先月読んだ本。当ダイアリーでこれまでに取り上げた本は除く。

六ヶ所村の記録――核燃料サイクル基地の素顔(上) (岩波現代文庫)
- 作者: 鎌田慧
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2011/11/17
- メディア: 文庫
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六ヶ所村の記録――核燃料サイクル基地の素顔(下) (岩波現代文庫)
- 作者: 鎌田慧
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2011/11/17
- メディア: 文庫
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鎌田慧が1970年から取材すること20年あまり、1991年に単行本が刊行された。岩波現代文庫版は昨年11月刊。鎌田慧は青森県出身だが、下北ではなく津軽の出身。同県でありながらことなる地域の出身という微妙な立ち位置がルポに絶妙さをもたらしている。ボリュームもたっぷりで、たいへんな力作だ。やはり「原発本」は東電原発事故以前に書かれたものが良い。

- 作者: 佐野眞一
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2012/01
- メディア: 単行本
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独特のアクの強いノンフィクションで知られる作家・佐野眞一が筑摩書房のPR月刊誌のコラムに好き勝手に書き散らかした文章を集めたもの。普通なら金を払って買うほどの本ではないが、気に入った箇所があったのでわざわざ購入した。
まず、本書の中で唯一橋下徹に言及したくだり。
紳助擁護の声はこれに限らなかった。大阪府知事の橋下徹が「紳助さんはバラエティー番組の宝。僕が府知事になれたのも、紳助さんの番組に出させてもらえたおかげ」と言ったときには、やはりこの男は、そんな薄汚い遊泳術で生きてきたのか、と妙に得心がいった。(200頁)
それから何といっても最後のコラム。昨年(2011年)に亡くなった方々への追悼文で、横沢彪に始まり、和田勉、坂上次郎、田中好子と続くが、特に田中好子については亡くなる3週間前に病室で自ら録音した肉声メッセージの全文を収録しており、改めてしんみりさせられる。以下、児玉清、長門裕之、原田芳雄、小松左京、竹脇無我、杉浦直樹、北杜夫、エリザベス・テイラー、サイ・ババ、ピーター・フォーク、スティーブ・ジョブズ、カダフィ大佐と続く。
笑ったのがその次である。「最後に生きているが、もう鬼籍に入った方がいいと思う男について書いておこう」と書かれており、そのあとにその男に対する悪口が書き連ねられている。これを読んだ時には思いっきり笑った。はっきり言ってこのくだりを読んで、立ち読みで済まそうと思ったこの本を思わず買ってしまったのである。ここではネタバレはしないでおく。コラムは下記の文章で結ばれる。
こんな男がぬくぬくと生き延び、"スーちゃん" が五十五歳の若さで亡くなる。人間とはつくづく不条理な存在である。(214頁)

新自由主義の復権 - 日本経済はなぜ停滞しているのか (中公新書)
- 作者: 八代尚宏
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2011/08/25
- メディア: 新書
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これは買ってから半年近くも寝かせておいた本で、苦痛を感じながら読んだ。多くは同意できない主張だったが、それでもネットのみならずリアルの政界などに蔓延している俗流新自由主義(たとえば河村たかしの「減税真理教」もとい「減税日本」など)と比較すればまだマシだと思った。ネットではあまりに俗流新自由主義の蔓延がひどいから、橋下徹が「ベーシックインカム」を言い出しただけで「再分配政策」だとして「評価」される珍現象が生じる。同じ論法を当てはめれば、累進課税による景気の自動安定化装置に任せて政府は何もするなという八代尚宏の主張さえ「再分配政策」になってしまう。事実、一時期当ブログにからんできた「革命烈士」は八代などの新自由主義的な主張を「所得税信者」と呼んでいた。「革命烈士」はティーパーティーの支持者なのである。追随者は本家より過激になるのが常だが、ネット言論だの小沢一郎周辺の動きだのはその典型的な悪例といえるだろう。