kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

見逃した人は必見! NHKのドラマ『15歳の志願兵』再放送

どういうわけか今年は名古屋の当たり年で、現在も、COP10河村たかし中日ドラゴンズなど良くも悪くも名古屋が注目を集めているが、今年の終戦記念日に放送されたNHKのドラマ『15歳の志願兵』も、戦争中に名古屋の名門校・愛知一中で起きた事件を元に製作されたドラマだった。私は、このドラマを見て感銘を受けたので、『きまぐれな日々』の下記記事で取り上げた。
きまぐれな日々 NHKドラマ「15歳の志願兵」を見て思ったこと


このドラマが近く再放送されるとの知らせを、『きまぐれな日々』に戴いたsweden1901さんのコメント*1で知った。2か月前の記事へのコメントだから、読者の皆さまの目に触れる機会はほとんどないと思うので、ここに転載して紹介したい。

終戦記念日NHKドラマは毎年再放送があったようなのでそのうちあると思ってはいましたが、
15歳の志願兵」の再放送が決まった旨、番組のweb siteに告知がありました。
11月7日(日)16:00からNHK総合*2
です。
http://www.nhk.or.jp/nagoya/jyugosai/

今回は特に反響が大きかったはず。もっと番宣をしてもらいたいものです。

kojitakenさんが紹介してくださった原案本『積乱雲の彼方に』を、通販ですぐに注文していたところ、先日ようやく届きました。(今はどこも品切れのようです)
「原作」ではなく「原案」とあることから想像されるように、ドラマと本とは登場人物の設定などかなり違ってはいましたが、基本的骨格 (たとえば、総決起に場面については、昭和18年7月5日午前に時局講演会があり、校長、派遣将校などが講演。その直後に一旦各教室に戻った生徒たちが" 自主的"に生徒大会を開き総決起した、など)は同じでした。
つまり、ドラマの中で、誰がどうしゃべったかは多少の脚色があったにせよ、「愛知一中の3年生、4年生、5年生の全員が、総決起し予科練入隊を宣言するに至った」ことは厳然たる事実であったということです。(そのこと自体は、kojitakenさんも紹介されていた朝日新聞の記事ですでに示されていましたね)

また、kojitakenさんがエントリー記事の最後に書かれていたような、

あの時小泉純一郎を熱狂的に支持したのと同質のものが、
日本を無謀な戦争へと突っ走らせ、いかに戦局が泥沼化しようとも、
原爆を投下されるまで止めることができなかったのである。


このような一種異様な雰囲気がどのようにして形成されていったのか、ドラマで描写されていたよりもさらに緻密に、事実に基づいて淡々と記されていました。

『積乱雲の彼方に』の中では、多くの新聞記事が引用されています。朝日新聞だけではなく毎日新聞も随分あります。
権力と結びついたマスコミが、国民に対していかに大きな影響を与え得るのかを改めて思い知らされます。

また、出版元のweb siteに、
【この渦中にあった著者が事件の意味を問い、学友を鎮魂するため、幾多の証言と遺された日記をもとに、“中学生学徒動員”の軌跡を追った貴重な記録である。】と紹介されていることをkojitakenさんも書かれていましたが、自らも総決起の渦中にいた筆者が、後世にきちんとした記録を残すべきと考えて(動機についてはあとがきにもさらに詳しく書かれていました。かいつまんで言うと、生徒たちをそそのかした責任の一旦は教師たちにもあるはずなのに、戦後、まるで他人事のように振り返っている元教師たちの証言を聞き、この本を書き上げる意思が強固になった、とあります)、母校の化学教師の業務の傍ら、地道に資料を集められたことがよく分かりました。
さらには、ドラマではおそらく時間の都合上、予科練に入隊した一中生のその後については数人しか触れられていませんでしたが、『積乱雲の彼方に』ではかなりの人の、入隊後の足跡をできるだけ最後までたどっています。
第二次大戦の日本の戦死者数は、厚生省の資料によると310万人(うち、軍人230万人、民間人80万人)とされていますが、数が巨大すぎてリアリティーをもって認識することがかえって難しくなります。しかしこの本のように一人ひとりの生死をたどるという労苦をいとわずにしてくださった人がいるおかげで、我々の世代にとっても、戦争がいかに残酷で理不尽なものであるのか、心深く感じ入ることができました。

一気に読み終えたあと、改めてこの本の序言(書かれたのは昭和56年)を読み直してみました。

戦争を知らない世代が日本の全人口の過半数を占め、戦争体験の風化という声を耳にするいまこそ、この本を世に出す意味があると思われる。証言や資料提供など、さまざまな形で協力して頂いた人びとに感謝し、本書を公刊するに当たって尽力してくださった法政大学出版局の平川俊彦君に謝意を表するとともに、戦没した友人たちの冥福を祈りつつ、序言に代える。

という部分が特に心に残りました。

以上のことから『積乱雲の彼方に』もお勧めしますが、現時点では残念ながらなかなか手に入らないようですので、ドラマ『15歳の志願兵』の再放送を皆さんも是非ご覧になってください。

2010.10.18 22:57 sweden1901


積乱雲の彼方に〈新装版〉―愛知一中予科練総決起事件の記録―

積乱雲の彼方に〈新装版〉―愛知一中予科練総決起事件の記録―

*1:http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1100.html#comment10527

*2:戴いたコメントでは17日と書かれているが、正しくは7日に再放送される。