kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

民主党政権失敗の最大の原因は、小沢一郎の政権運営責任からの逃走だ

第2次安倍内閣発足から1か月半が経つが、第1次内閣の時は発足直後から内閣支持率が下がり始めたのに対し、今回は発足直後こそ前回を下回ったものの、その後、円安や株高によって内閣支持率が上がっている。

特徴的なのは週刊誌の報道であって、前回は政権発足直後から、『週刊ポスト』や『週刊現代』の両誌が激烈な安倍政権攻撃を開始したのに対し、今回は「安倍バブル」という微妙な言葉を用いながらも、安倍を擁護する側に回っている。

この件に関して思うのだが、前回は小泉政権末期に格差拡大や貧困の問題が表面化し、国民がそれらにうんざりしていたところに、小泉政権の政策を継承するとした安倍政権が現れたので、ここぞとばかり週刊誌などがこれを叩いた。ポストや週現のような週刊誌の編集部は、別に政治的思惑があって誌面を決めるわけではなく、雑誌の売り上げを最大限にすることを目指して編集を行うのだ。そこが、世論を操作しようという意図を明確に持つ新聞やテレビと違うところだ。

一例を挙げると、『週刊ポスト』2006年10月6日号には、「<総力特集・ブチ抜き22ページ>新政権バカ騒ぎを撃つ!」として、「『安晋会』裏金脈の番頭を証人喚問せよ」、「安倍政権は参院選大敗! 10か月の短命に終わる」といった見出しが並んでいる。これが、安倍政権発足時の同誌の特集である。「『安晋会』裏金脈の番頭」とは杉山敏隆(びんりゅう)という人物を指す。この杉山が、当時ポスト誌が追及していた竹中平蔵経済塾と安倍晋三の秘密後援会「安晋会」をつないでいると同誌は書いている。同誌の参院選大敗と短命政権(実際には10か月ではなく12か月だったが)という見立てはみごと的中した。

これに対し、今の『週刊ポスト』には安倍批判記事などろくすっぽ載らない。載せても売れないからである。

なぜ前回の政権ではあれほど嫌われた安倍晋三が今回はさほど嫌われずにいるかというと、別に安倍の政策が良いからというわけでは全くなく、中国に対する日本国民の敵対意識が強まっていることは多少あるかもしれないがそれも大きな理由ではない。最大の理由は、過去3年3か月の民主党政権に対する国民の失望がそれほどまでにも深いということだ。つまり、いかに安倍に期待できなくても民主党政権よりはましだろうと思っている人が多いのだ。

その民主党が、衆院選大敗の総括案を出してきた。


http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2013020800449

「トップの失敗連鎖」が敗因=民主が衆院選総括案


 民主党は8日午前、党本部で党改革創生本部(本部長・海江田万里代表)の総会を開き、執行部が昨年12月の衆院選大敗や3年3カ月間の政権運営の総括案を提示した。総括案は衆院選の敗因として、沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題から衆院解散時期の判断まで列挙した上で、「トップによる失敗の連鎖が続き、期待外れの政権というイメージを与え続けた」と結論付けた。
 敗因では「第三極との差別化ができない中、自民党への批判票は民主党に向かわなかった」とも指摘。「政権運営戦略が稚拙・未熟」と自ら断じ、政権の大方針だった政治主導は「官僚主導を否定しただけで不毛の対立を招いた」との分析を示した。党運営に関しては消費増税など重要政策での内部対立や党分裂を踏まえ「最大の問題は、まとまりの無さ」と明記した。 
 執行部は今後、党所属議員や地方組織の意見を聴いた上で、24日の党大会で総括案を中間報告。3月中に取りまとめたい考えだ。
 民主党は昨年12月、党再生本部を設置。その後、党改革創生本部に改称した。

時事通信 2013/02/08-12:36)


「トップの失敗連鎖」として槍玉に挙がっているのは鳩山由紀夫菅直人野田佳彦の3首相なのだろうが、その3人よりももっと責任が重いのは小沢一郎である。ことに2010年5月から6月にかけての一連の小沢の動きが民主党政権を谷底に突き落とした。

そもそも鳩山由紀夫が総理大臣の座を投げ出したのは、普天間基地移転の件で「現行案」回帰を明確に打ち出して、小沢一郎に政局にされたからだった。この事実はなぜか認めたがらない人たちが多いが、嘘だと思うなら当時の報道を調べてみるが良い。

たまたま手元に菅政権が発足したばかりの頃に発売された『AERA』2010年6月21日号があるが、「『亀井』の次は『小沢離党』」と題された記事にこんな記述がある。

(前略)菅氏は小沢氏に連絡を取ろうと思っても取れない。見切り発車で立候補した(引用者註:2010年6月の民主党代表選)ところ、「脱小沢」を標榜する枝野幸男・現幹事長、前原誠司国土交通相らが次々と菅支持を打ち出し、気がつけば「反小沢勢力」のトップに祭り上げられていた。

「しばらくは静かにしていた方が本人、民主党、日本の政治にとってもいいのではないか」と表明したものの、小沢氏との関係が決して悪くはない菅氏にしてみれば小沢氏との決別を意味していたわけではなかった。

(『AERA』 2010年6月21日号掲載記事「『亀井』の次は『小沢離党』」より)


小沢一郎に連絡を取ろうとしても取れない。つい最近もどっかで聞いたような話ではないか。嘉田由紀子にしても、別に小沢一郎と決別するつもりなどなかったに違いない。

AERA』の同じ号には枝野幸男のインタビューも出ている。インタビュアーは今井一である。以下引用する。

−− 菅さんはこの半年間、一度も小沢さんへの批判も、苦言も呈することもしなかったけれど、枝野さんや仙谷さんは、小沢さんに対して厳しい発言を繰り返していました。そうしたことを考えると、菅さんがこれほど大胆な「小沢外し」をしたのは、仙谷さんや枝野さんの意思が働いたとも思えるのですが。

(枝野)菅さんの政治判断で、こちらが求めたわけでも強いたわけでもありません。そもそも菅さんとはそんな具体的な話をする関係ではありません。ただ、鳩山さんが辞任した直後の早い段階で、御本人に「菅さんを応援しても大丈夫ですよね」とだけは聞きました。電話じゃなくて直接会ってね。そのあと、私は「菅支持」を表明しました。

(『AERA』 2010年6月21日号掲載・枝野幸男インタビュー「菅支持の前に聞いた事」より)


つまり、鳩山由紀夫辞任以前には菅直人枝野幸男との間の距離はかなり大きかったということだ。前原誠司も同様だろう。そもそも2005年に岡田克也衆院選(「郵政総選挙」)惨敗で引責辞任した直後の民主党代表選は、前原誠司菅直人の争いになって前原が勝ち、菅は小沢ともども非主流派に回った。なお、この代表選で菅に投票した鳩山由紀夫は幹事長に就任し、八方美人ぶりを発揮している。

何が言いたいかというと、2010年6月に鳩山由紀夫が辞任したあと、枝野幸男前原誠司ほどには菅直人との距離が大きくなかった小沢一郎には菅と組むという選択肢もあったはずだということだ。しかし小沢はそうせず、あえて菅直人のほか、前原誠司野田佳彦といった松下政経塾組を主流派に回してこれを敵とし、自ら追い落としたはずの鳩山由紀夫と再度組んで権力闘争を展開する道を選んだ。


同じ『AERA』の2010年11月8日号には、「河村と小沢『減税新党』へ」と題した河村たかしへのインタビュー記事が出ている。河村たかしが立ち上げた名古屋の地域政党減税日本」に小沢一郎が協力したため、河村は小沢と一緒になって「減税新党」を立ち上げようと夢を膨らませていた。しかしこれは実現せず、河村は橋下徹と野合しようとして橋下に拒絶され、いったんは石原慎太郎と組んだものの、あとから石原と組んだ橋下に追い出され、そこで嘉田由紀子と組んだ小沢一郎の仲間に入れてもらったはいいが、衆院選で惨敗して旧「減税日本」が衆院に持っていた議席を全て失ってしまったことは周知の通りである。

河村は論外の政治家だが、民主党で反主流派となって菅・野田両政権を「マニフェスト違反」として締め上げていた小沢が、「減税日本」に協力するとはいったい何を考えていたのか。2009年の民主党マニフェストに掲げた政策を実現するためには財源が必要なはずだ。消費税増税反対論の根拠である「現時点での消費税増税は景気を冷やし、税収を減らす」という理屈を認めるにしても、所得税や住民税まで大幅に減税するとなったら、「国民の生活が第一」の政策を実現するための財源を自ら放棄するに等しい。極端な「小さな政府」を志向する河村たかしとの共闘は、小沢が政局以外何も考えていなかったことを示すものだ。


もともと小沢自身も「所得税と住民税の半減(と消費税の大幅増)」を長らく持論にしていた人間だから、「小さな政府」志向なのだが、それと大いに矛盾する政策を、政敵であった小泉純一郎と対決するためだけに打ち出したのだった。本来、鳩山政権がもっと長く続いて、その矛盾は民主党政権の運営において鳩山や小沢自身が問われねばならないところだったが、それをせずに「マニフェストを守らない」と民主党主流派を攻撃するだけの気楽な立場に転じた。つまり、小沢の権力闘争は、反面として、政権運営の責任からの逃走でもあった。そして小沢は、「反増税脱原発、反TPPさえ訴えれば選挙に勝てる」と高をくくって高転びに転んだ。金子勝は、菅直人が旧来自民党の立場に、小沢一郎民主党マニフェストを守る立場に立つ「ねじれ」が生じたと言ったが、私は小沢一郎そのものが腸捻転というか自己ねじれを起こしていたと考えている。そして、有権者は小沢一派の責任を見逃さなかった。だから、日本未来の党議席減少率において民主党をも上回る歴史的大敗を喫したのである。

次に自民党政権を倒すのは、これまでの民主党のような理念なき政党ではなく、理念を持った政党でなければならないと思うが、それに関しては自民党よりもっと過激な「自助」重視・「公助」無視の政治勢力である日本維新の怪・みんなの党連合軍が先行し、「公助」重視の勢力は、わずかに左翼2政党があるだけ、しかもその片方は小沢一派との野合などの悪行が災いして政党消滅の危機に晒されているのが現状だ。

気候は徐々に春めいてきたが、政治の季節は当分の間「冬の時代」が続くことは避けられそうにもない。