kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

テレビドラマ『運命の人』巡り西山太吉氏に謝罪 岡田副総理

http://www.asahi.com/politics/update/0207/TKY201202070462.html

岡田副総理「西山氏に申し訳ない」 沖縄返還密約問題


 外相時代に日米間の密約の存在を認めた岡田克也副総理が7日の参院予算委員会で、1972年の沖縄返還密約を示唆する機密電文を入手し、国家公務員法違反で有罪が確定した元毎日新聞記者の西山太吉さん(80)について「本当に申し訳ない」と謝った。

 みんなの党小野次郎氏が同事件をテーマにした放映中のTVドラマにからめて密約を認めた感想を聞いたのに答えた。「国家の密約という問題の中で犠牲者になった一人だ。ジャーナリストとしての行動に一定の敬意を表す」と述べた。

 岡田氏は「歴代の首相、外相が少なくとも90年あたりまで外務省から(密約の)報告を受けながら、国会の場でも否定してきたことは許し難い。我々は議会人として深刻に反省すべきだ。開き直りは許されない」とも語り、珍しく感情をあらわにした。

朝日新聞デジタル 2012年2月7日20時6分)


へえ、国会でそんなやりとりがあったんだ。「放映中のTVドラマ」とはもちろんTBSテレビの「日曜劇場」の枠でやっている山崎豊子原作の『運命の人』であって、原作及びドラマの作りには若干いただけないところもあるけれど、沖縄返還を巡る日米密約を告発した新聞記者が国家権力に報復されたという描かれている。それが国会でも取り上げられ、既に「密約」自体は認めている民主党政権が西山元記者に謝罪した。ほとんどない「政権交代」の本当に数少ないメリットといえるかもしれない。

もっとも、それ以上に感じたのは、やはりテレビの影響力は絶大だということ。この記事のタイトルにはその感想を反映させた。朝日新聞本体には4面に小さくこの記事が出ていて、「日米密約巡り西山氏に謝罪 岡田副総理」という見出しがついているが、それをもじった。

そういえば、昨日の『夕刊フジ』、『日刊ゲンダイ』両夕刊紙に、ナベツネがこのドラマに対して怒ったとの見出しが出ていたが、下記の件ではないかと思う。


読売渡辺会長「たかり記者じゃない!」 - 芸能ニュース : nikkansports.com

読売渡辺会長「たかり記者じゃない!」


 沖縄返還密約をめぐり元毎日新聞記者・西山太吉氏(80)が逮捕された事件小説が原作で、俳優本木雅弘(46)主演のTBS系ドラマ「運命の人」(日曜午後9時)に、読売新聞グループ本社渡辺恒雄会長・主筆(85)が怒りをあらわにした。今日7日発売の「サンデー毎日」に寄稿し、人物設定の情報提供したとされる西山氏に「一言わびよ」と謝罪を要求している。

 劇中、自身をモデルにしているとみられる大森南朋が演じる「読日新聞記者・山部一雄」が、料亭で「田淵角造(田中角栄とみられる)」にペコペコしながらごちそうになったり、買収される「たかり記者」と描かれていると批判している。「モデルと実在人物が特定できるように描かれ、この疑似フィクションドラマで著しく名誉を傷つけられた」と訴えている。モデル人物の名誉毀損(きそん)にあたる過去の判例も挙げている。また、怒りの矛先は、西山氏の間違った情報をもとに人物設定した原作者の山崎豊子氏にも及んでいる。

 突然の“場外騒動”にTBSも困惑。「コメントする立場ではない」として静観の構えだ。

 ◆日曜劇場「運命の人」 原作は09年に発表された山崎豊子氏の同名小説で、約40年前に実際に起こった「沖縄返還密約事件」を基にしている。本木雅弘演じる主人公、弓成亮太(西山太吉)の勤務先が毎朝新聞(毎日新聞)とされているほか、ライバル記者に読日新聞(読売新聞)山部一雄(渡辺恒雄)。そのほか、総理大臣佐橋慶作(佐藤栄作自由党の福出赳雄(福田赳夫)小平正良(大平正芳)田淵角造(田中角栄)曽根川靖弘(中曽根康弘)など実在の人物に類似した名前が使用されている。ただ、原作もドラマもフィクションで、カッコ内の人物はあくまでもモデルとして推測される人物。

(日刊スポーツ 2012年2月7日7時10分)


要するに『サンデー毎日』という発行部数約7万部だかのマイナー週刊誌に載ったナベツネのインタビューをスポーツ紙や夕刊紙が拡散しているのだが、私はこれは手の込んだ番宣なのではないかとにらんでいる。

そもそもナベツネは西山元記者と交友があり、ナベツネ西山事件の裁判で弁護側の証人として証言しているし、二審裁判中の1975年12月には『週刊読売』に西山元記者を弁護し、蓮見喜久子元外務省事務感に疑問を呈する記事を書いている。最近私はこれを読んだが、西山元記者を批判し、蓮見元事務官に同情する世論やマスコミの論調が支配的だった時期に書かれた勇気ある記事と評価できるものだ。

TBSのドラマは、確かに「悪のり」して、山崎豊子の原作にもなかった改変をしてナベツネへの悪印象を与える作りになっているけれど*1、もし原作通りであれば、今後ナベツネ、もとい山辺一雄が悪役を演じる場面はほとんどなく、むしろ史実通り弁護人側の証人として証言するなど「善玉」として描かれる機会が増えるはずだ。

ナベツネサンデー毎日の編集部もそれを知っていて番組の宣伝をしているとしか私には思えない。もちろん、「場外騒動」に困惑しているというTBSも、山崎豊子氏も西山太吉氏もいってみれば全員が「グル」だ。

いや、別に悪い意味で言っているのではない。ドラマで新聞記者の妻を演じる松たか子は「西山事件」のことを全く知らなかったそうだが、今回ドラマ化されたことによって、横路孝弘がやらかした失態をはじめとして、この件に関して私自身知らなかったことをいろいろ知ることができた。多くの人にこの「外務省機密漏洩事件」が知られることは意味があると私は思っている。


[PS](2012.2.9)
この記事はナベツネの「寄稿」を読む前に書きました(早い話が「飛ばし記事」)。昨日当該の雑誌を買ってナベツネの主張を読みましたが、事実関係はナベツネに理があります。この機に乗じたナベツネの自己PRだと思いましたが、機会があったらまた紹介したいと思います。

*1:たとえば本当は朝日新聞のスクープだったと思われる沖縄返還の日米協定全文のすっぱ抜きを、ナベツネが田淵角造に取り入ってスクープしたことに改変していた。山崎豊子の小説ではちゃんと『旭日新聞』がスクープしたことになっている。