kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「巨人と阪神がセ・リーグを弱体化させた」と小関順二氏

小関順二氏の名前は、プロ野球の読売・阪神両球団の応援歌を作った作曲家古関裕而と紛らわしいが、その小関順二氏が今朝の朝日新聞の特集「パ・リーグの時代」にコメントしている。

小関氏いわく、セ・リーグ(当ブログにおける表記は「読売リーグ」)は、巨人(同「読売」)と阪神によって弱体化したという。

元凶はもちろん1993年のFAとドラフト逆指名の導入で、小関氏は名前を挙げていないけれどもこの犯人はナベツネだ。さらに、これも小関氏は指摘していないが、1997年から99年まで、読売が優勝を逃し続けると、読売系以外まで含めたマスコミ総出*1で「『巨人』が強くないからプロ野球は盛り上がらない」、「長嶋さんの悲しむ顔は見たくない」などと、今思い出しても不愉快な、反吐が出そうなキャンペーンを展開した。

その結果、2000年という、アンチ読売ファンにとっては思い出したくもない悪夢のような年がやってきた。阪神から移籍したメイ、広島から移籍した江藤などをかき集めた読売は、ペナントレースを独走。さらに悲惨だったのはオールスター戦で、パはセに全く歯が立たなかった。この時のセの監督は、あの悪名高い星野仙一だったが、あの星野でさえ、自軍(当時星野は中日の監督)が読売に歯が立たずに負け続けていたことと重ね合わせてか、連夜の大勝にもかかわらず、バツの悪い思いを漏らしていたほどだ。あの年のオールスター戦は、セがパに勝ったのではなく、読売がパに勝った、これでプロ野球は終わった、そう思ったものだ。以前にも書いたことがあると思うが、この年の8月、広島市民球場で3試合連続で読売打線が大爆発して勝った3連戦で、江藤らがバンバン市民球場のスタンドにホームランを打ち込むさまを見て、これじゃまるで大虐殺だよなと思って嫌気がさし、以後テレビで読売戦を見る機会が激減した。

総仕上げがこの年の日本シリーズの「ON対決」で、長嶋茂雄率いる読売が王貞治率いる福岡ダイエーに当初2連敗したものの第3戦から4連勝して日本一になった。この時読売は福岡ドームで3連勝。パ・リーグの指名代打制は「巨大戦力」を擁する読売のためにあるようなものだと論評された。

以後の読売リーグは、翌2001年こそヤクルトが優勝したものの、2002年からは、読売自身に加えて読売が「ライバルにしてやっても良い」と認定した阪神・中日の3球団が優勝をたらい回しする時代へと移行した。

ここでやっとこさ小関氏の論考へと戻る。では、金の力で読売にかなわないパ・リーグがなぜ強くなったのかというと、小関氏は1999年の松坂大輔を皮切りに、パが札束合戦でセ(読売や阪神)と競合しない高校生を育てようという機運が生まれたためだと指摘する。小関氏が挙げた選手の名前は、ダルビッシュ田中将大、唐川、T-岡田中村剛也おかわり君)らだ。

一方、セは読売と阪神によって弱体化したとは、これも小関氏の弁だ。この両球団は、セの下位球団から主力を奪い続けてチームを骨抜きにしたが、その割に読売も阪神もさほど強くならず、リーグの活力を殺いだのだという。ここで「阪神」というチーム名が引き合いに出されているが、これもナベツネの差し金によって星野仙一阪神の監督(のち阪神フロント)に送り込まれ、それをきっかけにして、阪神が「金権球団」へと変身したことを指摘すべきだろう。星野は2003年、監督就任2年目にして早くも阪神を優勝させたが、その原動力となったのは広島からFAで獲得した金本と、日本ハムからFAで獲得した下柳だった。そこに、90年代に入団した今岡、赤星、井川(のちにアメリカで赤恥を晒した)らの全盛期が重なって、阪神は短い間だったが圧倒的な強さを誇った。しかし、読売顔負けの金権補強が、阪神の体質を読売とよく似た脆いものにしてしまった。

その典型が昨年の読売リーグ後半戦であって、首位を争っていた読売と阪神は、3位につけてはいたものの、戦力的にも日程的にもどうしようもなく不利だった中日に逆転優勝をさらわれたが、内容的には読売と阪神の自滅合戦だった。両球団は最終戦に至るまで2位の座を譲り合っていたほどだ。

小関氏は、読売をなめてはいけない、老舗の看板にとらわれている阪神とは違って賢いチームで、パに倣って高卒選手の抜擢を始めているという。原監督になってから読売が強くなったのは、その成果が出たからでもあるが、少し強くなるとナベツネが口を挟んでダメにするのが読売であり、ナベツネのスタイルはあくまで長嶋監督時代の「金権補強」だ。なにせ、そのやり方を阪神にまで輸出したほどだから。

もっとも、ナベツネもそういつまでも読売の会長をやっているわけではないだろうから、「ポストナベツネ」の時代には読売の再興が始まるのかもしれないけれど、ナベツネの目の黒いうちは無理だろう。

*1:朝日、毎日などのライバル紙はさすがに例外だったが、両紙と同系列のテレビ局やスポーツ紙は「読売翼賛キャンペーン」に参加した。