは】

 当初分配所得に対して、持てる者にはより多くの税負担を求める、いわゆる応能原則を具体化したのが累進制税制である。戦後シャウプ勧告により導入された民主税制である。

【累進制の変遷】

 岸内閣時に刻みは13階層、最低税率10%、最高税率は70%だった。

 池田内閣時には刻みが15階層に増え、最低税率は8%に下がり、最高税率は75%に増えた。格差解消策が採られたと言える。

 次の佐藤内閣で刻みが19階層に増え、最低税率は10%に上がり、最高税率は75%と変わらなかった。ここまでの税制はまともと言える。

 中曽根内閣から改悪が始まった。刻みは12階層まで減り、最低税率は10.5%に上がり、最高税率は60%に下がった。

 ひどいのは竹下内閣である。最低税率は10%に戻したが、最高税率を50%に引き下げ、刻みを5階層にしてしまった。

 ひどいを通り越して、とんでも無いのが、小渕内閣である。刻みを4階層にしたうえ、最高税率をなんと池田内閣や佐藤内閣時の半分以下、37%にしてしまった。金持ちの税金を消費税に、つまり国民全体に付け替えたのである。

 これで格差が生じなかったら、不思議である。これだけのことを実行した理由が、なんと、“税制の簡素化”である。他に何の理由も示されていない。

日本経済の高度成長期とは、1955年から1973年までを指す。それは、鳩山一郎内閣時代に始まり、石橋湛山岸信介内閣時代にも高度成長はしていたが、それが18年の長きにもわたって続いたことにもっとも貢献したのが池田勇人であることは論を待たない。90年代に朝日新聞政治記者・故石川真澄が書いた文章によると、戦後の総理大臣で内閣支持率が一度も不支持率を下回らなかったのは池田内閣だけだったそうだ(その後小泉内閣が同じ例になったと思うが、小泉政権発足以降、鳩山内閣の現在に至るまで、無能な内閣の支持率が高すぎると私は思っている)。それほど任期中から評判が高く、歴史的にも高評価を得ている池田勇人だが、池田自身の思想信条は実は保守反動だった。大臣時代には「貧乏人は麦を食え」という放言でも知られた。その池田が一転して首相就任後に低姿勢をとり続けた裏には、大平正芳宮沢喜一など、宏池会の政治家たちの尽力があったという。それに従った池田は自らの信条とは異なる政治を行い、それが成功を収めた。自身の思想信条よりも現実にあるべき政策を重視した池田勇人を、私は高く評価する。そして、所得税の累進性を強めた池田内閣の時代に、日本の高度成長が本格期に入っていったことは忘れてはならない。

続く佐藤栄作内閣の時代に、最低税率は引き上げられたが、税率の刻み幅はさらに細かくされた。この時代、革新自治体が次々と誕生し、国会の議席でも自民党が減って野党が増えていった。そんな時代だったから、CIAから金をもらっていたにとどまらず、自分からCIAに金をせびっていたことがアメリカの文書公開で明らかになり、つい今日も沖縄返還をめぐるアメリカとの核密約に関する書類を勝手に自宅に持ち帰って隠していたことが明らかになった、どうしようもない腐敗政治家の佐藤栄作でさえ、所得税の累進性を守らざるを得なかった。そしてその間、日本経済の高度成長は続いた。高度成長が止まったのは、1973年に起きた「オイルショック」がきっかけだった。

中曽根政権以来、所得税の累進性が緩和されたのは、いうまでもなくサッチャーレーガン新自由主義に日本政府の政策が影響を受けたからだ。しかし、当時の日本経済には力があったことと、プラザ合意後の金融政策を誤ったことによって、日本にバブル経済が発生した。財政のセオリーからいうと、好況期には財政再建をしなければならないはずだが、暗愚の宰相・竹下登は「ふるさと創生」などと称してバラマキを行ったばかりか、所得税の累進性を緩和する愚策をとったから、あの時期になら黒字になって当然だった財政は黒字にならなかったし、放漫財政の当然の結果としてバブルを過熱させた。そしてバブルは膨らむだけ膨らんだから、それが弾けた時のダメージも甚大なものになった。私は最近、日本における新自由主義の開祖である中曽根康弘と同じくらい、この竹下登を徹底的に批判しなければならないのではないかと考えるようになっている。

ダメ押しが小渕だった。一方で積極財政政策をとりながら、所得税の累進性を緩和した。小渕の政策に一貫性など全くなかった。小渕恵三の前任者で、消費税率を3%から5%に引き上げた橋本龍太郎の罪も重く、橋本の緊縮財政政策も日本経済に冷水を浴びせた。

結論として、新自由主義の政策である所得税の累進性緩和(金持ち減税)と法人税減税は、金持ちが資産を貯めこみ、企業が内部留保を積み増す結果を招いたのだが、これらはいずれも政府の財政赤字を拡大させるものである。

つまり、日本政府が新自由主義政策をとり続ける限り、財政赤字は決して解消しない。財政赤字を減らすとともに日本経済の成長率を上げるためには、所得税の累進性を再強化して、金持ち増税を行うしかないと私は考えている。

財政赤字のいけないところは、財政本来の役割である所得再分配ができなくなってしまうことだ。税収が増えれば所得再分配の機能も戻ってその効果は高まるし、それが消費の拡大につながって、日本の経済成長率はどんどん上がっていく。大部分の金持ちは増税しようがしまいが同じくらいしか消費しないから、金持ち増税のデメリットなどほとんどない。逆に、現在のように金持ちがどんどん金を死蔵することが日本経済に及ぼす悪影響は計り知れないものがある。

鳩山内閣のなすべきことは、池田勇人政権時代の経済政策への回帰であり、竹中平蔵のトチ狂った経済イデオロギーとの完全な決別である。小泉・竹中路線からの脱却なくして経済成長はあり得ない。「小さな政府」は亡国への道である。