かつてあるイギリス人と話す機会が多かったが、彼はイギリスの社会保障を自慢し、日本はアメリカと同じで政府が何もしない国だと言っていた。
サッチャーを嫌い、アメリカを馬鹿にしていた彼だが、サッチャーの新自由主義政策によってかなり破壊されたとはいえども、それでもイギリスには福祉国家の伝統がまだまだ残っているんだなと感じた次第だ。
そんなイギリスで、アンソニー・ギデンズが提唱して、トニー・ブレアが採用した「第三の道」とは、かつてのイギリスの福祉国家路線を「第一の道」、サッチャーの新自由主義路線を「第二の道」として、両者を折衷した「第三の道」を目指すということだった。
民主党(新)が1998年の結党時に掲げたのは、「『市場万能主義』と『福祉至上主義』の対立概念を乗り越え、自立した個人が共生する社会をめざし、政府の役割をそのためのシステムづくりに限定する」という文言で、これはイギリスの「第三の道」に近い。
ところが、今年に入って菅直人がテレビに出演した時に語った「第三の道」は、以前のものと少し異なっていた。菅直人は、田中角栄の土建国家路線を「第一の道」、小泉構造改革路線を「第二の道」とした上で、そのどちらでもない「第三の道」を目指すと言ったのだ。それは、菅首相になってからの決意表明や所信表明演説でも繰り返された。
日本がかつて福祉国家であったことは一度もない*1以上、当然の修正ではあるが、菅直人の「第三の道」に言及する時には、この点に留意する必要があると思う。