kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「小沢一郎中心史観」に引きずられない菅直人政権の評価が必要

菅新首相の誕生に当たって発せられている言論には、マスコミはもちろん、ネットでもあまり共感できないものが多い。あまりに小沢一郎に引きずられた論調ばかりが目立つ。マスコミは小沢一郎を鬼畜のごとく言うが、逆に一部ネット言論では小沢一郎に異様に入れ込んだ文章が多い。かくいう私自身が書く文章も、小沢一郎を中心にしたものの捉え方に引きずられてしまっていて、直近の自分のブログ記事は、いまいちよく書けていないように思える。

菅政権は、「民由合併」以前の、2003年までの民主党に回帰しようとしているなあというのが、組閣の動きを報じるニュースに接して私が思ったことだ。そこには、都市部中産階級の利益代表という、民主党元来の政治的スタンスがあると思うが、地方に比較的長く住み、久しぶりに首都圏に出てきた人間の目から見ると、格差が拡大し貧困が深刻化した現在、「2003年までの民主党」ではもはや十分に立ち行かないのではないかと思う。

それが、私と同じ社民連支持から出発した、『日本がアブナイ!』と当ブログとの論調の違いにつながっているのではないか。同ブログの下記エントリを読んでそう思った。実は私も、中選挙区時代の大昔、当時社民連に所属していた菅直人の選挙区に住んでいた時期があって、菅直人に投票したことがある。
菅直人が首相になって、本当の意味での政権交代&市民政が実現 : 日本がアブナイ!


ブログ主は、その前のエントリ*1で、「親・反・非小沢のラベル分けは、いい加減に止めるべし」と主張している。確かにその通りで、小沢一郎にせよ菅直人にせよ是々非々で評価すべきだと私は思う。小沢一郎で私が評価するのは、スローガン倒れのようには思うけれども、「国民の生活が第一」を掲げたことだ。都市部では強いが地方で弱かった民主党の支持基盤が、小沢時代に大きく変わった。何より、それまで自民党民主党新自由主義の「カイカク」を競っていた時に、国政と国民のニーズの間にある乖離を見抜き、「国民の生活が第一」というスローガンを掲げれば選挙に勝てることを示した小沢一郎の功績は大きい。現在、次々と新自由主義政党が勃興しているが、いかに「政界再編」を行い、離合集散を繰り返そうとも、国民生活を大事にしない政権は、発足時から直ちに支持率低落への道が始まる。小泉純一郎の頃は、まだ日本の国力に余裕があったし、あまりに国民が自民党の長期政権に飽き飽きしていたから、「自民党をぶっ壊す」と言った小泉の虚偽の宣伝に長期にわたって国民が騙されたのだが、今ではそうはいかない。

一方、安全保障政策に関しては、私は菅直人小沢一郎も評価していない。これはブログを開設する以前から変わっていない。そして小沢一郎で一番問題だと思うのが、強権的な党運営であって、一昨年の代表選の無投票当選や、昨年の代表選での短期決着(事実上鳩山由紀夫との共謀)は後に禍根を残した。


さとうしゅういち氏が『JanJan』に書いた記事*2に、興味深い指摘がある。

鳩山政権崩壊の教訓を活かさねばならない、と思います。本当のことを言えば、選挙で一回選ばれた総理大臣や大統領は、基本的には最低でも4年間(ないし任期)勤める、というのが、ドイツでも、フランスでもアメリカでも、韓国でも、台湾でも常識です。

 いままでの日本の総理がコロコロ変わっていたのは、自民党による事実上の一党独裁を前提とし、その枠内で、自民党内の抗争により総理・総裁を変え、それにより、目先を変えていたというだけのことです。その実態はむしろ中国共産党(党内の権力争いにより、割合頻繁に指導者が交代する)に似ている。

 民主主義国のほうが、政権政党は何年かおきに変わるが、総理大臣自体は意外と長持ちするのが「常識」です。


今回の鳩山政権の短期崩壊は、小沢一郎流の権力闘争の帰結だったともいえるように思う。もっとも、民主党の場合は以前から代表の途中辞任が多かった、というかほとんどそのパターンばかりだったけれども。

菅直人に一言言いたいのは、記者会見で神野直彦氏を引き合いに出すのなら、まず消費税増税ありきなどというマスコミの論調に安易に流されるなということだ。さとう氏が下記のように書く通りである。

民主党が直面している課題のひとつは、情報発信力の不足です。

 例えば、政府税制調査会専門家委員会では、神野直彦会長を中心に、きちんとお金持ちへの課税ベースを拡大し、所得税収を増やそうという議論をしていました。それを十分アピールせず、「増収=消費税増税」という観念に閣僚さえとらわれ、議論を混乱させたのは残念


嘆かわしいのは、「増収=消費税増税」という観念にとらわれた「閣僚」に菅直人自身が含まれていたように見えたことだ。マスコミによる発言意図の歪曲もあったかもしれないが、どうひいき目に見ても、菅直人はマスコミ(や官僚)に安易にリップサービスをし過ぎた。金持ち課税の強化に言及せずして消費税増税に言及する態度は、神野直彦氏の考えに反しているわけだから、そんな人間は安易に神野氏の名前を出すべきではない。

かつて菅直人に投票したことのある人間として、今後は厳しく菅政権をチェックしていきたいと思う。