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古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

九大生体解剖事件を取り上げた毎日新聞記事で思い出した東野利夫さんの著書

http://mainichi.jp/select/news/20120816k0000m040050000c.html

九大生体解剖事件:「戦争は人を狂わす」最後の目撃者語る


 1945年5月、大分、熊本両県境に墜落したB29搭乗の米兵8人が次々と旧九州帝国大(現九州大)医学部に運ばれ、やがて死亡した。連合国軍総司令部(GHQ)が「類例ない野蛮さ」と表現した「九大生体解剖事件」。医学生として立ち会った福岡市の医師、東野利夫さん(86)は何を目撃し、何を思ったのか。「戦争は人を狂わせる。悲惨と愚劣しか残らない」。67年後の今、東野さんは改めて平和の尊さを訴える。

 東野さんは1945年、同大医学部に入学。約1カ月後、配属された解剖学教室で、事件は起きた。「手術する場所を貸してほしい」。外科医から解剖学教室の教授に連絡があった。数日後、米兵の捕虜2人が運ばれてきた。麻酔がかけられ、肺の手術が始まった。透明の液体が体内に入れられたが、その液体が代用血液として試された海水だったことは後に知った。

 実験手術だった。軍の立ち会いの下、4回にわたって8人に上り、うち2回を目撃。無傷の捕虜にも施され、終わると血液は抜かれ、息絶えた。「ただ不思議で怖くて、緊張して体が固まった」。

 東野さんはGHQの調べを受け、裁判の証言台にも立った。主導していたとされる軍医は空襲で死亡、執刀した外科医も拘置所で自殺した。

 「軍人と医者が残虐非道なことをしたが、これは事件の本質ではない」。東野さんは独自に調査中、気が付いた。「当時の心理状態は平和な時代には考えられないほど、おかしな状態だった」。戦争末期の空気と混乱は医者をも狂わせた。

 事件の目撃者が東野さんだけとなり、講演にも力を入れたが、体力の衰えで数年前から休止した。時代は移りゆくが、平和への思い、願いに変わりはない。「非戦を誓った憲法9条は必ず守ること。そして捕虜に対し学内の医師がメスを持ったという事実を正面から受け止め、母校の敷地に8人の慰霊碑を造ってほしい」【金秀蓮】

【ことば】九大生体解剖事件

 1945年5〜6月、墜落したB29に乗っていた米軍捕虜計8人が、旧九州帝国大医学部で実験手術を受け死亡した。西部軍司令部は8人について、広島へ移送後に被爆し死亡したとしたが、GHQの調査などで発覚。計28人が起訴され、5人の絞首刑を含む計23人が有罪判決を受けた。

毎日新聞 2012年08月15日 21時02分(最終更新 08月15日 22時56分)


「九大生体解剖事件」は、遠藤周作の代表作の一つである『海と毒薬』で取り上げられた有名な事件だが、記事を読んで思い出した。そうだ! あの本、まだ読んでなかった。記事に取り上げられた東野利夫さんの著書である。


汚名「九大生体解剖事件」の真相 (文春文庫 (376‐1))

汚名「九大生体解剖事件」の真相 (文春文庫 (376‐1))


6年前、大津留公彦さんのブログ記事*1でこの本の存在を知ったが、残念ながらこの文庫本は現在では絶版になっている。そこで、5年前にネットオークションで購入したのだが、1985年3月25日第1刷発行という年代以上に傷んでいる上、今の文庫本に比べてかなり字も小さいため、ついつい読まずに放置してしまったのだった。これを機に読んでみようと思い立った次第。

*1:http://blog.goo.ne.jp/q9united/e/03b8ff6a5dc0fa7f0727767544998eb0参照。なお大津留さんの元記事は当時のブログが消失したためにリンク切れ。