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古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「STAP細胞」の特許出願、小保方晴子は筆頭発明者ではなかった

STAP細胞」に関して、今日小保方晴子が記者会見するらしいが、あまりにいきさつが不透明なこの件を正面から取り上げた、偽善的な記事を書く趣味は私にはない。そこで「ひねくれ者」として、「STAP細胞」が肯定的に騒がれていた頃、既に特許出願済みであると聞いたので、これについて調べてみた。下記は今年2月1日の記事。

小保方晴子博士の「STAP細胞」特許出願は基本特許となるか? | 知的財産 法とビジネス(2014年2月1日)

小保方晴子博士の「STAP細胞」特許出願は基本特許となるか?


「数世紀に及ぶ生物細胞学の歴史を愚弄するものである」ー2012年、英Natureが彼女の論文の掲載を却下したときの査読者の評だという。理化学研究所小保方晴子博士の発見したSTAP細胞はそれほどに「非常識」に満ちている。受精卵から体細胞へ分化すると、細胞は分化状態をメモリのように記憶しており、多能性細胞などの未分化細胞に戻る(初期化する)ことはないというのがかつての常識であり、体細胞を初期化するには高度な遺伝子操作が必要であると考えられていた。小保方博士の発見は、体細胞に一定のストレス(弱酸性の刺激)を与えることで、分化状態の記憶が消去され、多能性を再び獲得するということのようである。

小保方博士は、大学院時代に留学していたハーバード大のチャールズ・バカンティ教授らと共同で国際特許出願(公開公報WO2013/163296 A1”Generating pluripotent cells de novo”)をしている。門外漢の私には専門的で何もわからないだろうと思ったが、特許請求の範囲(クレーム)を読んで驚いた。請求項1には、

1. A method to generate a pluripotent cell, comprising subjecting a cell to a stress.(「細胞をストレスにさらすことを備える多能性細胞生成方法」)

と記載されているだけであり、素人の私でもわかる「そのまま」なのである。小保方博士の今回の発明をこれ以上広い権利で言い表すことはできないであろう。特許請求の範囲をいかに広く記載するかが、特許の価値を左右する。学者の特許出願は、いきおい学術的になりがちであり、特許請求の範囲に余計な専門的限定が含まれ、狭い権利となることが多い。小保方博士らの国際特許出願は、その点、特許請求の範囲の記載はいずれも非常に広く書かれており、この分野の特許出願としては優れものであると思う。彼女の発明がきわめてシンプルな発想から生まれていることも大きな要因であろう。請求項1がこのまま特許になれば、間違いなく世界を制覇する「基本特許」となるだろう。

 しかし、残念ながら、ここまで広い権利を取得することは難しいだろう。国際特許出願をすると国際調査機関が先行技術を調査してサーチレポートを発行する。上記の公開公報の最後にはそのサーチレポートが添付されている。サーチレポートによれば、小保方博士の国際特許出願の請求項1は、別の日本人女性の先行技術により新規性がないとされている。その日本人女性とは、東北大学の出澤真理教授である。彼女もまた、「Muse細胞」という多能性幹細胞の発見者として有名である(47NEWS『皮膚、骨髄に多能性幹細胞 「安全性高い」東北大』参照)。出澤真理教授の国際特許出願(公開公報WO2011/007900 A1「生体組織から単離できる多能性幹細胞」)には、

 生体がストレスに曝されたり、傷害を受けると休眠状態の組織幹細胞が活性化され、組織再生に寄与することが知られている。本発明者は、骨髄間葉系細胞画分や皮膚線維芽細胞画分等の間葉系細胞又は中胚葉系細胞を培養している際に種々の方法でストレス刺激を与え(例えば、無血清培養、Hank’s Balanced Salt Solution(HBSS)による培養、低酸素培養、トータル3時間の間欠的短時間トリプシン培養、8時間若しくは16時間の長時間のトリプシン培養等)、生存している細胞を集め、メチルセルロース(MC)含有培地中で浮遊培養(MC培養という)を行った。

と記載されており、請求項17には「生体組織由来細胞を細胞ストレスに暴露し生き残った細胞を回収することを含む多能性幹細胞又は多能性細胞画分を単離する方法。」が権利請求されている。「細胞をストレスにさらして多能性幹細胞を生成する」という基本アイデア自体は、どうやら小保方博士のオリジナルではないようだ。そうすると、どのような細胞にどのような状態でどのようなストレスを与えるかといった多能性細胞の生成の条件を限定することが特許取得のために必要となりそうである。

小保方博士の国際特許出願では請求項13で、今回の弱酸性刺激以外にも様々なストレスが列挙されている。発明として完成している弱酸性刺激に限定するなら、特許が取得できる可能性は高い。また、サーチレポートを詳しく見れば、請求項7(「細胞が均一細胞集団にある」ことを限定)などには新規性または進歩性を否定する先行技術が少なくとも国際調査段階では発見されておらず、今後の世界各国(特に米国、日本、欧州)での出願審査を経てみなければわからないが、かなり広い権利が狙える余地も残されている。日本発の世紀の大発明に強力な特許権が付与されることを期待しながら、今後の特許出願審査の経過を見守りたい。

それにしても、 小保方博士の特許出願は、Google Patent Searchで”haruko obokata”と入力するだけで誰でも閲覧できるのだから、日本のマスメディアは、「リケジョ」を追いかけ回す前に、論文を取り寄せたり、特許出願を検索してみるなど、もう少し自分で彼女の研究成果を調べる努力をしてみてはどうかと思う。特許出願には論文には記載されない技術情報があったり、研究開発の苦労や方向性などが示唆されていることもあり、第一級の資料である。ここからまだまだいろいろなことが読み取れるだろう。

これは良い記事である。しまった、もっと早く「STAP細胞 特許」でネット検索しておけば良かったと思った。私は生物学系の分野にはまるで疎いし、調べてもちんぷんかんぷんで何もわからないだろうと思ってほったらかしにしていたのだった。

引用した記事によると、「細胞をストレスにさらして多能性幹細胞を生成する」という基本アイデア自体は、どうやら「小保方博士のオリジナルではない」ばかりか、他の日本人女性科学者によって先行特許出願がなされていたという。

さらに、上記の記事に書かれていないことで指摘しておかなければならないのは、記事には「小保方博士の特許出願」とあるけれども、筆頭発明者は小保方氏ではなく、チャールズ・バカンティ氏だということだ。日本ではよく組織のリーダーを特許の筆頭発明者にすることがあるが、アメリカではそういうことをやらず、実際に発明にもっとも貢献した人を筆頭発明者にすると、私は聞いている。

つまり、「STAP細胞」はもともと理研というよりはハーバード大学の仕事であって、その親玉か実際の研究の中心かはわからないが、バカンティ氏の仕事というべきものだ。このことは、「STAP細胞」の論文取り下げをバカンティ氏が頑として拒んでいたことから想像はついていたが、特許出願でも筆頭発明者がバカンティ氏であるという事実があるのだから、いよいよもって間違いないと見て良いだろう。

何故、理研小保方晴子を広告塔にして、同氏の仕事として大々的にマスコミに打ち上げたあと、同氏のちゃらんぽらんな研究姿勢が明るみに出るや、一転して「トカゲの尻尾切り」に走ったのか。そのあたりのことが解明されるべきであろう。つまり、理研は「STAP細胞」発見をハーバード大から剽窃しようとして失敗したというのがことの本質ではないかと私は疑っている。