http://www.asahi.com/politics/update/0408/TKY201004080572.html より。
藤井氏「サムライ」石原氏「たちあがれ」 新党名で議論
2010年4月9日11時37分
「ありがとう日本」「頑張れ日本」――。平沼赳夫元経済産業相らが結成する新党の名前をどうするのか。まとまるまでには、新党メンバーらと「応援団」の石原慎太郎・東京都知事の間で熱い議論があった。
党名をめぐっては、藤井孝男元運輸相が「サムライ」を主張。だが、他のメンバーが「日本」を入れることにこだわった。「サムライ日本」は似たタイトルの流行歌があるため採用されず、いくつかの案から、石原氏が言った「たちあがれ日本」に決まった。
メンバーの一人は「面白いじゃないの。政治家の頭からは出てこない。文学者らしい発想だ」と語った。
朝日新聞がこんなネタ記事を載せるのもどうかと思うが、「文学者らしい発想」という表現には笑うほかはない。
石原慎太郎が「たちあがれ」という時、多くの人が思い出すのは、石原の小説としては唯一世に知られた『太陽の季節』の中にある「勃起した陰茎を外から障子に突き立てた」という表現だろう。実際、新党名を「勃ちあがれ日本」と揶揄する向きは、「たそがれ」や「立ち枯れ」と同じくらいたくさんネットで見られた。実は私も「勃ちあがれ」を連想したのだが、石原慎太郎には言及することさえうざかったので、これまでブログの記事には出さなかった。
そもそも、私は石原の小説など一冊も読んだことはない。石原は、私が文庫本を読み始めた70年代半ばには、既に小説家としての評価を下げており、『太陽の季節』を唯一の例外として、石原の小説が人々の口に上ることはほとんどなかった。当時流行していた純文学の作家といえば遠藤周作や北杜夫であり、石原慎太郎は等閑視されていた。
今では、石原の小説は『太陽の季節』など少数の作品以外は文庫本では絶版になっているのではないか。たとえば文春は、現在「たちあがれ新党」キャンペーンを行っているが、文春文庫の石原作品となると、小説ではなく石原の政治的主張をまとめた駄書が何冊か出ているだけのようだ。つまり、石原に芥川賞を与えた文春自体、現在では文学者としての石原はほとんど評価しておらず、極右政治家としての石原を支援しているだけに見える。
そんな石原が命名した「たちあがれ日本」などより、藤井孝男が主張したという「サムライ」の方がよほど良かった。一昨年だったか、新党名を「侍」とする案は、かつて平沼赳夫自身が言っていたことがあるし、カタカナ名ならなお良い。根拠は下記。
ハーケンクロイツの衣装を着て「サムライ」を歌っていた沢田研二が「9条護憲派」だったとは! - kojitakenの日記 より。一昨年9月17日付の記事。
沢田研二って、右翼だとばかり思っていた。
1978年、ハーケンクロイツの衣装を着て、その名も「サムライ」という、平沼赳夫の応援歌かと思うような歌を歌っていたことがあるからだ。当然ながらその衣装が問題になり、ある時期から沢田は衣装を変更した。しかし、「サムライ」は歌い続けた。
うーん、本当に惜しかった。もっとも、現在では「9条護憲派」だという沢田研二は、平沼・与謝野新党の名前が「サムライ」にならずに済んで胸をなで下ろしているかもしれないが。