kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

やっぱり怪しい『院長の独り言』

そのあまりの「トンデモ」ぶりに驚いて、『院長の独り言』なるブログについて調べてみたのだが、最近になって急に注目を集めるようになったブログらしい。
http://tophatenar.com/view/http://onodekita.sblo.jp/


で、江川紹子批判以外の記事も見てみたのだが、やっぱり「怪しい」の一語に尽きる。


下記ブログ記事を見ると、ブログ主は「院長」とはいうものの、白血病に関する知識が驚くほど乏しいことがすぐわかる。
福島作業員の白血病診断が早過ぎる: 院長の独り言


この全く中身のない記事に95件もの「はてなブックマーク*1がついているのは、「院長」というブログ主の肩書きのためなのか。

急性白血病の診断だが、末梢血の検査ではわからないことが多い。骨髄検査をすれば確定できるが、これは激痛を伴う検査であり、白血病などが疑われない限り通常は行われない。白血病が発見されるのは、多くの場合病気が進んで末梢血の検査でも異常が見られる場合の精密検査においてである。私は医学に関しては素人だが、ある経緯によって上記のことを知っている。


この件に関しては、非常に大きな反響を呼んだ下記ブログ記事に詳しい。
2011-08-30


以下引用する。

事前の健康診断で白血球数の異常がなくても不思議はない


「事前の健康診断で異常がないのに、福島での作業との因果関係はないというのはおかしい」という意見もあるようです。数週間後に死亡するような病気を事前の健康診断で発見できないというのはおかしいと感じる気持ちは理解できます。しかし、報道が事実であるとするならば、事前の健康診断で白血球数の異常がなかったとしても、まったく不思議はありません。

もし、事前の健康診断で、骨髄の検査まで行えば、なんらかの異常が発見されていたかもしれません。あるいは、末梢血であっても、白血球の形態の異常の有無を顕微鏡で詳しく見ていれば、なんらかの異常が発見されていたかもしれません。けれども、白血病を疑われているわけでもない人に対する健康診断で、骨髄や末梢白血球の形態まで見る検査は行われていません。


さらに今回白血病で亡くなった方についての『NATROMの日記』の下記の見解も、非常によく納得できるものだ。

白血病細胞が増殖する期間からの知見


そうは言っても、今回の事例が特別に運の悪い事例である可能性を否定しきれないという主張もあるでしょう。しかしながら、疫学とはまた別の、白血病細胞が増殖する速度という知見からも、「8月上旬に被曝、少なくとも8月16日までに死亡」という期間を考慮するに、8月上旬の被曝が白血病の原因であるとは言えないと考えられます。

腫瘍細胞が増殖して体積が2倍になる時間を「ダブリングタイム」と言います。白血病細胞の場合は数日から10日ぐらいとされています*1。仮にダブリングタイムを4日とすると、1個の白血病細胞が生じてから急性白血病の症状が出るまで、どれくらい時間がかかるでしょうか。

大雑把に1兆個まで増えると白血病を発症するとして計算してみましょう。私の計算が確かなら、約160日で発症します。ダブリングタイムが2日なら80日で発症します。ダブリングタイムが1日なら40日で発症します。つまり、知られている限りもっとも早い増殖をする白血病細胞であったとしても、白血病細胞が生じてからわずか2週間あまりで発症から死亡にいたるようなことはありません。

なお「数日から10日ぐらい」のダブリングタイムは、既に白血病を発症した患者さんの白血病細胞から得られた情報です。生じたばかりの白血病細胞の増殖速度はそれほど速くないと考えられます。増殖しているうちに、より速く増殖できる能力を獲得しますし、相対的に数が少ないころは免疫系により増殖が抑制されるからです。そう考えると、「原爆による被曝から早くて2年間で白血病が発症する」という疫学的な知見は、白血病細胞が増殖する期間の知見からも、矛盾なく説明できます。


『NATROMの日記』の記事で特に強く銘記すべきは下記の指摘だろう。

忘れるな


今回の東電の対応について、不満を表明している人たちが多くいます。「これ以上調査する予定はない」とした東電の対応には私も問題があると考えます。しかし、「福島での作業との因果関係はない」という結論については同意せざるを得ないのです。東電を批判するとしても、少なくとも、現在得られている医学的知見からは「原発事故後の作業と急性白血病での死亡の因果関係はない」としか言えないことを十分に理解した上で、批判するほうが望ましいと私は考えます。

「現在の科学ではわかっていないだけかもしれないだろう」という理屈でなら因果関係を疑うことも可能です。しかし、そのようなことが容認される世界では、たとえば、「1ヶ月前に撮影したCTが原因で白血病を発症した」といったクレームも容認されるでしょう。あまり良い世界だとは私には思えません。

数年後から十数年後には、今回とは違って、本当の「因果関係は不明」という事例が発生します。それまで、今の気持ちを忘れないようにしましょう。たとえば、3年後に、原発作業員からの白血病の発症が報道されたとして、現在ほどの関心を呼ぶでしょうか。東電批判が流行に終わらないことを願っています。


この主張にも私は全面的に賛意を表する。当該『NATROMの日記』のエントリを極めて高く評価する次第である。


一方、『院長の独り言』の方はどうか。

  • 事前の健康診断(おそらく7月でしょう)では、白血球数の異常がなかった。
  • 体調を崩して、急性白血病と診断された

 体調不良(どのような臨床症状か書いてはありませんが)程度ですぐに血液検査をしているところが、私には不思議です。


院長氏がやっている病院がどんなところなのかは知らないが、ブログについたコメントにもあるとブログ主が認めているように、「大病院の医師では当たり前」だろう。私もそう思う。

ブログ主は「開業医レベルの話と、大きな病院のレベルでは観点が異なります」と逃げているが、問題はそんなところにあるのではない。白血病に関して意味のある情報をブログ主が何一つ提示していないところが最大の問題だ。

それなのに平然と「院長」という肩書きをブログ名にしたブログのエントリに、「福島作業員の白血病診断が早過ぎる」と題した全く内容のないエントリを上げる。


その厚顔無恥ぶりには呆れるほかはない。