kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「朝日の恋人」天地真理とタンゴとパーマンと皆川おさむと

天地真理と梶原一騎? - Living, Loving, Thinking, Again より。

天地真理という藝名が梶原一騎に由来するというのは知らなかった(本名は「眞理」)。斎藤貴男氏の梶原一騎本に書いてあったかどうか思い出せない。


私も読んだのはずいぶん前なのでうろ覚えですが、斎藤貴男梶原一騎本には、天地真理の芸名が梶原一騎の漫画に由来するとは書かれていなかったと思います。ただ、梶原一騎原作の劇画『朝日の恋人』への言及があって、その漫画のヒロインが天地真理という名前だったと書かれていました。私はそれを読んで、ああ、天地真理の芸名は梶原一騎の劇画からとられたものなんだろうな、と思った次第です。

さて、ネットで調べてみると、この作品はテレビドラマ化されていて、桜木健一が主人公の坂本征二役、吉沢京子天地真理役を演じたとのこと。大阪・毎日放送の制作で、関東ではNETテレビ(現テレビ朝日)が1971年7月22日〜10月14日に放送。歌手・天地真理は1971年10月1日のデビューとのことで、ドラマ放送の真っ最中だった。つまり、歌手・天地真理のデビュー時には、「天地真理」というと吉沢京子をイメージする人が多かったに違いないということで、私はそんなこと全然知らなかった。吉沢京子の名前は、岡崎友紀のライバル格として知っていたけど。なお、ドラマ制作時に作品名が『太陽の恋人』と改題されているが、これは制作した毎日放送がタイトルの「朝日」を嫌ったからだともいわれているらしい。

私は『時間ですよ』も見ていなかったし、天地真理のファンではなかったのだが、"Mプロジェクト" が東日本大震災の復興キャンペーンソングとして、天地真理のヒット曲『ひとりじゃないの』をリメイクしていたことを知った。元キャンディーズ伊藤蘭がこの歌の歌詞のナレーションをやっている。



私が小学生の頃、この歌がヒットしていたのは覚えている。調べてみると、天地真理のもっとも売れたシングル盤だったらしい。その天地のデビュー曲は「水色の恋」という歌だが、なんとこの歌には盗作疑惑があったとのこと。この手の話題になるとついつい調べて確かめたくなるのが私の悪い癖だ。「水色の恋」の原作とされた曲はアルゼンチン・タンゴだった。




タンゴは短調で始まるが、動画の50秒あたりで長調に転調して、なるほど「水色の恋」に似たメロディーが現れる。しかし似ているのは一部だけで、そもそも拍節が違っていて、タンゴの方はメロディーが4拍子の3拍目で始まっている。これが「盗作」だというのなら、前述の「ひとりじゃないの」の「私が一粒の 涙を返したら」の部分のメロディーは、昔のアニメ『パーマン』の主題歌「ぼくらのパーマン」の「きたぞ ぼくらのパーマンが」の部分からのパクリになってしまうと思う。



さらに連想は天地真理を離れ、「黒猫のタンゴ」に至ってしまった。しばらく前に朝日新聞の別刷りに載った記事で、日本では皆川おさむが歌ってヒットしたことで知られる「黒猫のタンゴ」は実はイタリアの歌で、1969年に当時4歳の少女、ビンチェンツァ・パストレッリが歌って大ヒットした曲を、こちらはパクリではなくまともにカバーした歌だと知ったからだ*1。驚くべきことに、パストレッリは売春宿を2軒経営していたなどとして4年前に逮捕され、実刑判決を受けていた。なぜ驚いたかというと、朝日新聞の記事では伏せられていたのだが、皆川おさむもまた日本で逮捕されたことがあるのを覚えていたからだ。調べてみると1984年のことだった。ところが、朝日の記事によるとパストレッリは冤罪を主張しているという。それにしても、ともに小さな子供が歌って大ヒットし、ともに逮捕されるとは。20歳そこそこで大人気を博した天地真理のその後の芸能生活も苦難に満ちたものだったようだが、さらに小さい頃に大人気を博した人たちは、それをはるかに上回る苦難の道を歩んでいた。タンゴつながりでそれを思い出し、パストレッリの動画を探したら、簡単に見つかった。イタリア人が投稿したと思われる皆川おさむ(?)の動画も見つかり、今なおイタリアでは人気があるらしいこの歌の動画も見つかった。





あれっと思ったのは、アニメーションをバックにした最後の動画だけ曲の長さが少しだけ違うことだ。皆川おさむ版はパストレッリ版をそのまま借用したものだとはっきりわかるが、これらのバージョンはアニメ版より曲が2拍分だけ長いのである。歌の部分の長さは同じなのだが、間奏の長さが違い、それが曲の印象を変えている*2。アニメ版は四角四面の4拍子で、歌い出しのメロディーは2拍目で始まる。一方、楽譜ではどうなっているのか知らないが、パストレッリ/皆川版は歌い出しが4拍目から始まって、途中で1小節だけ4分の2拍子が挟まっているように聞こえる。これは、天地真理の「水色の恋」とアルゼンチン・タンゴの "Hotel Victoria" の関係と似ている。「水色の恋」のメロディーは1拍目から始まるが、"Hotel Victoria" 中のよく似たメロディーは3拍目から始まるからである。それに対して、「ひとりじゃないの」と「ぼくらのパーマン」はともに1拍目で始まるから、(私には)よく似て聞こえる。似ているのは2小節だけなのだけれど、その箇所のメロディーには7度の音程の跳躍があるから、強く印象に残るのだ。

他のどの歌にも全く似ていない歌を作ることは至難の業ということなのかもしれない。

*1:http://www.asahi.com/shopping/tabibito/TKY201108040283.html

*2:あと、歌のリズムも微妙に違う。