kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

文革の寵児・張鉄生のメモ & 戦争交響曲(追記あり)

周ではなくて張 - Living, Loving, Thinking, Again より。

中国で白紙答案を出して英雄視されたのは「周鉄生」ではなく「張鉄生」でした。古寺多見さん、ご指摘ありがとうございました。ちょうど今手許にある馬国川『我與八十年代』という本に収録されている李銀河老師へのインタヴューに「張鉄生交白巻事件」という言葉が出てきます(p.179)。どうして、「張」と「周」を取り違えてしまったのか、自分ながら不可解。ところで、古寺多見さんが援用しているWikipediaの記述とJohn Gittings The Changing Face of Chinaの記述の間には年代的なズレがあります。


普通に考えればWikipediaの方が信用できないと思いますが、「張鉄生についてもっと知りたい!」と思ってネット検索をかけてみました。結局有罪判決や出所した年に関する情報は見つかりませんでしたが、2003年12月22日付読売新聞の1面掲載コラム「編集手帳」に下記の記述があったことがわかりました。


http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20031221ig15.htm(リンク切れ)

中国が経済発展を最優先する改革・開放の道を歩み始めたのは、一九七八年の暮れ、ちょうど四半世紀になる。毛沢東を批判する初めての壁新聞が、北京市内に張り出されたのも同じころだ◆当時の本紙北京特派員は、子供の運動靴を買うために出かけた市内で黒山の人だかりを見つけ、これをいち早く報じることができたという◆毛沢東は無謬(むびゅう)の神の座から転落し、時には誤りも犯す人間となった。「造反有理」の毛沢東思想に取って代わったのが、金こそ命の金銭第一主義。文化大革命中の大学入試で白紙答案を出し、知識偏重教育批判の英雄となった張鉄生さん(53)も、今ではお金持ちの会社経営者◆(後略)


その頃の読売新聞に張鉄生について書かれた記事があったと想像されますが、残念ながらたどることができませんでした。しかし、出所後10年で大富豪とは凄い!


話は変わって私の好きな戦意高揚音楽ネタ。

さて、朝比奈隆の戦争協力問題が言及されていましたけれど、戦意昂揚のための音楽ということで思い出すのは、アーロン・コープランドの「庶民のファンファーレ」。この曲のティンパニーの連打を(当時日本側で戦意昂揚に挺身していた)山田耕筰が聴くことができたならば、こりゃ負けたなと思ったかも知れない。
そういえば、1984年に出た(当時「朝鮮大学校」校長をしていた)南時雨という人の『主体的芸術論』という本を持っていたのだった。退屈が大好きだという人にしかお薦めはしないですけど。


おお、コープランドにもそういう作品があったのかと思って、さっそくネットを参照。


http://www.amazon.co.jp/dp/B00004UDEQ/?tag=hatena_st1-22&ascsubtag=d-6jg7 (カスタマーレビュー)より。

  • いずれ劣らぬコープランドの傑作ばかり。演奏も秀逸。これらの収録曲には同じツインシティのセントポール室内管弦楽団とデニスラッセルとの名録音があるが、本CDは、演奏、録音ともにこれをしのぐ。若き大植の野心みなぎる名演がとびきりのハイファイ盤でオーディファイルを喜ばしてくれる。それにはとにかく冒頭トラックの「市民のためのファンファーレ」をフルボリュームで鳴らしてみることだ。
  • 大植英次さん指揮、ミネソタ管弦楽団の演奏。1曲目の市民のためのファンファーレ、出だしでしびれます。ブラスの響きが豊かでその後に来る太鼓の音の深さ、これは感動モノです。ホールトーンも十分に聞き取れ製作したリファレンスレコーディングスのミキサーの耳のよさを感じます。3分32秒が短く感じます。交響曲第3番の最終楽章、6曲目に1曲目と同じモチーフが出てきますがこちらも各楽器の音が明瞭でとても楽しく聞けます。ぜひ大きな音で聞いてみてください。


なるほどこれは凄そう。カスタマーレビューの2件目を見ると、ファンファーレはコープランド交響曲第3番の終楽章にも転用されているとのことだから、これはコープランドの「戦争交響曲」なのだろうか。

というところから思い出したが、実はベートーヴェンにも『ウェリントンの勝利』(戦争交響曲)という作品があるのだった。これは1813年の「ビトリアの戦い」でイギリス軍がフランス軍、というよりナポレオン軍(総司令官はナポレオンの兄のジョセフ・ボナパルト)を破ったことに狂喜乱舞したベートーヴェンが書いた作品で、かつて「ナポレオン信者」だったベートーヴェンが完全に「転向」して「反ナポレオン信者」になったことを示す作品だが、今では「ベートーヴェン唯一の駄作」と散々の評判。私はFM放送で一度だけ聴いたことがありますが、全く印象に残っていません。


[追記]
張鉄生について、コメント欄でid:hakouitiu(八紘一宇?)さんから下記の情報をご提供いただいた。

張鉄生 1983年、錦州市中級人民裁判所"反革命"宣伝と扇動、する陰謀国家権力を打倒三年のための政治的権利を奪わや刑務所で15年に刑を宣告、。1991年10月16日、彼は解放された
http://zh.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%A0%E9%93%81%E7%94%9F


もとの中国語版Wikipediaの記述は下記。

1976年四人帮被捕后,张铁生亦随即被捕,被撤销所担任的职务和开除党籍。1983年,锦州市中级人民法院以“反革命”宣传煽动罪、阴谋颠覆国家政权罪,判处有期徒刑15年徒刑、剥夺政治权利3年。1991年10月16日,他获释。


Referenceとして、「《中华人民共和国新闻史‎》张涛,经济日报出版社,1992年,ISBN 9787800364181,页213」が挙げられている。