kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

東北大・出澤真理教授の「Muse細胞」、昨年(2013年)日本特許が成立していた

笹井芳樹の記者会見があったせいか、「STAP細胞」の特許出願、小保方晴子は筆頭発明者ではなかった - kojitakenの日記(2014年4月9日)へのアクセスがまたぶり返した。左記のエントリへのアクセス数が一時期非常に多く、4月10日には当ダイアリーに24,374件(ユニークアクセス数では20,475件=いずれも「はてなカウンタ」計数)のアクセスがあった。某有名ブログのアクセス数にはわずかに及ばなかったようだが、当ダイアリーのアクセス数としては、今年2月8日に「偽ベートーヴェン佐村河内守を取り上げた時の32,474件(ユニークアクセス数では27,648件)に次ぐ、今年2番目の多さだった。なお過去最多は、昨年のプロ野球日本シリーズで読売を破って優勝した楽天の監督・星野仙一をこき下ろした昨年(2013年)11月4日に記録した48,771件(ユニークアクセス数は40,043件)である。当ダイアリーの特徴として、アクセス数が多い時には、記事に対して反感を持つ読者が多く、「はてなブックマーク」にも、記事を批判するコメントがきわめて多いことが挙げられる。「憎まれっ子世に憚る」を地で行く、と嘯く次第である(笑)。なお、今日(4/16)は6,500件強(ユニークアクセス数では5,100件強)程度のアクセス数だが、それでも普段の日よりは若干多い。

さて、笹井芳樹の記者会見については改めて書くとして、「STAP細胞」の特許出願、小保方晴子は筆頭発明者ではなかった - kojitakenの日記 で、バカンティ・小保方らの国際特許出願の新規性を否定する特許文献として挙げられていたことを紹介した東北大・出澤真理教授の「Muse細胞」に関する特許出願が、日本国特許庁に審査請求を行って拒絶査定を受けたあと、不服審判に持ち込んだ結果、特許査定を勝ち得ていた事実をつかんだことを報告しておく。出澤教授らのもとの国際特許出願には「X文献」(出願の新規性を否定する文献)が多数あったから、「特許請求の範囲」を限定して成立したものと思われる。とはいっても、「Muse細胞」の出願が特許査定を受けたのは、「STAP細胞」が騒がれる1年以上も前の2013年1月であり、それを今頃になってやっと知っただけの話。無論、専門家にとっては常識だったはずだ。下記は昨年2月のNEDOの発表。

NEDO:Muse細胞及び分離方法に関する基本的な特許が成立

Muse細胞及び分離方法に関する基本的な特許が成立
2013年2月22日
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
理事長 古川一夫


 NEDOのプロジェクトにおいて東北大学の出澤教授のグループが発見した、ヒトの生体内に存在する多能性幹細胞(Muse細胞)と、このMuse細胞を生体組織から分離する技術に関する特許が、日本国内で成立しました。

 Muse細胞は、あらゆる組織に分化することが可能な多能性幹細胞であり、その能力により、体内の様々な損傷部位を修復することが確認されています。また、すでにヒトに移植が実施されている骨髄や間葉系幹細胞の一部に含まれていること、遺伝子導入や化合物添加などの誘導操作を必要とせずに分離できることなどから、安全性について一定の実績を有しています。
 本特許を活用することで、今後、Muse細胞再生医療等への実用化が進展することが期待されます。


1.背景

様々な多能性幹細胞に関する研究の進展とともに、再生医療の本格的実現・実用化への期待が高まっています。骨髄などに存在する間葉系幹細胞は、神経細胞や肝細胞など、体のあらゆる細胞に分化することや、それらを肝硬変、心筋梗塞などの患者に移植することで一定の組織修復効果が得られることが多数報告されています。しかしながら、間葉系幹細胞の実体は様々な種類の細胞から成る細胞群であるため、幅広い分化転換や組織修復をもたらす細胞の実体は不明のままでした。
 東北大学大学院医学系研究科の出澤真理教授らによって2010年に発表されたMuse細胞は、その間葉系幹細胞の中にあって多能性を有する幹細胞であり、皮膚、神経、肝臓、筋肉等、あらゆる組織に分化する能力により体内の様々な損傷部位を修復することが確認されています。
 また、Muse細胞は遺伝子導入や化合物添加などの誘導操作を必要せず分離できること、腫瘍性増殖を示さないこと、及び、すでにヒトに移植が実施されている骨髄や間葉系幹細胞に含まれていることから、安全性について一定の実績を有しています。
 以上に加え、Muse細胞はフローサイトメトリー等の一般的な手法により効率よく取得できることから、再生医療の実現にとって有効で安全性の高い細胞として期待されています。
 このようなMuse細胞は国内外の研究機関で再生医療の臨床応用に向けた研究が精力的に行われているだけでなく、基礎的な疾病の研究、治療薬開発などにも利用されることが期待されています。


2.成立した特許の概要

以下の2点を内容とする特許(第5185443号)が日本において成立しました。

〔1〕物質特許

生体間葉系組織や培養間葉系細胞から分離できる、2つの細胞表面マーカー(SSEA-3及びCD105)が陽性、腫瘍性増殖を示さない、及び自己複製可能な多能性幹細胞(Muse細胞)を含む細胞集団

〔2〕分離方法

生体の間葉系組織やそれらを培養した間葉系細胞から、上記の細胞表層マーカーを指標としてMuse細胞を含む細胞集団を分離する方法

この内容及び関連する項目を含めた特許は、欧米等にも出願され、現在審査中です。

本特許については、発明者・出願人である出澤教授らから、大学発ベンチャーである株式会社Clioに独占的使用権が付与されています。なお、今後、学術目的・用途については無償での利用を可能とする予定ですが、営利目的でMuse細胞を研究・利用する場合には、同社からのライセンスが必要となります。


3.今後の予定

今後、「ヒト幹細胞産業応用基盤技術開発」では、Muse細胞の品質管理評価指標の探索及びヒト生体組織からのMuse細胞の分離を自動化するための基盤的な技術開発を行い、「次世代機能代替技術の研究開発」では、Muse細胞の生体内での挙動の解明(組織修復・遊走など)とその制御や生体への導入デバイス等に関する技術開発を継続する予定です。

(後略)

具体的な内容については門外漢ゆえさっぱりわからないが、これを読むと、笹井芳樹が「STAP現象」を「有望で合理的な仮説と考える」と言ったこと自体には違和感は感じない。発想自体は、おそらく当該分野の多くの研究者が共有しているものであって、ただその具現がきわめて難しい分野なのではないかと、ど素人が勝手に想像する次第。