kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

長谷部恭男・東大教授と「八百長バトル」を演じた朝日新聞・高橋純子記者

昨日(12/21)のアクセスログを見ると、「高橋純子」を含むキーワード検索でのアクセスが25件あったほか、10月に書いた下記記事に101件のアクセスがあった。

これは、(10/18)の朝日新聞オピニオン面に「『安倍さん』という気分」と題して掲載された、石田英敬東京大教授(記号論・メディア論)へのインタビュー記事を取り上げたものだが、インタビュアーが高橋純子記者という、私にとっての朝日新聞の「名物記者」だったのだ。

この人は、まず読み手の神経を逆撫でして、記事に注意を引きつける「芸風」の持ち主である。それに何度も引っかかった私は、この人が書いたインタビュー記事を、上記以外にも当日記で何度も取り上げた。新しい順に過去ログを示す。


上記以外に同じ記事を重複して取り上げた2件があり、計6件のエントリで高橋記者に言及していた。本エントリで7件目になる。

それ以前にも、『きまぐれな日々』で高橋記者の記事を取り上げたことがある。


今回、高橋純子記者が注目されたのは、どうやら12月20日付の朝日新聞に掲載された、同記者による長谷部恭男東京大教授のインタビュー記事が話題になっているかららしい。ノビー(池田信夫)も取り上げていた。

ノビーの記事の書き出しを引用する。

 朝日新聞の長谷部恭男氏に対するインタビューが話題になっている。いきなり「御用学者」と呼びかける無礼さにもあきれるが、中身はまるで頭の悪い学生に先生が教えているようだ。(以下略)


また、ふじいりょう氏というブロガーの記事も検索に引っかかった。

記事の前半部分を引用する。

 護憲派の法学者で、朝日新聞の「報道と人権委員会」の委員も務めている東京大学教授の長谷部恭男氏が、2013年11月13日の衆議院特別委員会で自民党推薦の参考人として特定秘密保護法に賛成の意見を述べたことを受けたインタビュー記事が話題になっている。

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 集団自衛権行使や憲法改正に反対の立場だった長谷部氏が、安倍政権の側で秘密法賛成の意見を述べるのはなぜなのか、ということを問うのは、単純に面白いテーマ。しかし、これがまたネット上では評判が悪い。なにしろ、いきなり冒頭から喧嘩腰なのだ。

――もしかして、「御用学者」と呼ばれていませんか。    「何のことでしょうか」

出典:(今こそ政治を話そう)秘密法とどう向き合う 憲法学者・長谷部恭男さん

 ほんとう、何のことだよ…。

 この出だしには「無礼すぎる」という声が多数上がっているほか、インタビュー内容自体がお粗末だという意見も噴出している。その最たるものが池田信夫氏の「まるで頭の悪い学生に先生が教えているようだ」という批判だろう。

 この記事にクレジットされている高橋純子氏については、あえて逆張りで取材相手の対極のペルソナを演じている高度なインタビュー手法なのだ、という意見が同業者からは上がっている。例えば朝日新聞デジタル編集部の丹治吉順氏は「相当難しいインタビュー手法」と述べている(参照・ご存知のない方に付け加えると、知財関連やボーカロイド関連で鋭い視点の取材・記事をされている記者さんです)。

 とはいえ、仮に長谷部氏の真意を明らかにするために逆張りをしたのだとしても、その本音を引き出している内容とは到底思えないし、論理性に欠いた質問が際立つ結果になっている以上、その試みは失敗したと判定しても差し支えないのではないだろうか。

 個人的には、インタビューでレコーダーで録音をはじめる際に、いきなり「あんた御用学者なの?」と訊いたということはないのでは、と思う。最初に「よろしくお願いいたします」くらいの挨拶はしたのでは? 常識的にいえば、ある程度の編集・構成をして、さらにデスク以下のチェックを経てから公開されたもののはず。それで、記者あるいは朝日新聞vs長谷部氏という図式を際立たせるようなまとめ方をしたということなのだろう。

 問題は、そのような構成をする必要が果たしてあったのか、ということ。もし私が高橋氏あるいはデスクの立場ならば、インタビュー形式にはせずに、記者の質問項目を間に挟むことなしに、長谷部氏の談話をポイントごとにまとめる方式を採用しただろう。護憲派の法学者がなぜ秘密法に賛成なのかを詳らかにするという目的ならば、それが一番読者に伝わると思うからだ。

 もっというならば「秘密法反対の立場の朝日新聞」と「秘密法賛成の長谷部氏」という対立軸を対話として機能させるならば、どちらも同じ「知性」があるということが前提となる。今回、前者の側が質問でエキサイトしているようにしか見えず、勝負にすらなってないという印象になってしまう。「批判精神を持つのがジャーナリスト」とか、ぶっちゃけメディアの中の人の自己満足に過ぎないしね。 (以下略)


記事からリンクされている、朝日新聞デジタル編集部の丹治吉順氏のTwitterは下記。
https://twitter.com/tanji_y/status/413989150094680064

丹治吉順 aka 朝P
@tanji_y

はてブを見てても、記者の手法に批判的なコメが目立ちますが、これは相当難しいインタビュー手法なんです。取材相手の対極にいるバカをあえて演じる。この手法できっちりインタビューが書ける記者は、名人級の人が多いです(私、できません)。 http://b.hatena.ne.jp/entry/www.asahi.com/articles/DA2S10889331.html

2013年12月20日 - 3:07


「取材相手の対極にいるバカをあえて演じる」。そう、今回の高橋記者によるインタビュー記事の核心はまさにそこにある。そして、高橋記者がやったことは、特定秘密保護法案に反対した自社のこれまでの立場を「バカ」に措定して、長谷部恭男を持ち上げたことなのである。これこそこの記事の最大の問題点である。それが証拠に、記事の最後に高橋記者はこう書いている。

取材を終えて

 「ゼロか100しかないんですか」。長谷部さんに問い返された。敗北感にさいなまれ、「敵/味方」の分断線を引いては自陣営に引きこもる。その積み重ねは結局、異論を封じ、社会を一色に染めたがっている「向こう」を利するだけなのではないか。線を越えて緩やかにつながり「次の一手」を探す。それが最も有効な抵抗のはずだ。(高橋純子)

朝日新聞 2013年12月20日付オピニオン面掲載「秘密法とどう向き合う」より)


インタビューでいきなり「もしかして、『御用学者』と呼ばれていませんか」と聞いたのが失礼だとか、本当は最初に「よろしくお願いいたします」くらいの挨拶はしたのではないかなどというのは全くどうでも良い話である。高橋記者はもちろん実際には最初に丁寧な挨拶をしたに決まっている。そんなことは当たり前だ。そのあと、高橋記者はやおらプロレス(八百長バトル)を始めたのであって、それこそが問題なのである。

当該の朝日新聞記事についた「はてなブックマーク」ブコメに、こんなのがあった。

shimaguniyamato この朝日のインタビュアー、愚を装って会社批判してんじゃねーの; 2013/12/21

高橋記者が「愚を装って」いたのは、ほかならぬ朝日新聞デジタル編集部の丹治吉順氏が「取材相手の対極にいるバカをあえて演じる」とつぶやいた通り事実だろうが、記事は間違っても「会社批判」などではなく、単なる社の意を受けた長谷部恭男との八百長に過ぎまい。このあと朝日が今回掲載した長谷部恭男の主張を批判する学者へのインタビュー記事を掲載して初めて「両論併記」したことになるが、朝日新聞がそれをやるとは私には思えない。

新聞とはこうやって「変節」していくものなのであろう。