kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

山本太郎が提唱した参院選の「反TPP・脱原発統一名簿」構想は、「非拘束名簿式」による限り絶対に実現不可能だった

参院選前、社民党、生活の党、みどりの風緑の党などが参院比例代表の「統一名簿」を作れという議論があった。昨年の衆院選でも「未来の党を中心に『脱原発』派は結集せよ」というかけ声が上がり、某「B級少女アイドル」がTwitterを連打していたことがあったが、それの続編とでもいうべきものであろう。


この中には、たとえばこんなTwitterがある。


https://twitter.com/fujinamicocoro/status/275219789515997184(2012年12月2日)

藤波心
@fujinamicocoro


55年から脱原発なのになぜ止められないの?今回目標は18議席との事ですがそれで原発止められるの? 本気で止めようと考えるならそろそろ作戦変更しなきゃダメなんじゃない?@UtauDaichi 共産党は1955年〜脱原発。311後他党が原発は安全て時に事態を説明できたのが共産党


2012年12月2日 - 4:48


共産党は1955年〜脱原発」というのは事実に反するが、藤波心がここでやろうとしていたことは、端的に言えば衆院選に120人以上もの候補者を立てた「日本未来の党」に「脱原発」票を集中させようというものだった。小沢一郎の思惑にまんまとはまられて利用されたといえよう。


その藤波心参院選前には目立ったTwitterは発信しなかった。しかし、今回当選した山本太郎は「統一比例名簿作り」を強く訴えていたらしい。

山本太郎氏出馬表明。反TPP掲げ統一比例名簿提案、波紋呼ぶ ~山本太郎緊急集会!どうする参議院選挙! | IWJ Independent Web Journal(2013年5月27日)

 山本太郎氏が、次期参院選への出馬を表明した。「出ます。やるという意思は固まった。しかし、どういうやり方をとるかが問題」。こう語る山本太郎氏は、5月27日に行われた「山本太郎緊急集会! どうする参議院選挙!」において、反TPPで団結する「統一比例名簿の作成」を生活の党、社民党共産党などに提案。

 これを受け、生活の党の森ゆうこ参議院議員は、「私の新潟選挙区はすでに社民、共産、民主、生活と出揃っている。調整はもう不可能。国民の混乱も招く」と難色を示し、「山本太郎さんにはできる限り共闘していくためのシンボルとして、みんながもっとも注目する東京選挙区に立っていただきたい。その旗の元に私たちは結集し、応援したい」と語った。

 共産党笠井亮衆議院議員は、「共産党としても共闘は追求したい」としながらも、「比例は政党選挙。結局、選挙が終わったらまたバラバラになるのでは、選んだ政党と選んだ議員が違う中身になる」との懸念を述べ、「有権者への責任」という観点からも、難しい提案であると離した。社民党党首・福島みずほ参議院議員も、「政党で選ばれた人間は、その党が無くならない限り別の党に行けない。選挙後、バラバラになろうというのは無理。参院選まで40日を切った。統一名簿を作るというのは、政党を作るのと一緒。簡単に作った党というものは、簡単に壊れる」と、厳しい見方を示した。

 こうした発言を受けた山本氏は最後に、「どこに票を入れていいかわからない人の目印を作りたい。この時期に言い出している僕がおかしいのは重々承知している。持ち帰って、もう一度考えて欲しい」と訴え、反TPP、脱原発を掲げる議員を「一議席でも減らさないことのためにどうしたらいいか考えて欲しい」と話した。


下記は山本太郎の「統一比例名簿」の提案に取り合わなかった各党に対する「小沢信者」による批判。

反戦な家づくり 山本太郎さんが提案した統一名簿を巡る各党の議論は今後を考える上で貴重な資料(2013年7月29日)

5月27日に太郎さんが呼びかけた 統一比例名簿に、各党がとった対応をよく見ていただきたい。

生活の党(森ゆうこさん)は、時間がないということ、未来の党の失敗を繰り返さないということを理由に比例名簿を(実質的に)断っている。あとの話は、統一比例名簿の話を、太郎さんを応援するという話にすり替えていると言わざるを得ない。
応援した生活の党を悪くは言いたくないが、野党共闘小沢一郎代表の大方針なのだから、森さんはこんな発言で誤魔化さず、持ち帰ってもう一度血の出るような討議をするべきだった。

未来の党阿部知子さん)は、是非とも統一名簿をと言っているけれども、直後に東京選挙区で太郎さんに(みどりの風として)対立候補をぶつけてきた。やることがエグイ。
ちなみに数日後には対立候補になる丸子安子さんは、「大河原さんを落としたくない(ので東京からでないでほしい)」と会場から発言。で、直後に本人が東京選挙区から立候補という、この奇々怪々。

福士さんという都議会議員は、統一比例名簿は言論封殺だと・・・
なんと言うか・・・
政治家にならないことを美点だと思っている政治家の典型かもしれない。いい人なんだろうけど、野球が下手なのを自慢する野球選手と同じだと気がついてほしい。

共産党は、一般論の演説をぶった挙げ句に、統一名簿はキッパリ拒否。共産党共産党候補以外は選挙では推せないと明言。
最後の方では、会場から意見を出す貴重な残り時間を、またまた共産党と自分の宣伝で延々と演説が止まらず、三宅洋平さんに止められるまで独演会。

この時点ではまだ緑の党ではなかった三宅洋平さんは、日本最大の政党=投票に行かない人 が自分の支持者だと思っている と。言葉はナマすぎるけど、意識は太郎さんと共有している。

社民党(福島さん)は、できるだけの選挙協力をやっていく。自民党を利さない と言いながら、肝心要の新潟で森ゆうこさんに対立候補ぶつけてくれた。
また、統一名簿方式と党の統一という別次元の話を、わざと混同して説明している。統一名簿は政党を残したままおこなうので、離党する必要も無いし、もちろん失職することもないのだが、元の政党に戻ったら失職するような説明をしている。

新社会党の区議は、、、、失礼ながら、モゴモゴと何を言っているのかよく分からない・・・

緑の党は、色々言っているが、統一名簿についてはまったく見解示さず。持ち帰る とだけ。

少なくともこの時点では、太郎さんの言う
「もう崖っぷちです。勝てるんですか?何議席とれるんですか?」
「今までと同じような選挙やってて変えられると思うのか!」
「子どもたちを犠牲にする気か!」
「今やることは1議席でも減らさないこと」
という危機感は、各党とも まったく まっっっっっったく無い。


結局、上記に名前の挙がった政党は、共産党を除くと社民党が1議席を獲得したにとどまったが、東京選挙区から立候補した山本太郎は当選した。


実現はしなかったが、社民党、生活の党、みどりの風緑の党が統一比例名簿を作成していたら何議席とれたかというのを、例によって比例代表の計算方式別に計算してみると、ドント式、サン=ラグ式、修正サン=ラグ式、クオータ式のいずれで計算しても「3議席」だった。あれっ、ドント式って小政党に不利なんじゃなかったの?と訝る方もおられるかもしれないが、4党合計の比例代表得票数が309万票弱で、平均すると103万票なので、1議席獲得毎に102万票弱を獲得することが必要な今回の参院選の「ドント式」でも3議席を確保できるのである。つまり、ほんの少し得票が少なければ2議席に終わるくらいの、ぎりぎりの3議席

推定される当選者は、今回の得票数をそのまま当てはめれば、緑の党三宅洋平社民党又市征治、山城博治の3人になるが、統一比例名簿であれば各党とも党名ではなく自党の候補者名で書くよう支持者に求めるだろうから、又市征治と山城博治の得票数が大幅にアップするほか、生活の党の山岡賢次東祥三みどりの風谷岡郁子山田正彦などの有名政治家の得票数が大幅に増えた可能性がある。ただ、それを考慮しても、又市征治、山城博治、三宅洋平の3人の当選だった可能性がありそうだ。但し、山本太郎がこの統一名簿に登載されていれば当然山本が当選し、三宅洋平を弾き出していたはずだ。

では、各種計算法との比較ではどうか。

統一名簿を組まずとも、サン=ラグ式または修正サン=ラグ式であれば生活の党は1議席山岡賢次だが)を獲得していた。クオータ式であれば、緑の党も1議席を獲得し、さらにクオータ式の中でもある計算法を用いればみどりの風も1議席を確保していたかもしれなかった。

以上は、おおざっぱに言えば、端数切り捨てのドント式であれば統一比例名簿を組むメリットはあり(といっても1〜2議席を増やせるかどうかという話だが)、四捨五入に近いような計算方法であればバラバラに出て1議席ずつ確保した方がトータルの議席数が多くなる可能性がある。しかし、現行の選挙制度はドント式なので、小政党がバラバラに出ても端数が切り捨てられて議席が得られないのに対し、統一名簿を作れば三宅洋平や山城博治が当選する可能性は確かにあった。

但し、統一比例名簿の実現性はあったかといえばほぼ皆無だったというほかない。たとえば上記の見積もりで、4党の中では得票率が断然高い社民党や、選挙戦で名前を売って人気が出た三宅洋平には有利になるが、生活の党やみどりの風にとっては統一比例名簿のメリットは全くないことになる。これでは、得票力の劣る生活の党やみどりの風が統一比例名簿に参加する気が起きなくとも止むを得ない。

これは、現行の参院選比例代表が「非拘束名簿式」をとっているからである。非拘束名簿式では、統一名簿を作る政党のうち得票率が突出している政党があったり、名の知れた有名人が出たりしたら、その政党や候補者が有利になるが、得票力が比較劣位で有名な候補者もいない政党には不利になるからだ。現に上記で見たように、単独では1議席しか獲得できなかった社民党が2議席を獲得した可能性が高い。これは、有名人候補や、より小さな(1議席も獲得できない)政党からの「票の横流し」を受ければ2議席目を得られる可能性があったことを意味する。

以上を考慮すれば、統一名簿を作成するための現実的な条件として、選挙制度が「拘束名簿式」であって、事前に政党間の協議で円満に比例名簿の登載順位が決定されることが絶対に必要であることがわかる。実はこれには先例があって、1983年の参院選新自由クラブ社民連が統一名簿を作って参院選に臨んだ。当時の参院選比例代表が「拘束名簿式」だったからこそできたことである。この時には名簿登載の1位が社民連、2位が新自クの候補だった。結果は比例代表では社民連田英夫1人しか当選できなかったけれども。

結論。「非拘束名簿式」と「統一比例名簿」の両立は実質的に不可能である。山本太郎の提案はナンセンスだった。山本太郎自身は自覚していないだろうが、山本自身が有名人であり、統一名簿を作成した場合の選挙でも当選する可能性が高かったことからこそできた提案といえる。熱心に統一名簿作成を説いた情熱は買えるが、それを各党がのまなかったのは当たり前である*1

*1:但し、4党の中では得票率の高い社民党にとっては統一名簿を作るメリットがあったかもしれない。