kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

TPPを手厳しく批判していたスティグリッツ

昨日(3/24)、「きまぐれな日々」の鍵コメで教えていただいたジョセフ・スティグリッツに関する記事。但し「ソースは日刊ゲンダイ」。とはいえ、スティグリッツが使ったプレゼン資料からの英文のフレーズの引用など記述が具体的で、普段は読んだ瞬間ガセとわかる記事ばかりが載る『日刊ゲンダイ』には珍しい記事だと思った。以下引用する。

政府公表資料はウソ 安倍官邸が隠した米教授“本当の提言”|日刊ゲンダイDIGITAL

政府公表資料はウソ 安倍官邸が隠した米教授“本当の提言”
2016年3月24日

 22日に第3回が開かれた「国際金融経済分析会合」。米ニューヨーク市立大・クルーグマン教授も来年4月の消費増税反対を提言したが、増税延期の風向きが強くなったのは、先週16日に行われた第1回の米コロンビア大・スティグリッツ教授の提言がきっかけだった。

 だが、ちょっと待って欲しい。会合から2日後の18日に政府が公表したスティグリッツ教授提出の資料を見ると、消費増税についての記述はどこにもない。むしろ教授が提言したのは、TPPの欺瞞や量的緩和政策の失敗、格差の是正、つまりアベノミクスの全否定だった。

 提言のレジュメとみられる資料は48ページにわたり、例えばTPPについて次のように手厳しい。

〈米国にとってTPPの効果はほぼゼロと推計される〉〈TPPは悪い貿易協定であるというコンセンサスが広がりつつあり、米国議会で批准されないであろう〉〈特に投資条項が好ましくない――新しい差別をもたらし、より強い成長や環境保護等のための経済規制手段を制限する〉

 ただ、これは官邸の事務局による和訳で、本来の英文と比較すると、これでも「意図的に差し障りのない表現にしている」と言うのは、シグマ・キャピタルのチーフエコノミスト田代秀敏氏だ。

「〈特に投資条項が好ましくない=Investment provisions especially objectionable〉ですが、強い不快感を表す単語【objectionable】を使っています。正確には、〈投資条項が、とりわけ、いかがわしい〉と訳すべきでしょう」

 他にも【inequality】を和訳で、アベノミクスに好都合な場合は「格差」とし、不都合な場合は「不平等」とする“都合のいい”使い分けが散見されると指摘する。

「『大不況に関する誤った診断』と題するスライドでは、旧『第1の矢』の金融緩和には期待された効果がないとし、『企業が投資に積極的にならないのは、需要が足りないからだ』と断言しています。世界で最も権威のある経済学者が日本国民のために全力で提言した結果が、アベノミクスの全否定でした。スティグリッツ教授は安倍首相に、アベノミクスを停止し、経済政策を百八十度転換することによって、7月のG7サミットで主導権を取ることを提言しているのです」(田代秀敏氏)

 それにしても、スティグリッツ教授の資料はどうして会合当日に公表されず、2日も遅れたのか。内閣官房の担当者は「和訳の適切性について疑義が出たりしまして……」と弁解していた。

 政府にとって“好ましくない”ことを隠し、消費増税への教授の意見を必要以上に“強調”したのだとすれば、大問題だ。

官邸のホームページにあるスティグリッツのプレゼン資料は下記。確かに48ページある。


ちょっとネット検索をかけてみたが、引っかかったのはあの国家社会主義者・三橋貴明の書いた記事だった。三橋は『日刊ゲンダイ』ともども(スタンスは両極端ながら)大嫌いだが、こちらも節を屈してリンクを張る。それにはわけがある。


上記三橋の記事の中に、日本農業新聞の記事からの引用が出てくる。

日本農業新聞

TPPは悪い協定 米議会で批准されぬ ノーベル経済学賞スティグリッツ教授

 5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に向け、政府は16日、安倍晋三首相らが有識者と意見交換する「国際金融経済分析会合」を初めて開いた。講師に招いたノーベル経済学賞受賞者で米コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授は、環太平洋連携協定(TPP)について、米国での効果はほとんどなく、米国議会で批准されないとの見方を示した。

 日本政府は、TPPの早期発効に向けて、今国会に協定承認案と関連法案を提出し、成立を急ぐ。だが、TPP発効には、米国議会の批准が不可欠。世界的に著名な経済学者がTPPの効果や批准の見通しについて否定的な見解を示したことで、日本国内でも一層、慎重な対応を求める声が強まりそうだ。

 スティグリッツ氏は会合で、世界経済についての自身の見解をまとめた資料を配布。その中で、TPPについて「TPPは悪い貿易協定だというコンセンサスが広がりつつあり、米国議会で批准されないだろう」との見方を示した。

 また、貿易政策の効果は「常に過大評価される」と指摘。その上で「米国にとってTPPの効果はほぼゼロと推計される」とした。

 さらに、投資分野の条項を問題視し「新しい差別をもたらし、より強い成長や環境保護などのための経済規制手段を制限する」と懸念を示した。

 この会合をめぐっては、来年4月に予定される消費税率10%への引き上げを再延期する布石との憶測も出ていた。スティグリッツ氏は「消費税を引き上げるのは今のタイミングは適切ではない」と、引き上げを見送るよう提言した。

日本農業新聞 2016/3/17)

なるほど、TPPについては日本農業新聞がいち早く取り上げていたわけだ。それを三橋貴明の記事経由で知った次第。

日本農業新聞の反応が早かったのは、TPPが日本の農業にとって死活問題だとの認識に基づくものだろう。

なおトンデモ新聞『日刊ゲンダイ』の記事を鵜呑みにしないくらいの態度は最低限必要だとは思う。スティグリッツの資料にも直接当たった方が良い。