kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

ピエール・ブーレーズ死去

訃報は新聞に載ってから2,3日経ってやっと気づいた。それでも2日ほど書かずにいたが、今日はまだ記事を書いてなかったし、過去(80年代後半から90年代初め頃)にはかなりお世話になったのでやはり書いておくことにする。

http://www.asahi.com/articles/ASJ166W3HJ16UHBI03Z.html

ピエール・ブーレーズさん死去 仏の作曲家・指揮者
青田秀樹=パリ、吉田純子
2016年1月6日23時56分

 世界的に知られるフランスの作曲家、指揮者のピエール・ブーレーズさんが5日、居住するドイツ西部バーデンバーデンで死去した。90歳だった。家族らが6日、声明で発表した。

 最先端の音響・科学技術、思想、哲学など、多くのジャンルをとりこんで表現し、現代音楽界を牽引(けんいん)した。25年、仏モンブリゾン生まれ。パリ国立音楽院で作曲家メシアンに師事。代表作に「アンセム2」などがある。教育者としても活動し、「現代音楽を考える」など論考を多数執筆。70年代、パリにIRCAM(音響・音楽の探究と調整の研究所)を創設、所長に。科学の最先端技術を作曲や演奏の世界と結び、現代音楽の潮流を作った。

 音の塊で聴衆を圧倒する傾向に背を向け、音楽の構造を冷静に分析し、緻密(ちみつ)かつ透明感のある響きで内側から熱狂させてゆくスタイルの演奏を貫いた。

朝日新聞デジタルより)


お世話になった、といっても私は趣味が保守的なもので(笑)、作曲家・ブーレーズの作品は実は聴いたことがないのだった。

面白いと思ったのは指揮者としてニューヨーク・フィルハーモニックを指揮してCBSソニーに録音していた1970年代前半の演奏だった。CBSソニーの「ソニー・クラシック・ベスト100」だかに収められていたCDを何枚か買った。最初はシェーンベルクの「浄夜」作品4とベルクの叙情組曲を組んだもので、記録を見ると1988年に買っている。次がストラヴィンスキーバルトークの「火の鳥」とバルトークの「不思議な中国の役人(不思議なマンダリン)」を組んだもので、1989年に買った。私は、世評の高い「火の鳥」よりもバルトークに大いにはまり、一時バルトークを集中的に聴くきっかけになった。さらに同じ年に、ストラヴィンスキーの「春の祭典」と「ペトルーシュカ」を組んだCDを買った。

引用した朝日の記事にある「音楽の構造を冷静に分析し、緻密(ちみつ)かつ透明感のある響きで内側から熱狂させてゆくスタイル」というのは、「まさにその通り!」と強く同意したくなる表現だ。この部分は吉田純子記者が書いたものであろう。吉田記者は朝日の夕刊に良い連載記事を書く人だ。1971年録音の「不思議なマンダリン」は、分析的でありながら熱狂させられる稀有の演奏だった。

しかし、後年にシカゴ交響楽団を指揮してドイツ・グラモフォンに入れた録音はどれもピンとこなかった。CD購入記録を見ると、1993年から2001年にかけて、バルトークの「かかし王子」ほか、マーラー交響曲第9番スクリャービンの「法悦の詩」、「プロメテウス」とピアノ協奏曲、それにリヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラ」とマーラーの「葬礼」(交響曲第2番第1楽章の初期バージョン)などを買っているが、最後のシュトラウスマーラーを組んだCDなど、持っていることも忘れていた。なぜ70年代のニューヨーク・フィルとの演奏があんなに面白かったのに、90年代のシカゴ響との演奏がさっぱり面白くないと感じたのかはわからないが、そうこうしているうちに音楽を聴く習慣がなくなっていったため、訃報もすぐには気づかないていたらくだった。

ともあれ、故人のご冥福を心よりお祈りします。