kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「もんじゅ」事業仕分けにファビョる読売と産経(爆)

タイトルの「ファビョる」はもしかしてもう死語だろうか。


役立たずの高速増殖炉のプロトタイプ(原型炉)・「もんじゅ」が事業仕分けの対象になっている。

当然としか思えないのだが、これに怒り狂っているのが読売と産経だ。ともに社説に取り上げている。


http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20111121-OYT1T01344.htm

もんじゅ」 政策仕分けにはなじまない(11月22日付・読売社説)


 次世代の原子炉を目指す高速増殖炉もんじゅ」について、政府の行政刷新会議が、計画存続の是非を含め、抜本的に見直すよう提言した。

 刷新会議が20日に始めた仕分け作業で、与党議員ら7人の仕分け人が、「これまでに1兆円以上の予算をつぎ込んだが、何の成果もない」などと主張した。

 だが、わずか数時間の議論は事業予算の効率的な使い方が焦点となり、技術的な検討も、長期的なエネルギー政策の観点からの検証も、ほとんどなかった。

 東京電力福島第一原子力発電所事故後の「脱原発」の風潮を踏まえたパフォーマンスと言われても仕方があるまい。

 「もんじゅ」は1994年に運転を開始して以来、「ナトリウム漏れ事故」などで、ほとんど停止している状態だ。維持費だけでも年に200億円程度を要する。

 研究開発を担うのは、独立行政法人日本原子力研究開発機構だが、公的な研究組織ゆえに緊張感を欠いてこなかったか。経費の無駄はなかったか。仕分けで、そう指摘されたのは、もっともだ。

 しかし、日本が高速増殖炉を推進してきたのは、ウラン資源の有効活用を目指しているからだ。今の原子炉では燃やせないウランを燃料に変えられる。資源に乏しい日本の将来を見据えている。

 中国、インドなども同型の原子炉を開発中で、中国は今夏、実験段階の発電を始めている。国際的な研究開発拠点として、欧米からは、日本の「もんじゅ」の安定運転に関心が寄せられている。

 こうした経緯や動向を考慮しないのは問題だ。

 原子力政策については、政府のエネルギー・環境会議や原子力委員会などが、来夏を目途に見直している。「もんじゅ」も、その中で位置づけられるはずだ。

(中略)

 だが、枝野経済産業相は、仕分けの場で、原発の全研究費を再生可能エネルギーの研究に投じれば電力はまかない得ると述べた。今の技術水準からは容易なことではない。無責任ではないか。

(中略)

 重要政策は、多面的な論議を経て決められるべきものだ。仕分けには限界がある。
(2011年11月22日01時16分 読売新聞)


http://sankei.jp.msn.com/economy/news/111120/biz11112002580000-n1.htm

逆風の「もんじゅ」 存続必要な核燃サイクル
2011.11.20 02:55


 東京電力福島第1原子力発電所の事故を境に、日本の原子力事業に逆風が吹いている。とりわけ高速増殖炉もんじゅ」(福井県敦賀市)への風当たりが強い。

 もんじゅ保有する日本原子力研究開発機構原子力機構)は先日、研究開発の総事業費の不透明さなどを会計検査院から指摘されたところである。

 国会版事業仕分けも実施され、原子力機構を含む予算に対して厳しい目が向けられた。20日から始まる政府の行政刷新会議の政策仕分けでも、もんじゅ原子力機構が改めて俎上(そじょう)に載せられる。

 この機会に組織や計画の問題点を徹底的に洗い出すべきだが、高速増殖炉は、国の原子力政策の基盤をなす核燃料サイクルの要の一つとして存続が欠かせない。そのことは確認しておきたい。

 高速増殖炉は、燃やしたよりも多くの燃料を生む夢の原子炉だ。エネルギー輸入国の日本にとって実用化の意義は極めて大きい。

 もんじゅはその開発途上の原型炉だが、トラブルの連続だ。平成7年夏に発電を開始したものの、同年12月にナトリウム漏れ事故を起こして停止した。

 22年にようやく運転を再開したが、今度は原子炉容器内に重い装置が落下して突き刺さり、再び運転停止となった。8年以降は、運転を止めているだけで毎年100億円の維持費を要している。

 人件費などを合わせると、これまでに、もんじゅに使われた費用は約1兆810億円に上る。大部分が国民の税金だ。成果はほとんどなく、民間企業ならとっくに破綻していて不思議はない。

 高速増殖炉は日本の将来に不可欠の原子炉とされてきた。研究開発陣にその期待に寄りかかった甘えや思い上がりはなかったか。

 原子力機構に旧組織の動燃(動力炉・核燃料開発事業団)の体質が温存されているとすれば、根治療法が必要だ。統合で約4千人に膨れあがった職員数も問題だろう。プロジェクト別にスリム化した方が管理の目も行き届く。

(中略)

 福島事故で原子力の環境は一変したが、長期的な国益を見失ってはならない。高速増殖炉の開発撤退などの事態は何としても避けるべきだ。その危機感の共有が関係者に強く求められている。


非常に似通った社説だが、掲載は産経の方が2日早い。


朝日新聞の社説はまだこの件を取り上げていない。東京新聞中日新聞)もまだだが、毎日新聞が取り上げていた。


http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20111122k0000m070113000c.html

社説:もんじゅ仕分け 抜本的見直しは当然だ


 これまで日本は「核燃料サイクル」を原子力政策の基本としてきた。原発で燃やした後の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、高速増殖炉で燃やすという政策である。

 その一翼を担う高速増殖原型炉「もんじゅ」に、政府の行政刷新会議の「仕分け」が「存続の是非を含めた抜本的見直し」を突きつけた。

 もんじゅを含めた日本の原子力政策の全体像は、国家戦略室に設置されたエネルギー・環境会議が来夏までに決める。仕分けに法的な拘束力があるわけではない。

 しかし、原子力分野の仕分け人全員が「このまま進められない」と判定した意義は大きい。エネルギー・環境会議は仕分けで指摘された問題点をしっかり受け止め、政策の転換をゼロから図ってほしい。

 もんじゅは運転開始直後の95年にナトリウム漏れ火災を起こして停止した。昨年、14年半ぶりに運転を再開したが、今度は炉内に装置を落下させ、今も停止したままだ。

 もんじゅには、すでに1兆円以上が投じられ、停止していても維持費等で年間約200億円を費やす。実用化までには実証炉の建設も必要となるが、見通しは立たない。

 仕分け人に指摘されるまでもなく、実用化のめどが立たない研究開発に漫然と莫大(ばくだい)な税金を投じ続けることへの疑問は大きい。

 安全性にも不安がある。冷却材のナトリウムは水と反応し激しく燃えるため、制御や事故時の対応の難しさは通常の軽水炉以上だろう。

 核燃料サイクルのもうひとつの要である使用済み核燃料の再処理工場も、たび重なるトラブルで完成は次々延期され、コストがふくれあがっている。

 こうした問題は東京電力福島第1原発の重大事故以前から認識されていた。事故以降、いっそう真剣に考えるべき課題になったはずだ。

 にもかかわらず、もんじゅ関連の来年度の予算要求額は今年度と変わらない。これでは一般の人の納得は得られない。仕分けでは、出力試験に向けた22億円の計上見送りが提言されたが、さらに無駄がないか精査すべきだ。

 仕分けでは、もんじゅを運営する独立行政法人日本原子力研究開発機構」の不透明な税金の使われ方にも疑問の声が集中した。徹底した見直しが必要だ。

 福島第1原発の事故以降、政府は「脱原発依存」の方向性を示している。それを考えれば、核燃料サイクル自体の幕引きを考える時だ。

 これまで原子力に使ってきた投資を福島の再生や再生可能エネルギー・省エネに振り向ける。政府はその道筋も早く示してほしい。


この件に関しては毎日が中日(東京)に先んじた形だ。だが「野ダメ」政権に期待するのはムダだろう。