kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「無能な味方」山本太郎の軽挙妄動が大炎上劇に発展(アホか)

山本太郎の事件の第一報を知った時、それは昨日も書いたようにインターネットのニュースのヘッドラインの情報だけだったけれども、「天皇に手紙? この民主主義の時代に何やってんだ」と思った。その後、田中龍作を代表とする「小沢信者」どもが「山本太郎田中正造」などとして山本を持ち上げているのを知った時には、一般には「リベラル・左派」とされる彼らが、「権力者である参議院議員山本太郎が、一象徴に過ぎず何の権力も持たない天皇に『直訴』する」ことのおかしさを全く解していないことに怒り心頭に発したのである。

もう一つ、山本太郎の妄動で思い出したのは、小学生高学年の時分、集団登校をしている時に、下級生同士の言い争いで聞かれた、「じぶん(=お前)、そんなに偉いんか。総理大臣より偉いんか。テンノーヘーカより偉いんか」という言葉だった。当時の小学生は、親が少なくとも学歴の途中までは戦前教育を受けたことのある人である場合が多かったから、小学生低学年くらいだと「テンノーヘーカ=偉い」という意識を持っている子どもが普通だった。

私の年代だと、日本国憲法の三本の柱は、「主権在民戦争放棄基本的人権」だと習ったものだ。確か小学生5年生か6年生で習うことだったよなあと思ってネット検索をかけてみると、今でも(といっても少し前の2006年だが)小学校6年生で習う事柄らしく、こんな文章が目に飛び込んできた。法律事務所職員の方が書いた文章である*1

日本国憲法との出会い


小学校6年生の息子が、3学期の半ばを過ぎたある日突然、「ママ、日本国憲法の3つの特徴を言ってごらん!」と,私に問いかけた。
「え〜っと ??? 憲法第9条でしょ...。第25条でしょ...。??? それから...???」
とっさの質問に、困惑した私は適当な答えで、ごまかそうとした。
「な〜んだ ! ママは,そんな覚え方してるんだ! じゃ、僕がいうよ。まず、平和主義でしょ。基本的人権の尊重でしょ。そして,国民主権だよ!」
「......」(驚いた)。


山本太郎は明らかにこの小学校6年生(当時)にも負けており、「じぶん、テンノーヘーカより偉いんか」と言って口げんかしていた40年前の小学校低学年生並みのレベルなのである。このていたらくで、おそらく「リベラル」の立場を自認しているものと思われるから恐れ入る。日本国憲法の形骸化はここまで進んだかと呆れ返ったのであるが、「小沢信者」ならずとも、「左」あるいは「リベラル」と言われる側から、山本太郎への擁護論が少なからず見られたことにはさらに驚いた。

さらに予想外だったのは、自民党だの維新の怪だのが山本太郎の発言を批判し、処分を行おうとしていることだ。山本太郎の一件は、当初は何も私ばかりではなくマスコミにもたいして相手にされなかった。例えば朝日新聞(11/1)では第二社会面の右下に横組みの記事で出ているだけであった。ネットで確認すると、文章が紙面とかなり違うが、下記のようになっている。


http://www.asahi.com/articles/TKY201310310216.html

山本太郎参院議員、天皇陛下に手紙渡す 秋の園遊会


 山本太郎参院議員(無所属)は31日、東京の赤坂御苑で同日に開かれた秋の園遊会で、天皇陛下に手紙を手渡したことを明らかにした。「原発事故での子どもたちの被曝(ひばく)や事故収束作業員の劣悪な労働環境の現状を知ってほしかった」と記者団に説明した。

 山本氏は30日に手紙を書き、陛下に園遊会原発事故の現状を訴えて「手紙を読んで頂けますか」と直接手渡した。陛下からの言葉はなかったという。

 山本氏は今年7月の参院選東京選挙区に「脱原発」を掲げて立候補し、初当選した。記者団が、陛下を政治的に利用することになるのではないかと問うと、山本氏は「政治以前の問題だ。身分を横に置かせて頂いて、一人の人間として現状を伝えたかった。園遊会で手紙を渡すことが禁じられているとは聞いていない」と述べた。

     ◇

 菅義偉官房長官は31日午後の記者会見で、山本氏の行為について「陛下に園遊会のような場で手紙を渡すことがその場にふさわしいかどうか、参加した方が常識的に判断することだ」「常識的な線引きはあるだろう」と述べた。参院議院運営委員会は1日午前11時に理事会を開き、対応を協議する。

朝日新聞デジタル 2013年10月31日19時08分)


紙面では上記よりもさらにそっけない文章の記事だった。読者が大問題だなどと思うはずのないような、ごく小さなニュースだったのである。

それが、2日の紙面では一転して2面に大きな記事が載った。以下引用する。


http://www.asahi.com/articles/TKY201311010583.html

陛下に手紙「政治利用」か? 山本太郎議員の処分検討


 山本太郎参院議員が10月31日の秋の園遊会で、天皇陛下に手紙を渡したことが波紋を呼んでいる。参院議院運営委員会は山本氏を聴取し、処分の検討に入った。閣僚や与野党から「政治利用だ」との批判も巻き起こる。山本氏は「思いを伝えたかった」と政治利用の意図を否定するが、政治と天皇のかかわり方が改めて問われそうだ。

 「天皇陛下とコミュニケーションをとる素晴らしい機会と思った。原発事故による子どもの健康被害や事故の収束作業にあたる作業員の健康状態を知ってもらいたかった」

 山本氏は1日、参院議院運営委員会で、陛下に手紙を渡した動機を聞かれ、こう説明した。政治利用との指摘も否定した。

 聴取後、自民党の水落敏栄筆頭理事は「納得できなかった。処分を検討しなければならない」と語った。

 政府や与野党からは山本氏批判の大合唱があがる。

 保守系下村博文文部科学相は1日の会見で「議員辞職ものだ」。日本維新の会山田宏衆院議員が1日の衆院委員会の質疑で「非常識で憤慨にたえない」と主張すると、議員から「不敬罪だ」とヤジが飛んだ。

 共産党志位和夫委員長は「憲法上『国政に関する権能を有しない』存在の天皇に政治的対応を求めるのは、憲法を知らない者の行動だ」と指摘。みんなの党渡辺喜美代表は「脱原発は国会で議論すべき話。政治的パフォーマンス以外の何ものでもない」と切って捨てた。

 ただ、皇室の政治利用をめぐる議論は絶えない。時の政権が天皇の公的行為を使って問題の打開を図るような事例が起きた。そのたびに、なし崩し的に皇室の活動を広げ、政治利用に道を開くことを懸念する声があがってきた。

 今年9月の国際オリンピック委員会(IOC)総会への高円宮妃久子さまの出席を、下村文科相らが宮内庁に強く働きかけた。今年4月に安倍政権が主催した「主権回復の日」式典では、閉会後に天皇・皇后両陛下が退出する際、会場から「天皇陛下万歳」のかけ声が起き、壇上の安倍晋三首相も万歳をした。

 民主党政権時代の2009年には、鳩山内閣天皇陛下と来日した習近平(シーチンピン)・中国国家副主席(当時)との会見を慣例に反する形で実現させた。

 こうした際には国会は、天皇陛下や皇室に働きかけた政治家たちの「処分」は検討していない。山本氏は1日の参院議運委の出席後、記者団に語った。「僕が政治利用で裁かれるなら、他のことも協議される必要がある」


宮内庁「迷惑きわまりない」

 山本氏が「知らなかった」というルールとは何か。

 宮内庁から園遊会招待者に送られる案内には、会場の東京・赤坂御苑の地図の裏に「(天皇皇后両陛下や皇族方が)お廻(まわ)りの際の写真撮影は御遠慮願います」などの注意書きがあるが、「物品を渡さないように」などの事項はない。

 だが宮内庁幹部は「わざわざ注意するまでもないこと。(山本氏の行為は)迷惑きわまりない」。別の幹部は「国政の権能を有しないと憲法に明記されている天皇に、原発事故の現状を訴えるというのは、明らかな政治利用だ」と話す。

 ただ、「政治利用」のプロセスに宮内庁自体も無関係でない。4月の「主権回復の日」記念式典や9月のIOC総会には、両陛下や皇族が政権の意向や要望に沿った形で出席。IOC総会について風岡典之長官は「苦渋の決断だった」と語っていた。

 山本氏が天皇陛下に手渡した手紙は、そばにいた川島裕侍従長が引き取った。その手紙がどうなったかについて、宮内庁は「お答えできない」としている。

朝日新聞デジタル 2013年11月2日08時01分)


記事はまだまだ続くが、「朝日新聞デジタル」とやらに登録していなければ続きは読めない。なんでも無料会員でも日に2本だか3本だかの記事は全文読めるらしいけれども、紙面を見る限り、たいしたことは書かれていない。

上記朝日新聞の記事には、「過去に天皇や皇族の『政治利用』と議論を呼んだ事例」が4件挙げられているが、いずれも鳩山政権と現安倍政権時代の事例であって、「天皇の政治利用」という言葉から私が連想する事柄とは異なり、違和感がある。私が直ちに思い出すのは、40年前の田中角栄政権時代の一件である。以下Wikipediaより引用する。

1973年5月26日、増原惠吉防衛庁長官昭和天皇に「当面の防衛問題」について内奏したとき、昭和天皇は、「近隣諸国に比べ自衛力がそんなに大きいとは思えない。国会でなぜ問題になっているのか」と述べた。増原は、「おおせの通りです。わが国は専守防衛で野党に批判されるようなものではありません」と述べると、昭和天皇は、「防衛問題は難しいだろうが、国の守りは大事なので、旧軍の悪いことは真似せず、よいところは取り入れてしっかりやってほしい」と述べた。

増原はこの内奏を新聞記者に紹介した上で、「防衛関連法案の審議を前に勇気づけられた」と話した。しかし、現役閣僚が天皇の政治的言葉を紹介したことが5月28日に新聞記事に掲載され、「天皇の政治利用である」との批判をうけて政治問題化した。

問題が皇室に及ぶことを回避するため、5月29日に増原は防衛庁長官を辞任した。


このWikipediaの記事自体も、「内奏」などという戦前の言葉を使うなど問題含みだが、それはさておき、明らかな戦争犯罪人でありながら戦争責任の追及を免れた昭和天皇は、戦後も悪名高い「沖縄メッセージ」を初めとする政治的発言を度々行い、それを自民党がさんざん利用してきた。「天皇の政治利用」とはそういう問題を指すという認識を私は持っていた。だから、今回の山本の妄動を「天皇の政治的利用」として云々すること自体に強い違和感があるし、ましてや山本太郎の処分だの議員辞職だのに至っては、そんな話を持ち出すこと自体が論外だと思うのだ。しかし、呆れたことに山本太郎は「お沙汰受け止める」などと言っているらしい。


http://www.asahi.com/articles/TKY201311010357.html

山本太郎議員「お沙汰受け止める」 参院委が聴取


 山本太郎参院議員が1日、参院議院運営委員長からの事情聴取を受けた後の記者団との主なやりとりは以下の通り。

 ――議運委員長からどういう話があったか。

 「政治利用との意識はあるのか」ということだったが、政治利用もなにも僕は直接陛下にお手紙を渡して、僕と陛下とその周りの方々しか分からないことだと思っていたが、このようにマスコミが騒ぐことによって、政治利用にされてしまうということだ。

 ――マスコミが報じると、予測はできなかったのか。(以後「朝日新聞デジタル」未登録者には読めない)

朝日新聞デジタル 2013年11月1日19時41分)


続きは今朝の2面には出ていないし、どこかに出ているのかもしれないが、どうせたいした情報はなく、山本が「お沙汰受け止める」などとたわけたことを言っているだけだろう。そもそも「お沙汰」なる物言いに、私よりずっと若いくせに未だに明治憲法の時代の感覚を引きずっているらしい山本太郎の感性が表れていて呆れてしまう。


御沙汰(ゴサタ)とは - コトバンク

ご‐さた 【御沙汰】

天皇・将軍などの最高権力者の指示・命令。また、その意思に基づいて行われる官府や裁判などの指示・命令。「弥五兵衛一族の者は門を閉じて上の―を待つことにして」〈鴎外・阿部一族


「アホか」という言葉しか出てこない。この件は、そもそも山本太郎が、自分が生まれてもいない天皇主権の時代の感覚を、どういうわけか「主権在民(いま風にいえば国民主権)」の時代に引きずった愚行を犯し、まさにその点を自民党や維新の怪(極右の山田宏の物言いに「不経済」もとい「不敬罪」なるヤジが飛ぶという時代錯誤!)に突かれたという、「無能な味方」の極致ともいえる失策にして、バカバカしくも手痛い事件だった。「手痛い」というのは、いうまでもなく稀代の悪法「特定秘密保護法案」を初めとする他の懸案から目をそらさせる役割を、他ならぬその反対者であるはずの山本太郎が演じていることを指す。

朝日新聞の11/2付2面記事の終わりの方に、「無視勧める声も」という見出しで、

フランス在住のクマムシ研究者として知られる生物学者の堀川大樹さんはブログに「山本太郎氏の行為は国民の注意を集めるための炎上ポリティクスだ」と書いた。

と書いている。当該のブログ記事は下記。


山本太郎氏をスルーする技術 - クマムシ博士のむしブロ(2013年11月1日)

2013年10月31日、参院議員の山本太郎氏が赤坂御苑開かれた秋の園遊会で、原発に関わる問題を記述した手紙を天皇に手渡した。

山本太郎参院議員、天皇陛下に手紙渡す 秋の園遊会で: 朝日新聞

国会議員によるこの行為が、憲法で定めた「天皇の政治的利用の禁止」に抵触するのではないかと問題になっている。

確かに、山本太郎氏がとったこの行動は突飛なものであり、憲法違反にあたるかどうかグレーのものだ。しかし私は、あえて本件とそして山本太郎氏については過剰に問題視せずに、スルーすることを提案したい。

今回の行為が、山本氏本人のアイディアなのか、それとも山本氏の陣営の参謀によるコンサルティングによるものなのかは、わからない。しかし、ほぼ確実に言えることは、この行為は国民やマスコミの注意を集めるための炎上ポリティクスであるということだ。どこかの飲食店のアルバイト店員が冷蔵庫に入った画像を、意図的にネットに流すようなものだ。

仮に今回の山本氏の行動が憲法に抵触するとしても、この問題は日本が抱えている他の数多くの懸案にくらべれば、とるに足らない、きわめて些細なものである。

マスコミが公共の電波を使ってこの問題を大きく取り上げたり、有識者が何時間もかけて議論するような問題ではない。人的、そして時間的リソースを大量に費やして、炎上アルバイト店員の処分について延々と議論するようなものだからだ。そんなことよりも、経済や福祉、そして外交に関わる根本的な懸案事項について議論したり、国政に大きな影響力をもつ与党の動向を注視したり、クマムシの飼育をしたりする方が、数億倍有意義である。

今回の件で国民が騒げば騒ぐほど、山本太郎氏の不支持者は増えるが、一方でシンパシーを感じる支持者も増えるだろう。これが炎上マーケティング効果の特徴だからだ。そして、山本氏の陣営はこれに味をしめて、さらなる炎上ポリティクスを仕掛けてくるだろう。それも、より先鋭化した過激な形で。支持者も当然先鋭化するので、一種のカルト的な集団が形成される可能性もある。

よって、我々国民に求められているのは、山本太郎という存在を意識上にのぼらせず、スルーする技能である。ボケにはツッコミを入れたくなるのが人情だが、そこをぐっとこらえるのだ。いたずらっ子も周囲から相手にしてもらえなくなれば、炎上を仕掛けるモチベーションが無くなるというものだ。

ということで、この話題はこれくらいにしておこう。私も山本氏に関するこの記事を書くのに、人生の貴重な時間的リソースを20分間も費やしてしまった。


だが、スルーしようにも、一方で「山本太郎田中正造」なる図式で明治憲法日本国憲法の違いも無視して山本太郎を神格化する田中龍作のような愚か者が現れ、他方で自民党や維新の怪などの極右政党が「不敬罪」のノリで山本を叩いたことによって既に「炎上」しており、山本自身はシュンとなって「お沙汰受け止める」と言うなどの醜態を晒しているのを見ると、スルーしようがない。昨日も書いたように、「また山本太郎が何やらつまらないことをやらかしたらしいなと思ったが、それ以上私の注意を引かなかった」のである。盛大に炎上してしまってから「スルーせよ」と言われてもなあ、と思う。