kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

アメリカの大雪で勢いづいた「地球温暖化懐疑論」

テクノロジー : 日経電子版 より。

著者は国立環境研究所地球環境研究センター温暖化リスク評価研究室室長。

ここ数年続いていた世界平均気温の低下が止まり、昨年の世界平均気温は観測史上3番目だったらしい。

 ともあれ、この冬が記録的に寒いのは一部の地域に限られるというわけです。世界平均気温でみれば、気象庁の速報値によると、2010年1月は平年の1月より0.37℃高く、観測史上第3位の高温な1月です。年平均気温でみても、昨年の記事を書いた時点では、世界平均気温は2005年から年々下がってきていましたが、昨年はエルニーニョが始まったせいで上昇に転じ、2009年平均の世界平均気温は観測史上第3位まで上がりました。ところが、日本に限れば、このエルニーニョの影響もあって冷夏になったので、去年の夏も、日本に住んでいると温暖化が進んだような気はしなかったでしょうね。

 このように、温暖化が止まったように人々が感じているのには錯覚の部分があります。


しかし、そうはいってもひところほど急速に温暖化が進んでいるわけではないとのこと。

成層圏の水蒸気が温暖化を減速?

 しかし、そうはいっても、1980年代から2000年ごろまでの気温上昇率に比べて、今世紀に入ってからの気温上昇率が小さいのは確かです。この点について、気候変動に関する政府間パネルIPCC)第4次評価報告書で第1作業部会の共同議長を務めた米国のスーザン・ソロモン氏が、最近、興味深い論文を発表しました。ニュースにもなったので知っている人もいると思いますが、成層圏(高度10〜50km程度の大気)の水蒸気が温暖化を減速しているという分析です。

  2000年以降、成層圏の水蒸気が10%ほど減っており、これが気温の上昇率を25%ほど下げたと考えられるという話です。一方、より限られた観測データからですが、1980年から2000年の間に成層圏の水蒸気が増えて、温暖化を加速していた可能性もあることが示唆されています。成層圏の水蒸気が変化した原因は、対流圏(地表から高度10km程度の大気)から流入する水蒸気量の変化のようですが、これが自然変動なのか、温暖化に伴うフィードバックなのかはまだわからないということです。


そこで、

「そらみろ、IPCCは温暖化を全部CO2のせいにして、水蒸気のことをまともに調べていないから、今頃そんなことがわかるんだ」という人がいそうですね。

という話がでてくる。それは全くの誤解だとして、説明をしているのがこのコラムである。専門家である著者が、

専門分野において日常的な概念を専門外の人に伝えるのはなかなか難しいものです。それゆえに誤解が生まれやすく、これを避けるのもまたたいへん難しいものです

と書いているほどだから、素人である当ブログ管理人が不確かな要約を書くことは差し控える。詳しくはリンク先の記事や、そこからリンクされた解説記事*1をご参照いただきたい。

当エントリで強調したいのは、下記のくだりである。

■「温暖化はウソ」盛り上がるキャンペーン

 「温暖化は止まった」のか、「一時的に減速している」のか、そのどちらが正しいかは、やがて時間が明らかにするでしょう。米国などでは、「クライメートゲート」に始まった一連のIPCCバッシングに加えて、最近の大雪の勢いを借りて、「温暖化はウソだ」という政治的なキャンペーンが相当に盛り上がっているようです。この盛り上がっている人たちは、将来再び温暖化が顕著になったときには、いったいどういう顔をするんでしょう。温暖化対策をしばらく遅らせたことに満足して、ニヤリと口の端で笑うだけでしょうか。

 もしも、しっかりと納得がいくまで科学的に調べた上で、「温暖化は止まった」と確信している人がいたとしたら、僕はそのような人のことを非難しないでしょう。そして、僕自身は、現時点で自分が知り得る限りの科学的な知識に照らして、「温暖化は再び顕著になるはずだ」というかなり強い確信を持っています。時間が正解を明らかにするのを待つほかに僕にできることは、自分の確信の根拠を他人にしっかり説明することと、新しい知識を得ても確信が揺るがないかどうかを絶えず自分の中で検証することでしょう。


やはりアメリカでも、ちょっと大雪に見舞われただけで「温暖化懐疑論」が一気に勢いづき、オバマ政権批判に結びつけるキャンペーンが大々的に展開されているようだ。

もっとも、オバマ政権にせよ、日本の鳩山政権にせよ、温暖化対策として原子力発電に傾斜するあたりは全くいただけないが、それは両政権が利権に結びつこうとしているというだけの話であり、温暖化の議論とは何の関係もないはずだ。