kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

やはり憲法9条と憲法25条は関連づけて論じられるべきだ

憲法9条を守れというと「左翼政党の主張」と反射的にとらえる人たちが多くなったのは1990年代以降のことだろう。かつては、『軍縮問題資料』という月刊誌を発行していた宇都宮徳馬という自民党議員がいた。この雑誌は、宇都宮徳馬が74歳の1980年に創刊され、2000年に宇都宮が93歳で長逝した後の現在も発刊されている。

2005年の東京新聞記事によると、自民党異色のハト派として衆院議員を10期務めた徳馬氏は、1976年にロッキード事件金大中事件の党の対応に抗議し、離党、辞職した。そして、1980年の参院選東京地方区に無所属で立候補し、「超法規」発言で知られる、民社党栗栖弘臣・元防衛庁統合幕僚会議議長と議席を争った。1976年に離党したとはいえ、宇都宮徳馬は、1955年の保守合同以来20年以上も自民党に籍を置いていたのである。

一昨年に読売新聞が実施した憲法に関する世論調査によると*1改憲に反対する意見は、世代別に見ると70歳以上が最少の31.8%で、以下年代が若くなるほど改憲賛成派が増え、30歳代では改憲派が50.8%に達する。しかし、それより若い20歳代では改憲派は44.9%と、30歳代より少なくなっている。

つまり、猛烈な新保守主義(と新自由主義)の宣伝が展開された80年代後半以降の言論に影響された30歳代(現在では32〜41歳)に対し、それより若い世代では右翼イデオロギーへの懐疑が生じているようなのである。また、護憲派の多い70歳代は、自民党支持の多い年代でもある。つまり、高齢の方々の間では、「自民党支持だけれども護憲派」という人たちが多数いるのである。

昨夜遅く、日本テレビの報道番組を見ていたら、キャスターが、普天間基地移設問題に関して、「憲法9条は沖縄には一度も適用されたことがない。沖縄の人は、基地に撤退してもらって、憲法9条が本土並みに沖縄にも適用されることを求めている。そうなってこそ本当の沖縄復帰だ」としゃべっていた。本当に日本テレビの番組かと耳を疑い、チャンネルを確認したが、間違いなく日本テレビだった。

一方で、メーデーでは憲法25条が適用されていない非正規労働者の人たちが「自由と生存のメーデー」を行った。「生きさせろ」という「25条」系の叫びと、沖縄の人たちが普天間基地の県外移設を求める「9条」系の思いには、通底するものがあると感じた。ともに、「棄てられた人々」が「原状回復」を求めているのだ。一昨年8月に湯浅誠が講演会で「憲法9条と憲法25条は関連づけて論じられるべきだ」と言ったことを思い出した。

現在は、民主党支持者の間でも、30〜40歳代の人たちを中心に、「9条護憲にこだわるのはサヨク」という思い込みが広く見られるが、保守系マスコミの代名詞のような日本テレビの報道番組にさえ論調の変化が見られるようになった。鳩山由紀夫首相が沖縄で大ブーイングを浴びて、ますます普天間基地移設問題への注目度が増す中、憲法9条と憲法25条を関連づけてとらえる議論はますます活発になり、それは、別に左翼の専売特許でも何でもない共通認識として人々の間に広まるのではないかと私は予想している。そして、30歳代の人たちの間では多数かもしれない右翼的な主張は、次第に時代遅れと見なされるようになるのではないか。

[PS]
最初、『軍縮問題資料』は2005年まで発刊されたと書きましたが、同誌の読者の方から、現在も刊行されているとのご指摘をいただきましたので、本文を訂正しました。2005年に一時休刊の動きがあったようですが、結局発行が継続されたようです。