kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

スズキがベア見送りへ

http://www.asahi.com/articles/ASG3C3Q7MG3CULFA00H.html

スズキ、増税にらみベア見送りへ ダイハツも「困難」


 スズキが、賃金を底上げするベースアップ(ベア)を見送る見通しになった。大手自動車メーカーの多くはこの春闘でベアに応じる方針だが、軽自動車が中心のスズキは2015年度から軽自動車税増税された後の販売が見通せないからだ。軽自動車が中心のダイハツ工業労働組合に「(ベアは)困難」と伝え、大詰めの協議を続けている。

 スズキは、労組から月3500円のベアを求められている。12日に労組に正式回答する予定で、ベアの見送りは6年連続になる。

 軽自動車は国内販売が好調で、昨年は国内の新車販売の4割近くを占めた。ただ、スズキは消費税や軽自動車税増税後に販売が落ち込むおそれがあり、インドなど新興国市場の先行きも不安を抱えていると判断した。労組側も一定の理解を示しているという。

 自動車メーカーでは、日産自動車が3500円、トヨタ自動車が2700円などのベアを決めている。

朝日新聞デジタル 2014年3月11日12時27分)


今年1月に、スズキの会長兼社長・鈴木修の言い分を『SankeiBiz』が掲載していた。
市民直撃の軽自動車増税は“汚点” 鈴木修スズキ会長兼社長 (1/3ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)

市民直撃の軽自動車増税は“汚点” 鈴木修スズキ会長兼社長


 反対してきた軽自動車への増税が決まったうえ、4月からは消費税率が引き上げられる。スズキの会長兼社長にとどまらず、自動車業界のご意見番でもある鈴木修氏(83)に話を聞いた。

 −−昨年を振り返ると

 「経営者を長くやっていると1年が非常に短く感じる。やり残した仕事がいっぱい残った。スズキの売上高もリーマン・ショック前の3兆5千億円になかなか回復しない。苦しい1年だった」

 −−軽自動車への増税も決まった

 「自動車全体は取得税など減税になるのに、軽自動車とバイクだけが値上げ。私の言った“弱いものいじめ”があっさり決まった。昨年を一文字で表すなら、墨で書けば読点を1つ書くだけの“汚点”を残したね。特定秘密保護法に対しては、皆さん非常に関心があるみたいだが、よほど変なことをやらない限りは善良な市民には関係ない。だけど、軽自動車やバイクの増税は善良な市民がまともに影響を受ける」

 −−それに先がけて、4月から消費税が8%に引き上げられる。影響は

 「多少の駆け込み需要と反動があると思っている。3、4月の売り上げを合計して前年を上回る努力をしたい。生産や設備投資、販売計画は慎重にやらざるを得ない。4月からの新年度は売上高3兆円の大台を超えたいという目標を持っているが、現実は極めて厳しい。6月までを見ないと、今年の太陽が燦然(さんぜん)と輝くかどうかわからない」

 −−地元静岡県に目を移すと、製造品出荷額が落ちている。今年は回復するか

 「今までは輸送用機器が静岡県経済の牽引(けんいん)役を担っていたが、東部では医療、中部では航空機産業が出てきている。そういう主役交代が行われて、成長を続けるだろうと思うし、そう願いたい」

 −−主力工場の相良工場(静岡県牧之原市)の近くには浜岡原発がある。再稼働問題をどう考えるか

 「福島県の状況を見て、原発政策を推し進めるべきだって言う人は誰もいないだろう。かといって、原発利用を止めると日本経済が成り立たない。国政がどういう形で福島の事故を収拾させるかにまず注目せざるを得ない。浜岡原発から10.5キロの距離の相良工場では、軽自動車以外の自動車のエンジンと車体を生産できるように配置し、湖西工場では軽自動車のエンジンと車体を生産できるようにした。だからたとえ浜岡で事故があっても、うちの売り上げの半分は確保できる。こういうことしか原発リスクに対する手はないんじゃないか」

 −−静岡県の行政への注文は

 「今まで通り、明るく文化的にお進めになればいいんじゃないか。ただ、経済政策、製造品出荷額がリーマン・ショック前から回復し切れていないという点は、やはり、県知事というか県全体の行政がアイデアを絞って民間にアドバイスをしていただきたい。民間も県と相談しながら、総力戦でやるしかない」

(『SankeoBiz』 2014年1月10日)


どうやらスズキも静岡県の経済も好調とは言い難いようだ。鈴木修といえば、地元・浜松の極右で鳴らす某自民党衆院議員のパトロンであるという評価できない側面もあるけれども、産業界で「脱原発」を唱えた数少ない人物でもあった。過去には下記のような記事もあったが、現在ではそれもかなりトーンダウンしているようだ。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20111222/225571/?rt=nocnt(2011年12月22日)より

(前略)

 こうした市町議会の動きで最も注目を集めたのは9月26日に「浜岡原発の永久停止を求める決議」を賛成多数で可決した牧之原市議会である。決議後、西原茂樹市長も「市民の安全と安心のために『永久停止』は譲ることはできない」と同調した。

 牧之原市浜岡原発の10キロメートル圏内で原子力防災対策重点地域(EPZ)内にあり、中部電力と安全協定を締結している。EPZの対象となっているのは牧之原市のほかに掛川市菊川市、それに同原発が立地している御前崎市の4市。安全協定を結んでいる自治体の「永久停止」決議には法的拘束力はないものの、その意味は重く、浜岡原発の再稼働は事実上不可能になったといっても過言ではない。この牧之原市をはじめ、現在の静岡県内の市町に広がる“脱原発”の流れを作ったのは浜松市に本社を置くスズキの鈴木修会長兼社長である。


「いま拠点の再配置を考えない経営者は失格」

 「(スズキの)相良工場は浜岡原発から11キロメートルしか離れていない。万が一、原発事故があれば生産が壊滅状態になる。リスクを考えて、四輪エンジンの生産はどこかに持って行くかもしれない」

 東日本大震災から2週間余り経った3月27日、浜松市内の会合で牧之原市の西原市長は鈴木社長からこんなことを打ち明けられ、仰天した。

 相良工場は牧之原市に立地するスズキの最新鋭生産拠点。2008年に操業を開始、年間100万基超のエンジンを製造している。計画段階から東海地震を想定し、津波被害の不安がない海抜70メートルの高台を選んだが、原発事故は鈴木社長のアタマになかった。「こんなことだったら相良は作らなかったよ」と福島原発事故発生の4日後に鈴木社長は日本経済新聞記者に語っている(6月28日付日本経済新聞電子版「震災後100日、鈴木修の決意」)。

 相良工場の従業員は約1800人。牧之原市は市税収入75億円のうち、1割強をスズキに依存している。鈴木社長の移転示唆に驚いた西原市長が翌日以降自ら受話器を取って市内に拠点を持つ大手企業9社に聞き取り調査をしたところ、5社が「移転や機能分散を検討している」と回答した。「産業界にとっても原発はリスクなのだと、この時初めて気づいた」と西原市長は後に語っている。6〜7月に市が実施した市民への意識調査でも、浜岡原発について「引き続き停止」や「廃炉」を求める声が60%を占める一方、安全確認後の「再稼働」容認は20%に満たなかった。

 牧之原市の「永久停止」宣言の背景として農業問題も見逃せない。牧之原台地は国内最大の茶の産地。3月11日の福島原発事故発生後、風評被害で茶の売り上げが大幅に落ち込み、市内の農家や販売業者の間に原発に対する否定的な意見が急速に広がったという。市民には工場勤務との兼業農家も多く「工場が出て行ったら農業にも影響する」と西原市長は危機感を募らせている。

 スズキは7月11日に浜松市北区の都田地区工場用地の2区画(約27ヘクタール)を購入し、「都田技術センター」「都田工場」(いずれも仮称)を建設すると発表。磐田工場(静岡県磐田市)の二輪技術センターの開発・設計機能や本社工場にある電気自動車開発、二輪エンジンの生産機能などを都田に移転する方針を明らかにした。投資額は約500億円、2016年の稼働開始を目指している。これとは別に相良工場の四輪エンジンの生産の一部を浜岡原発から59キロメートル離れた湖西工場(静岡県湖西市)に移すことを検討していることも一部で報じられた。

 「東日本大震災を経験して地震津波放射能液状化の被害を想定すれば、いま拠点の再配置を考えない経営者は失格」と鈴木社長は6月23日の記者会見で発言。9月22日に静岡市内で行った講演では「電気料金は上がってもいい。仮に『1000年に1度』といっても、福島の悲惨さ、苦しみは自分たちの子孫に経験させたくない」と主張した。

 この講演で鈴木社長は「極端な脱・原発ではなく、減・原発を考えなくては」との注釈をつけながら浜岡原発の運転再開に否定的な考えを示すとともに、東京電力の事故対応を批判し、「公共的な事業を独占してきた企業の体質を徹底的に検証するべき」などと語った(9月23日付静岡新聞)。政府や電力業界からの風当たりを気にして口をつぐむ経営者ばかりが目につく中で、歯切れの良い鈴木社長の主張が注目を集め、静岡県内の政治・経済を突き動かしているように見える。(後略)

(「日経ビジネス・ポストFUKUSHIMAの経営論」〜安西巧「浜岡原発停止が分けた2人のカリスマ」より)


記事はこのあと、鈴木修とは対照的にゴリゴリの原発推進論に立つJR東海会長の葛西敬之を対照的に取り上げ、筆鋒鋭く葛西を批判しているのであるが、葛西が安倍晋三とべったりの悪名高い人間であることは、「葛西敬之 安倍晋三」でググるとおわかりいただけよう。


さて、スズキのベア見送りについて、経済再生担当相の甘利明が口出ししている。

http://www.47news.jp/CN/201403/CN2014031101001531.html

スズキがベア見送りの方針 甘利氏、非協力企業に苦言


 スズキが2014年春闘で、ベースアップ(ベア)に相当する賃金改善を見送る方針を固めたことが11日分かった。労働組合側は5年ぶりに3500円のベアを要求していたが、今後の経営環境が厳しいと判断した。12日に回答する。

 甘利明経済再生担当相は11日の閣議後の記者会見で、業績が改善したのに賃上げを実施しない企業に苦言を呈し「(政府が進める)経済の好循環に非協力的ということで、経済産業省から何らかの対応がある」と述べた。

 スズキ首脳はベアのゼロ回答について「長期的に考えた」と説明。軽自動車の増税の影響や主力の東南アジア市場の先行き不透明感も背景にあるとみられる。

共同通信 2014/03/11 12:57)


安倍政権の経済政策がうまくいっていない責任を棚に上げて企業を批判する甘利明には呆れるほかないが、甘利明以外の政治家、そう、スズキや浜松と縁の深いあの城内実大センセイにも、スズキのベアゼロ回答について、安倍政権の経済政策や静岡経済の現状及び今後の見通し、さらには浜岡原発の再稼働問題などについて、ご高説をうかがいたいものだと思う今日この頃である。