kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「冬の旅」と「最後の一葉」

O.ヘンリーとシューベルトに関するお話。とはいってもユダヤ陰謀論とは何の関係もない(笑)。

O.ヘンリーに「最後の一葉」という有名な小説があるが、彼はこの作品をシューベルトの最高傑作とされる歌曲集「冬の旅」の第16曲「最後の希望」にヒントを得て書いたのではないかという話である。

以前、タイガーマスクのエンディング曲「みなし児のバラード」が、「日本三大暗い歌」の一つに数えられていると、当ブログで紹介したが、シューベルトの「冬の旅」は、「世界三大暗い歌」に数えて良いだろう。初めて聴いた時には、あまりの暗さに面食らって、いったいこんな歌(24曲からなる歌曲集)のどこが良いのかさっぱりわからなかった。のち、CDを買って歌詞対訳を見ながら聴いて、初めてその良さがわかった。これは、ともに若くして世を去った詩人・ミュラーと作曲家・シューベルトが残した、失恋した若者の痛切なさすらいの歌であり、そんな芸術作品を作ることなど到底できない凡庸な聴き手である私が、彼らよりずっと長く生きているとはなんという不条理かと思ってしまう。権威主義がはびこるクラシック音楽の世界では、老成したバスの歌手が吹き込んだレコードをありがたがる風潮があり、私が中学生時代に初めてFM放送で聴いたのもその手のものだったこともあって、当時私は大いに退屈したのだが、ミュラーシューベルトによるこの作品はあくまでも若者の歌であり、歌い手も中堅の方が老成した大家よりふさわしいのではないかと思える。先日、CDショップで、クリストフ・プレガルディエンというテノール歌手が40歳当時の1996年に「冬の旅」を歌ったCDが1050円で売られていたので、これを買って聴いたのだが、中堅の歌手が自然体で歌っているように思われた。


で、久々に「冬の旅」を聴いたので、この歌曲集についてネット検索をかけてみたところ、その第16曲「最後の希望」が、O.ヘンリーの短編小説「最後の一葉」に似ているという話を見つけた。


この曲の歌詞の日本語訳は下記の通り*1

そこかしこの樹に見える
いくつもの色づいた葉
僕は樹々の前に佇み
しばし想いに耽る


その一葉を見つめ
願いを懸ける
風が僕の葉に戯れると
僕も震える、あらん限り


ああ、葉が大地に落ちたら
共に希望も潰えるのだ
僕も大地に身を投げて
我が希望の墓に涙しよう


まさしく「最後の一葉」そのものである。しかも、ここから興味深い話がつながる。上記日本語訳が掲載されているリンク先の記事によると、なんと「最後の一葉」成立の前年にアメリカでミュラー詩集が出版されたのだという。

さらに、別のサイトの記事*2を見ると、「最後の一葉」で葉っぱの絵を描いた老画家・ベアマンは、なんとドイツ訛りの人間として描かれているという。

そもそもベアマンという姓自体がドイツ系であり、

"Vass!"he cried."Is dere people in de world mit der foolishness to die because leafs dey drop off from a confounded vine? I haf not heard of such a thing.・・・"


「何たと。この世の中に、枯れた蔦の葉っばが落つたくらいて死んじまう人間かいるか。そんなの聞いたことねえぞ・・・」(石井宏訳)

などとしゃべっている。なるほどひどいドイツ語訛りで、"th" が発音できずに "d" になってしまうばかりか、"mit" (英語の "with" に相当)などというドイツ語の単語まで飛び出すありさまだ。

これは、O.ヘンリーが読者にヒントを与えているとしか私には解釈できない。要するにO.ヘンリーは、この小説の原案はドイツにあるよ、と示唆しているのに違いあるまいと私は考えるのだ。これは陰謀論でも何でもない。

笑えるのは、リンク先の記事によって、シューベルトの「冬の旅」にドイチュという音楽学者がつけた作品番号が「911」であるとか、O.ヘンリーの誕生日がなんと9月11日であると書かれていることだ。ヘンリーの誕生日の件は、一度どこかで読んだことがあるような気もするが、改めて笑ってしまった。

やはり、O.ヘンリーと「9・11」には切っても切れない関係があるようだ。


なお、私は「最後の一葉」を学校の英語の教材で知ったが、そのすぐあとくらいに、太田裕美が「最後の一葉」というシングル盤を出し、そこそこのヒット曲になった。知った順番はシューベルト、O.ヘンリー、太田裕美の順番だが、「冬の旅」の歌詞であるミュラーの詩の和訳を知ったのはずっと後になってからだった。

ここでは、シューベルトの「冬の旅」ではなく、太田裕美の方の動画をリンクしておく。なお、シューベルトの「最後の希望」はテンポの速い曲で、太田裕美の歌とは似ても似つかない。