kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「反安保法」は「安保や憲法で左翼票を固めて自己満足する戦い」ではない

きまぐれな日々 野党再編or共闘には「橋下徹の排除」が絶対条件だ(2015年12月14日)に先ほどいただいたコメント。

http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1418.html#comment19229

選挙の帰趨は、都市部納税者への利益誘導をどうするかにかかってるのでしょう。安保や憲法、特定の政治家にフォーカスすると本質を見失います。

生活保護者、公務員、議員定数なんかを槍玉に挙げて
タックスペイヤー VS タックスイーター
の構図に持ち込むのが『改革勢力』の行動パターンなのですから、

  • 消費税減税や社会保険料軽減等で都市部の中低所得労働者にしっかり利益誘導する。
  • 法人利益を課税強化して経費支出か納税かの二択を迫る。

のような戦略で具体的なメリットをアピールすべきですね。

安保や憲法で左翼票を固めて自己満足するような戦い方を許す情勢ではありません。

2015.12.24 04:44 牛


この意見に私は断固反対だ。理由は大きく言って2つある、第一に経済政策で野党が共闘して自民党に対抗することは絶対に不可能であること、第二は安全保障政策がもはや左翼のテーマであった「民主主義」にとどまらず、それよりも昔の明治時代からのテーマであった「立憲主義」に係るものになっているからだ。論者(コメント主)が後者を「安保や憲法で左翼票を固めて自己満足するような戦い方」と評することは、現状を全く把握できていないことを露呈するものにほかならない。

経済の論点について言えば、「民主党を中心とした野党」に人々の心に訴える経済政策を選挙で訴えることなど到底期待できない。日本の民主党はスペインの総選挙で躍進したポデモスからはかけ離れている。というより正反対の方向性を有しているとさえいえる。

人々の心に訴える経済政策とは、一言で言えば「反緊縮」しかないのだが、それは民主党には絶対に期待できない。なにしろ党の代表が財政再建至上主義者の岡田克也だ。

では共産党はどうかと思ってググると、まず『しんぶん赤旗』がスペインの総選挙におけるポデモスの躍進を取り上げていた。

スペイン 「反緊縮」躍進/総選挙 与党が過半数割れ(2015年12月22日)

共産党 反緊縮」でググると、さとうしゅういちさんの記事がいくつか引っかかる。

日本共産党の「反緊縮」姿勢明確化を支持する : 広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)(2015年7月5日)より

日本共産党が、欧州議会という国際的な場で「反緊縮」姿勢をしめしました。

このニュースは、非常に画期的なことです。

日本共産党は、宮本顕治さんの時代以降、自主独立路線をとってきました。
ソ連や中国、北朝鮮といった国々の共産党とは距離を置き、批判すべきは批判してきたという面と、欧州の左翼との交流がおろそかになっていたという面があったと思います。

ただ、今回は、「反緊縮」が主流となっている欧州の左翼が集う欧州議会内での会議に参加したのです。

そして堂々と、「期限を切って国の借金をゼロにする必要はない」「国民生活を犠牲にして借金を減らそうとすれば、景気が冷え込み、財政はかえって悪化する」などと主張してきました。

「消費税増税反対」だけでなく、▽大企業や富裕層の「能力に応じた負担」を原則とする税制改革▽国民の所得を増やす政策による経済成長と税収増ーなどをしっかりと主張しています。
(後略)


日本共産党以外の反自民が「反緊縮」になりきれない理由・・企業主義の日本のセーフティーネット : 広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)(2015年9月3日)より

欧州では、いまや、左翼の本流は「反緊縮」です。
しかし、日本共産党以外の反自民政党は、ともすれば安倍自民党以上に緊縮財政よりになりがちです。


これが現状なのだ。

なにしろ、今の「リベラル・左派」といえば、このところ私が頻繁に槍玉に挙げる某ブログに典型的に見られるように、橋下徹にいつまでも執着していたりするし、かと思えば同じブログのコメント欄には菅政権の消費税増税政策を擁護するコメントが出ていたりする。また、私が前記ブログ記事のタイトルを

野党再編or共闘には「橋下徹の排除」が絶対条件だ

と書いたら、

「kojitaken」は共闘の話題になると、たいてい「だれを排除するべきか」のお話をすると思う

とつぶやいた、想像を絶するくらい頭の悪い「リベラル」もいる始末だ(ここでなぜか「おえん」という岡山弁を思い出した)。

もちろん、私が「橋下を排除せよ」というのは、橋下流の「しばき主義風味の新自由主義*1を排除せよという意味であり、小泉構造改革だの河村たかしの「減税日本」だのといった「新自由主義改革」全般の排除が含まれる。参院選はもうすぐだから、野党共闘はそこまでが限界で、「反緊縮」で野党共闘というところまで持って行くのは、さとうしゅういちさんの言葉を借りれば「ともすれば安倍自民党以上に緊縮財政よりになりがち」な「日本共産党以外の反自民政党」には無理な相談だ。

二番目の安保法の問題だが、今回、というより2012年末の第2次安倍内閣発足以降の安倍政権の「立憲主義に対する挑戦」の意味が理解できていない人間があまりにも多すぎる。民主主義は敗戦後の日本の課題だが、立憲主義はそれより前の明治時代からの課題だ。安倍晋三(や橋下徹)が立憲主義に挑戦しているということは、彼らは(自覚などしていないだろうが)明治時代の体制にすら挑戦して、それよりももっと古い政治体制への「復古」を求めているのだ。当然ながらそれは「保守主義」に抵触する。

つまり、もはや「安保法反対」は「左翼(だけ)の課題」ではない。保守にとっての課題にもなっている。それなのに「リベラル」は橋下徹のことを「フツーの保守」などと評したりする。

冗談じゃない。

普通の保守といえるのは、たとえば前記「リベラル」ブロガーもお気に入りだという、憲法学者の木村草太氏のような人だ。

やはり保守派に属するといえるであろう長谷部恭男が今年6月4日に安保法案を「違憲」と明言してから、安保法案をめぐる議論が盛り上がり、一時的とはいえ安倍内閣の支持率を大きく下げたが、その数日前に「リベラル」が何を言っていたかというと、「リベラル」の1人である姜尚中は、安保法案の国会論戦は「消化試合」だとTBSの『サンデーモーニング』で言っていた。その後の数か月は、姜尚中の認識が誤りだったことを示している。

それくらい、安保法を含む安全保障は大問題だ。そしてそれが大問題である理由は、日本の最高権力者が公然と立憲主義に戦いを挑んでおり、それが成就しかねない状態になっているからである。間違っても経済政策より優先順位の低い問題ではあり得ない。

それに、「反緊縮」での野党共闘は不可能だが、「安保法廃棄」での野党共闘なら可能だ。なにしろ、改憲派憲法学者小林節まで安保法廃棄を訴えている。

それよりも何よりも、来年の参院選はもはや立憲主義を守るための「籠城戦」を余儀なくされている。改選の議席配分からいって、反自民側には「いかに負けを少なくするか」を課題とせざるを得ない。

来年の参院選とはそういう選挙なのである。

*1:これにとどまらず、橋下の改憲志向及び反立憲主義志向に対するアンチテーゼでもあるが。