kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

ピケティ、「トリクルダウン」を語る@日本記者クラブ

トマ・ピケティが「トリクルダウン」を否定した - kojitakenの日記(2015年2月1日)でIDコールした id:suterakusoさんから、トマ・ピケティが日本記者クラブで語った内容について、4件のコメントをいただいた*1。感謝の意を表するとともに、以下に4件のコメントをつなげて紹介する。なお、一部を省略し、明らかなtypoを修正した。

 紙面を読みました。読んだのですが、もっと文脈を知りたいと思わされるものでした。それでググったところ、会見の動画を見つけました。

https://www.youtube.com/watch?v=lgGjoCPADCI&list=UU_iMvY293APrYBx0CJReIVw

(略)

 会見の動画をみました。とりあえず、今日は当該の部分の文字起こしだけ投稿します。57分45秒頃からです。感想等、明日以降、投稿するかもしれません。

 まずは、以下、NHKの「たけだ」という人の質問です。

 アベノミクスについての最初の質問に関係するんですけども…トリクルダウン…アベノミクスはかつてのレーガン政権の時からずっと続いているような、富める者が富めばみんなが豊かになるというようなトリクルダウン…の考えで今経済政策を進めている訳ですけれども…これだけ、やはり格差が日本でも起きている…拡大しているということはつまり…トリクルダウンというのはうまくいかないということなんでしょうか。とくに、日本の場合に、じゃあ、格差を是正するのは、じゃあ、どうすればいいんだと…今、相続税も少し…あの…対象を拡大していますけれども…じゃあ、その…まず、トリクルダウンがうまくいかないとなると、じゃあ、日本ではなにをすればいいのかと…この2点、お聞きしたいと思います。


 続いて、以下、ピケティの回答です。

 まず申し上げておきますけど、私が日本に参りましたのは、日本のことを学ぶためであり、日本に教訓を垂れるためにきた、日本はこれをやるべきだ、あれをするべきだということを言うために来たのではないということを申し上げておきます。さて、トリクルダウン理論ですけれども、理論としてはとても面白いと思います。でも、実施面…実行面におきましては、これは、実際に機能する理論なのでしょうか。時間の経過とともにそれがどういうふうに進展してきたかということをみてみますと、過去10年間で不平等は増えております。そして、唯一不平等が増えているということでないことを示しているのは、統計数字だけだと思うんですけども…しかし、成長率…これをみても、アメリカの成長率だって決していいとはいえない状況であります。アメリカだって50年代、60年代、70年代、と、比べると、いうような時間の経過を長くとってみてみますと、…この50年代、60年代、70年代というのは今よりも不平等のレベルが低かった時代ですけども、その時のほうが成長が高くて、今のほうが成長が低いというわけであります。ですからよくいわれますのは、不平等が今増えているけれども、ちょっと我慢して、もう少しやってみればいずれ成功をおさめ、そしていずれ万人にそれが裨益するのであるというようなことがいわれておりますけれども、過去におきましてもそういうことは行われなかったのに、今後未来においてもそれがうまくいうという保証はどこにもないと私は感じております。で、日本に関して若干コメントをするとすれば、もう少し税制を累進課税的なものにしていく必要があると思います。すなわち若者に利するような税制にもっていく必要があります。それから労働市場の改革というようなことも重要だと思っております。パートタイマー、あるいは、有期雇用の労働者、そういった人たちに対しまして、よりよい社会的な保護を与える、そして社会保障を手厚くするということが、日本の場合は、不平等におきまして非常に重要な項目になっているのではないかと思います。若い人、それから女性も、大事であります。若者と、それから、ジェンダーの不平等…女性を考え…そういったところに手をつけるということは、日本の場合大変な問題なのではないかと思います。結局そういったことは、マイナスの結果を生んでしまいます。出生率に影響する、人口の減少ということにも影響してしまうということになりかねませんので、私は、このへんが、日本におきましては中心的な懸念課題であるべきだろうと感じております。


 ちなみに語学力がありませんので、通訳の文字起こしです。それから、管理人様注目?の飯田香織記者も質問しています。それから、経団連の「すずき」というスタッフの法人税についての質問に対して、国際法人税が必要というような回答をしています。あと、イントロダクションのなかで、格差をグローバリズムだけのせいにしないでほしい(各国の制度も原因である)というようなことも言っています。


最後の方にある「管理人様注目?の飯田香織記者」については、過去4件の記事で言及しているが、主なものは下記2件。「悪い意味で」飯田香織NHK解説委員に注目している次第(特にスティグリッツへのインタビューについて書いた最初の記事)。