kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

植草一秀笛吹けど「小沢信者」は踊らず

一度、「BLOGOS」から『きまぐれな日々』の転載依頼を受けたことがあるが、返事をしなかった。当時の「BLOGOS」には池田信夫のブログの転載ばかりが目立って、ノビー大嫌いの人間として好感を持たなかったのが最大の理由だが、「BLOGOS」に限らず同種のサイトの依頼には応じないことに決めてもいる。

その「BLOGOS」にブログ記事が転載されなかったとおかんむりなのが植草一秀センセだ。


民主代表選に向けての偏向報道への対抗策を準備: 植草一秀の『知られざる真実』 より。

 ブログ記事を転載する「BLOGOS」は小沢一郎氏グループを支持する記事を転載しない傾向があると見受けられ、とりわけ、「正統民主党」や「悪徳民主党」などの表現を用いる場合、そのたびごとに言葉の定義を具体的に示さないと転載しない傾向があるので、あえて、冒頭に二つの用語の定義を改めて書き記した。
 
 民主党代表選については、昨日も
「小沢−鳩山連携で政権交代原点回帰新政権樹立を」
と題する記事を掲載したが、タイトルが「BLOGOS」の編集方針に合わなかったせいなのか、転載されなかったので、「BLOGOS」読者には、ぜひ昨日付記事もご高覧賜りたい。


植草は、タイトルに相変わらずの「偏向」の文字を使っている。
或る陰謀失敗の話(メモ) - Living, Loving, Thinking, Again によると、

ところで、植草は「偏向」という言葉が好きだけれど、この言葉遣いの嗜好は彼がそもそも左翼ではなく右翼だったということを示している。左翼が何かを批判したり糾弾したりする場合、反動的とか差別的という言葉を使うことはあっても「偏向」は使わないよ。寧ろ、これは(自民党を含む)右が好む語彙。「偏向教科書」問題とか。ということで、「偏向」という言葉からは、話者(筆者)の右翼臭が鼻に入ってくるのだった。

とのこと。確かにその通りで、子供の頃から「偏向」という言葉はずいぶん聞かされてきたが、これは「アカ(共産主義)に偏向した」という言葉の省略形であるという暗黙の了解の下に用いられる言葉だった。それで、当ブログや『きまぐれな日々』を見直してみたが、最近のエントリに「偏向」という言葉が出てくるのは、その大部分が植草のブログなどからの引用を含むものだった。ただ、「自民党寄りに偏向した」などの表現で用いたケースはある*1

植草がもともと右翼だったことは、彼の著書『知られざる真実』をわざわざ購入して読んだ時、すぐさま了解したことだ。植草はマネタリストとして研究活動に入り、東大在学中には当時酷評を浴びていた「レーガノミクス」を肯定的に評価する研究を行った。そして比較的最近でも、小泉純一郎とは対立関係にあったものの安倍晋三に対しては親近感を持っていたことは、『知られざる真実』を読めば明らかだ。

私が植草一秀を嫌うようになった理由は、「痴漢冤罪(?)事件」ではなく、植草の主義主張に反感を持ったことにある。安倍晋三のシンパなんかを「中心」とした「反自公ブログの結集」なんかに応じられるか、と思ったのである。しかし哀れなかつての「新左翼」諸氏は、同調圧力に負けてか、植草一秀小沢一郎を信奉する道を選んだ。それどころか、昔からの「武闘派左翼」や長年小沢一郎を批判し続けてきた人間まで「小沢信者」に転向するありさまだった。一方では、従来は岡田克也前原誠司への親近感を表明していた保守派の民主党支持者の中からも、「小沢信者」に転向する人間が現れた。


さて、植草は、小沢-鳩山連携で政権交代原点回帰新政権樹立を: 植草一秀の『知られざる真実』 の中で、

民主党代表選にはすでに何人かの議員が立候補の意向を示しているが、焦点は小沢−鳩山両グループが統一候補として誰を推薦するかである。
 
 悪徳民主党は正統民主党の投票を分断するために、謀略候補を擁立するだろうが、正統民主党は投票を一人の候補者に集中させることが肝要である。謀略候補には一票たりとも票を投じないとする姿勢が求められる。
 
 小沢−鳩山両グループが支持する候補者が新代表に就任し、新首相に就任するとき、日本政治は新しいページを開くことになる。
 
 2009年8月の政権交代の原点に戻るのである。
 
 2010年6月のクーデターにより、政権交代の意義が完全に失われる状況が続いたが、このたびの民主代表選を契機に、時計の針をもう一度未来に進めなければならない。

と書いているが、小沢信者のブログを見てみると、植草が吹く笛に全然踊っていない。「空き菅が辞めるなんて、最後の最後まで信じられない」とか、「菅の後は小沢一郎氏を総理に」とか、さもなくばブログを全然更新していなかったりなどなど、動きがさっぱりなのだ。

要するに彼らは「反権力」であってなんぼであり、下手に「権力側」に立って鳩山政権時代に味わったような辛酸はなめたくないのではないかとさえ思えてしまう。

おそらく、次期総理大臣候補として名前が挙がっている人物の中で最悪なのが野田佳彦だという点に関しては、植草一秀と私の意見は一致するだろうと思うが、上記の「小沢信者」たちにとっては「野田総理」こそ最善の選択肢なのではないだろうか。

で、リアルの小鳩派がどう動くかだが、大部分の政治家にとって大事なのはポストだから、勝つための道を選ぶだろう。そして小鳩派の「数の力」を考えると、普通なら小鳩派が肩入れする候補が有力になる。ただし不確定要素がある。小沢一郎である。小沢一郎にとっては、下手に小鳩派の発言力が増す内閣ができると、党内野党的な「言いたい放題」の言動をとりにくくなるデメリットがあるのだ。だから、小鳩派が結束するかどうかは不明だ。下手したら、大将自身の思惑によって「反野田」系の票が分散し、野田佳彦が次期民主党代表、そして次期総理大臣になってしまう目もあるかもしれない。

一つだけ確かだと思うのは、次期総理大臣も1年しか持たないことだ。今後の1年間で、次期首相が非難の雨あられを浴びることは間違いない。そして来年9月には民主党代表選がある。ほぼ間違いなくここで総理・代表の交代があるが、さらに次の総理大臣は、今度は1年も持たない。再来年には参院選衆院の任期切れがあるからである。おそらく2013年に衆参同日選挙が行われるが、そうなれば、1980年や1986年と同様の自民党の圧勝になるのだろうか。日本の政治の転落はどこまで続くのか、ちょっと想像がつかない。

*1:文脈から明らかな場合は、「自民党寄りに」などの但し書きを外して、ただ「偏向」と書いたケースもある。