kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

松田賢弥『角栄になれなかった男 小沢一郎全研究』

読み終えた本。


角栄になれなかった男 小沢一郎全研究

角栄になれなかった男 小沢一郎全研究


先週の土日に3分の2(6章構成の第4章まで)を読み、今日残りを読んだ。内容的には、小沢一郎田中角栄竹下登金丸信らを次々に裏切っていった経緯が描かれている前半の方が面白い。もちろん、自らが属する政党を潰してはその政党の政治資金残高を着服するなどの小沢一郎のえげつない犯罪的行為の手口を描いた後半も読ませるけれども。

この本には、小沢一郎の政治哲学や政策のことなど何も出てこない。そもそも小沢一郎にはそんなものの持ち合わせなどなく、ひたすら「敵味方思考」で行動する人間だから当然のことだろう。小沢にとっては「自分を引き立ててくれる」人間は価値があり、そうでない人間は価値がない。だから、小沢は最後には角栄も竹下も金丸もみんな裏切った。「裏切りの人生」というと私は鳩山邦夫を直ちに連想するが、小沢一郎だって負けてはいない。

そんな小沢だから、芯の通った政治的理念などあるはずもない。日本共産党を振り出しに、のちに保守政治のフィクサーとして名を馳せた福本邦雄(2010年没)の『回顧録』からの引用が本書に紹介されているが、それを以下に孫引きする(本書108-109頁より)。

(「創政会」結成は)あくまで派内・党内の権力闘争であって、世代交代という大義名分はあるにしろ、本当の理念に基づく闘争ではない。ふつう、党内で分派をつくる時には、共産党でもそうなんですが、国際派、民族派というのがあったんだ。そこに、一つのテーゼがないといけない。(「創政会」には)そのテーゼがない。権力闘争だ。


そう、小沢一郎には思想がない。あるのは権力闘争だけだ。だからある時には「規制緩和」「小さな政府」を掲げながら、突如「国民の生活が第一」などと言い出す。かと思うと「所得税と住民税の半減」を掲げて「日本版ティーパーティー」を煽る。これらはいずれも、その時その時に流行しそうな思想を取り上げて自らの政策として打ち出したものに過ぎない。

現在マスコミを騒がせている民主党代表選にしても、候補者の誰も原発問題や税制や社会保障の問題を取り上げて正面切った論争を挑もうともせず、小沢一郎の「党員資格停止処分の解除」なんかが「争点」になる。このあたりに小沢一郎の弊害が端的に表れている。

小沢信者の特徴である「敵味方思考」も、小沢一郎自身の発想をそのまま反映したものだと考えるべきだろう。

ことほどさように、日本の政治にとって小沢一郎とは百害あって一利なしの存在なのである。

ただ、私はこの本を「おすすめの一冊」には挙げない。小沢一郎なんかについて書かれた本を読むより、読書の時間はもっと有意義に使った方が良いと思うからだ。小沢一郎に関心をお持ちの方にのみおすすめする。