kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

福島原発事故は「レベル7」の中でもかなり深刻だ

http://www.asahi.com/national/update/0412/TKY201104120085.html より。

福島原発事故、最悪「レベル7」 チェルノブイリ級に

2011年4月12日12時39分


 福島第一原発の事故について、経済産業省原子力安全・保安院原子力安全委員会は、これまでに放出された放射性物質が大量かつ広範にわたるとして、国際的な事故評価尺度(INES)で「深刻な事故」とされるレベル7に引き上げた。原子力史上最悪の1986年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故に匹敵する。放射性物質の外部への放出量は1けた小さいという。12日午前に発表した。


 保安院は3月11日の事故直後、暫定評価でレベル4としていた。放射性物質原子力施設外に放出されるような事故はレベル4になり、それ以上は、外部に放出された放射性物質の量でレベルが決まってくる。


 18日に79年の米スリーマイル島原発事故に匹敵するレベル5に引き上げた。レベル5は放射性ヨウ素に換算して数百〜数千テラベクレル(テラは1兆倍)の放出が基準だ。その後、放出された放射性物質の総量を推定したところ、放射性ヨウ素換算で37万〜63万テラベクレルになった。INESの評価のレベル7にあたる数万テラベクレル以上に相当した。東京電力によると、全放射能量の1%程度にあたるという。福島第一原発では今でも外部への放出は続いている。


 チェルノブイリ事故では爆発と火災が長引き、放射性物質が広範囲に広がり世界的な汚染につながった。実際の放出量は520万テラベクレルとされている。福島第一原発の事故での放出量はその1割程度だが重大な外部放出と評価した。評価結果は国際原子力機関IAEA)に報告した。


 福島第一原発では、原子炉格納容器の圧力を逃がすため放射性物質を含む水蒸気を大気中に放出した。さらに地震後に冷却水が失われ核燃料が露出して生じたとみられる水素によって、1、3号機では原子炉建屋が爆発して壊れた。


 2号機の格納容器につながる圧力抑制室付近でも爆発が起こったほか、4号機の使用済み燃料貯蔵プールでの火災などが原因で放射性物質が大量に放出されたと見られている。内閣府の広瀬研吉参与(原子力安全委担当)は「3月15〜16日に2号機の爆発で相当量の放出があった。現段階は少なくなっていると思う」と話した。


 東京電力原子力・立地本部の松本純一本部長代理は会見で「放出は現在も完全に止まっておらず、放出量がチェルノブイリに迫ったり超えたりする懸念もあると考えている」と話した。


 ただ、原発周辺や敷地の放射線量の測定結果は3月15〜21日に非常に高い値を示していたものの、その後低下している。4月10日に非公開で開かれた安全委の臨時会で保安院の黒木慎一審議官は「最悪の事態は今は脱した」と報告している。(香取啓介、竹石涼子、小堀龍之)


「レベル7」については当然そうだろうと思っていたが、私が目を剥いたのは「放射性ヨウ素換算で37万〜63万テラベクレルになった」というくだりだ。朝日の記事には書かれていないが、原子力安全・保安院は37万テラベクレル、原子力安全委員会は63万テラベクレルと推定したと報じられている。


なぜ目を剥いたかというと、3月25日付の朝日新聞記事に、

事故発生直後の12日午前6時から24日午前0時までの放出量を単純計算すると、3万〜11万テラベクレル(テラは1兆倍)になる。

と書いてあったのを覚えていたからだ。えっ、数万テラベクレルじゃなかったのか、と思ったのだ。3万〜11万テラベクレルと推定したのは、今回63万テラベクレルと推定したのと同じ原子力安全委員会である。


その謎は、朝日新聞の3月25日付と4月12日付夕刊の記事を読み比べてみてようやく解けた。


3月25日付の記事に出ていたのは、「放射性ヨウ素ヨウ素131)」だけの放出量だったのだ。それが、3月24日午前0時の時点で、3〜11万テラベクレルとの推算だった。4月12日付夕刊を見ると、それは15万テラベクレルとなっている。大量の放射性物質が放出されたのは3月15、16両日だったとのことだから、3月24日に原子力安全委員会が発表した試算の上限近くが本当の値だったらしい。つまり、それだけでも3月下旬の時点で既に「レベル7」に達していたわけだ。なお、チェルノブイリ原発事故では180万テラベクレルの放射性ヨウ素が放出された。


4月12日付夕刊には、ヨウ素131の他に、セシウム137の推定放出量(ヨウ素131換算値)も載っている。それが今回の福島第一原発事故で48万テラベクレル、チェルノブイリは340万テラベクレルだったという。これも、3月下旬の時点で既に40万テラベクレル程度は放出されたと考えるのが自然だ。要するに、3月下旬の時点で福島第一原発からはヨウ素131とセシウム137を合わせて約50万テラベクレルを放出していたと見られる。「レベル7」の程度は数万テラベクレル以上だから、私がブログの記事に書いた「レベル6とレベル7の境界領域だが、レベル7により近い」*1などというのはとんでもない大甘の見積もりであって、その時点で既に真っ黒、完全な「レベル7」だったのだ。3月25日の記事には、セシウム137の放出量については書かれていなかったのだが、素人である私のような読者がそれに気づくわけがない。


それにしても、朝日は「レベル6」だなんて、なんという甘いことを書くんだと怒っていた私でさえ、事態を甘く見過ぎていたことになる。何より私が懸念するのは、テレビでアナウンサーが「こんなに減ってますよ」と示す放射性物質の放出量のグラフが、全然減衰しているように見えないことだ。これがたとえば指数的に減衰しているような曲線になっているのなら楽観できるのだが、バックグラウンドに一定量の放出が続いているようなグラフになっていた。考えてみれば当たり前の話で、原子炉に穴が空いて一定量に近い放射性物質が漏れ続けているのだ。指数的に減衰するグラフになどなりようはずもない。これでは、時間が経てば経つほど放射性物質の総放出量がどんどん増え続けるのは当然で、いずれチェルノブイリを超えたとしても全く驚くには当たらない。


今回の原発事故は、一般に思われているよりはるかに深刻であって、東電や政府や原子力安全・保安院原子力安全委員会が公表していない事実はまだまだ山のようにあるのではないかと疑わざるを得ない。