kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

なぜ橋下徹が安倍晋三や石原慎太郎より「危険」なのか(前編)

きまぐれな日々 ナベツネは単なるワンマンマン、橋下徹の方が1万倍危険だ のコメント欄より。


http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1246.html#comment14004

はじめまして。abendの頃よりずっと拝読させていただいています。


ナベツネは単なるワンマンで、橋下の方が余程危険だ」
というkojitakenさんの主張には賛成ですが、
石原(やあるいは安倍?)などの、従前の日本会議系の右翼政治家の危うさを軽く見るような言い回しが散見されたのが気になりました。


石原(安倍)より危険なら危険で、なぜ「より」危険なのかについて説明がないと、
「リベラル派」ないし「左派」を反橋下の一点で糾合するのは難しいのではないでしょうか?


2012.03.19 14:25 amur


"Abend" というのは "Abe" と "end" の掛詞で、「安倍晋三を終わりにしよう」というネットキャンペーンのこと。当時からお読みいただいているというamurさんにはお礼を申し上げます。このキャンペーンは、まだ安倍晋三が総理大臣になる前に「ポスト小泉」の筆頭と目されており、新聞・テレビはおろか週刊誌にさえ安倍批判記事がほとんど出なかった頃の2006年6月に始めたもの。安倍は総理大臣にはなれたものの翌2007年7月の参院選で与党・自民党が大敗し、安倍はそれでも総理大臣の座にしがみついたものの、腹の具合がおかしくなって同年9月に総理大臣の座を突如投げ出しました。それも国会での所信表明を行なった2日後という非常識なタイミングでした。参院選の大敗や恥さらしな辞任劇は、安倍の自滅であってネットキャンペーンが何らかの役割を果たしたわけではありません。しかし、このキャンペーンを始める時に私は、「安倍なんてこけるに決まってるじゃないか。なんでみんな安倍を批判しないのだろう」と不思議に思ったものです。

安倍というのはその程度の人間です。今では腹の具合も良くなって復活に虎視眈々らしいですが、仮に総理大臣に返り咲いたところで同じ失敗を繰り返すに決まっています。

安倍と橋下の最大の違いですが、学校の成績以外は何一つ不自由なく育った安倍と、逆境から這い上がった橋下のキャラクターの違いに負うところが大きいと思います。橋下は大衆のルサンチマンを巧みに刺激しますが、安倍にはそれができません。安倍がホワイトカラー・エグゼンプションを「家庭団らん法案」とかなんとか呼んだ時、現実に裁量労働制長時間労働の経験があった私は、「苦労知らずのボンボンが何言ってやがる」と思ったものですし、世論の大勢もおそらく同じだったでしょうから、安倍はこの件で非常な不評を買いました。一方、橋下が公務員バッシングをやると世論は熱狂します。その点では小泉純一郎と共通しています。


「きまぐれな日々」の同じエントリのコメント欄より。

http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1246.html#comment14007

「橋下の方がより危険だ」というのはあくまでも表現の手法であり、これが日本会議系を警戒しなくてよいというのとは違うと思います。
「AはBより危険が大きい」ことは「Bは軽視してよい」という論理にはならないからです。


さて私も警戒すべきは橋下だと思います。
なぜか? それは石原や安倍が一時的に人気を取っていても、それは彼らの極右的な思想が支持されているからではなかったからです。
つまり石原とか安倍とかがいくら極右的なことを述べても庶民は興味がありません。興味がないから暴言・失言を繰り返す石原が何度も当選とも言えます。


一方橋下は属人的な人気を持っています。
つまり政治思想が合うから橋下支持ではなく「橋下さんの言うことなら賛成」と、政治家に自分を合わせて支持している人が多いことが脅威なのです。小泉の言うことにはもろ手を挙げて賛成、同じことを安倍が言ったら反発という数年前の状況と似ているのです。


橋下はこれまで自分の失態から逃げ続けています。
それでもこれまでのところ府民・市民は常に好意的な解釈をして橋下を擁護しました。橋下の発言や行動が正当かどうかではなく、橋下だからという理由で有権者によって正当なものにねじ曲げられてしまうから危険なのです。


それにいくら独善的な政治家でも「選挙で勝ったら白紙委任(だから俺が好きなようにやってもよい)」だとか「批判派は北朝鮮へ行け(この国は選挙に勝った俺への賛成派だけいればよい)」という暴論を、それも一部の集会でポロリと失言ではなく、公然と述べてきた政治家はあまり見聞きしたことはありません。


2012.03.19 20:01 飛び入りの凡人


「飛び入りの凡人」さんの仰る通りであって、橋下の「属人的な人気」こそ恐ろしい。小泉純一郎も人気という点では同じで、その小泉だからあんな血も涙もない「構造改革」をやってのけることができたと思います。橋下の場合は小泉のブレーンだった竹中平蔵八代尚宏らよりさらに過激な新自由主義政策を唱えている上、「選挙で勝ったら白紙委任だ」、「批判派は北朝鮮に行け」などの、小泉でさえ言わなかったような独裁志向の暴論を平気で吐く。だから恐ろしいのです。さらに橋下が憲法9条改正や核武装まで唱えていることは周知の通り。これでも「橋下は安倍や石原と比較すればアブナくない」と認識してしまえる人たちの感覚が私には理解できません。まさか「小沢氏が橋下の毒を100倍に薄めてくれる」と本気で信じているのでしょうか。


http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1246.html#comment14005

ナベツネ小泉政治にも懐疑的で、小泉時代は朝日・毎日の方が小泉政治に親和的でした。ナベツネの思想は自民党政治とパラレルで、それに最も近いのが野田政権かも知れません。国民が嫌がる政策を愚直に国民に訴えて説得する政治です。このやり方ははっきり言って効果がないのである意味安全です。大新聞が消費税増税賛成キャンペーンを展開しても、消費税増税支持は下がる一方。ネチズンが敢えて消費税増税反対キャンペーン展開をしなくても自滅しているくらいです。一部の国民を仮想敵にし、それを叩くことで支持率を上げながら猛進する政治こそ危ない!


2012.03.19 17:28 kechack


これは本当にその通りで、ブログを始めるよりずっと以前の2002年、当時私は朝日も毎日もとっていなかったのですが、時々行くレストランにはこの2紙が置いてあって、いつも両紙の小泉・竹中礼賛に憤慨していたものでした。特に忘れられないのは、何度も書きますが2002年10月26日付の朝日新聞社説「不良債権――『竹中いじめ』の無責任」。あまりに衝撃的だったのでその日付まで覚えています。私は税制については、先進国では類を見ないほど個人所得課税負担率が低い日本が、それを放置したまま消費税増税に走ることを批判しています。所得税に関しては分離課税だらけで富裕層優遇になってしまっている上、竹下内閣の頃までに累進課税を弱め過ぎた。まず直接税の税収を拡充し、しかるのちに消費税増税を検討せよというのが私の主張です。だから「野ダメ」(野田佳彦)やナベツネの「消費税増税一本槍」には全く賛成できません。しかし、橋下の「フラットタックス」(定率課税)は、おそらくフリードマン大前研一の影響を受けたものでしょうけど、竹中平蔵八代尚宏でさえ主張しないトンデモ税制です。たとえば竹中は昨夜(3/19)放送されたNHKの番組で、所得税を重視すると明言していました*1。竹中や八代などの新自由主義者にとっては、「累進課税のビルトインスタビライザー(景気の自動安定化装置)の機能に任せて、余計な政府支出はしない」ことが基本的な考え方なのです。その累進課税さえ否定して「フラットタックス」などと言い出す橋下が「野ダメ」はおろか「小泉・竹中」よりもずっと過激というより「トンデモ」な新自由主義者であることは疑う余地はありません。つまり、経済政策においても橋下は小泉や安倍(あるいはナベツネや「野ダメ」)よりずっと危険だと考えます。
後編に続く)

*1:竹中平蔵はかつて「人頭税こそもっとも公平な税制」と主張したとされるが、これは竹中が冗談めかして語った言葉に過ぎない。出来の悪いジョークだとは思うが。