kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「島唄」に隠されたメッセージを今頃知った

1年前の記事を今頃知ったのだが、THE BOOMのヒット曲「島唄」で、音階の使い方にある工夫がされているとのことだ。
「島唄」に沖縄音階が一部使われていない理由 - ||: フェルマータ :||


上記リンク先の記事は、朝日新聞の別刷「be」に掲載された記事を元ネタにしている。その書き出しの部分は、今でもネットで閲覧が可能だ。
http://www.asahi.com/shopping/tabibito/TKY200906180243.html


以下引用する。

「ウージの森で千代にさよなら」という歌詞は、ガマでの集団自死の悲劇を暗示します。旋律は沖縄音階を基調にしましたが、この「ウージ」の部分だけは日本的な音階に戻しました。「彼らを死に追いやったのは、当時の日本の軍事教育。沖縄音階では歌えない」と宮沢さんは判断したと言います。


最初の引用先であるブログ記事には、もう少し詳しく書かれている。以下引用する。

THE BOOMの名曲「島唄」(宮沢和史 詞・曲)の旋律は、沖縄音階(ドミファソシド)で書かれています。しかし、曲の途中で、沖縄音階でない、日本のヨナ抜き音階(ドレミソラド)が出現する箇所があります。


私など気にしたこともなかった。ポップスにおいて音階の使用法が徹底されてなかったとしても、それはよくあることだ、と割り切って深く考えることをしないのである。むろん、これは私の悪癖である。


ブログ主はさらに書く。

…実は自分も、この部分の歌詞は集団自死のことだろうな、とは感じていました。だって、「千代にさよなら」、二番では「八千代の別れ」という歌詞が出てきますが、これが「千代に八千代に」という「君が代」からの引用であることは明らかです。


恥ずかしながら、これも指摘されてみて初めて気づいた次第だが、この引用には、戦前の天皇制に対する痛烈な批判とともに、「千代にさよなら」及び「八千代の別れ」には、天皇戦争犯罪に対する批判、及び二度と戦前の天皇制になど回帰するものか、という作者の強い思いが込められていると思う。

もっとも、歌詞のメッセージ性はよくあることで、それ以上に宮沢和史が音階にメッセージを込めたところが面白い。

とはいえ、一応表現の自由がある日本だから、メッセージを忍ばせるにしても、このようにかなりあからさまな手法をとることができる。

共産主義国だった中国やソ連では全くそうはいかなかった。少年時代、ベートーヴェンの「第9交響曲」がブルジョワ的だとして、文革当時の中国で批判されたという新聞記事を読んだことがあるが、ソ連ではアヴァンギャルドな作風の現代音楽家の作品にも共産党が介入を行い、「社会主義リアリズム」(社会主義を称賛し、革命国家が勝利に向かって進んでいる現状を平易に描き、人民を思想的に固め、教育する目的を持った芸術)が作曲家にも強要された。

これに対して、体制に迎合したかのように見せかけた作品中に、正反対の意味を込めたメッセージを忍び込ませた作曲家として知られているのがショスタコーヴィチだった。だが、どの作品にどういうメッセージがどこまで込められているかまではわからない。

滑稽だったのは、日本のNHK-FMクラシック音楽を解説している学者や評論家の多くが、ソ連や東欧びいきであって、社会主義リアリズムの宣伝を行っていたことだ。つまり、NHK-FMクラシック音楽番組は、硬直した左翼の巣窟だったのである。これについては以前にもこのブログで一度書いたことがあると思う。

最初のリンク先には、600件以上の「はてなブックマーク*1がついているが、その中に「こうやって言わないと伝わらないようじゃ音楽としては失敗かも?」というブクマコメントがある。私はそんなことはなかろうと思う。これはかなりあからさまなメッセージの込め方であろうと思うのである。Creedence Clearwater Revival(略称C.C.R.)の「雨を見たかい」における「雨」とは、空から降ってくる雨ではなく暗に爆弾のことを指しており、この歌は反戦歌であるという解釈がなされているが、これに異論を唱える人もいる*2

ところで、やはりブクマコメントに、

元々はスコットランドの民謡だった「蛍の光」など、ヨナ抜き音階は戦前の唱歌に(半ば無理矢理)取り入れられた様式であることも忘れてはならない。

という指摘がある。これに対し、

5音音階は世界で普遍的に見られるもので、日本にも昔からある(陽旋法など)。長調と陽旋法の融合がヨナ抜きでしょう。

というコメントもついている。

長調と陽旋法の融合がヨナ抜き」。すなわち、伝統的な旋法と西洋音楽の混合が「ヨナ抜き」なのであって、決して伝統的な音階ではなく、明治以降の音階だと考えた方が良い。実際、下記リンク先にも

伝統的音階ではなく、明治以降の音楽教育や演歌などの流行歌で多く用いられる。

と書かれている。
ヨナ抜き音階 | 音楽辞書なら意美音−imion−


そういや、城内実も「『ヨナ抜き』など日本の伝統的な音階ではない」ことに強く同意してくれるのではなかろうか。