kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

安倍晋三はなぜ「衆参同日選」を見送ったか/NEWS23の悪しき「星浩カラー」を憂う

通常国会閉会で、衆参同日選挙見送りと決まって2日。安倍晋三がサミットで出し抜けに「リーマンショック」と言ってから、消費増税先送りと衆参同日選挙見送りに至る政局は謎の多いものだった。

前の週末、土曜か日曜かのどちらかは忘れたが、地元の自民党衆院議員(参院議員ではない)の宣伝カーと出くわした。それを見た私は、えっ、もしかして衆院選やるの?と思った。そして、予定通りの消費増税を求める麻生太郎谷垣禎一は「増税延期を行うなら衆院を解散して信を問え」と安倍晋三に訴えたと報じられた。私はそれはかつての郵政解散の時の森喜朗の「干からびたチーズ」と同じ演技であって、安倍晋三は麻生や谷垣らの主張を受け入れて衆議院を解散するのではないかと最後の最後まで勘繰っていた。しかし、安倍晋三は解散に踏み切らなかった。

中日新聞東京新聞)の長谷川幸洋も今回は予想を大きく外した。長谷川は、5月21日付「現代ビジネス」に、「緊急リポート!衆議院はまもなく解散→総選挙の公算大〜前回の解散を言い当てた筆者が、そう予測する根拠」と題する記事を発表したが、その予想はみごとに外れた。

なぜ安倍晋三は衆参同日選挙に踏み切らなかったのか。熊本の地震の影響はやはりあっただろう。あの地震が起きて、これで衆参同日選挙はやりづらくなっただろうとは誰もが思ったところだろう。私は、それでも安倍晋三なら解散すると読んだのだが、そうはならなかった。衆参同日選挙に強く反発する公明党に配慮したのではないかと推測する向きもあるが、安倍晋三がこれまで公明党に配慮したことがどれくらいあったというのか。見えすいた茶番であったことが明らかになった「軽減税率」くらいしか思い当たらない。しかも「軽減税率」採用の決断は、安倍晋三自身の人気とりにもつながるものだった。その他の件では、特定秘密保護法や安保法の強行に見られる通り、安倍晋三公明党の思惑など歯牙にもかけず独裁を続けてきた。その安倍晋三が、自身最大の野望である改憲へのまたとないチャンスである衆参同日選挙を見送った理由が、公明党への配慮であるとは私には到底信じられない。

結局、安倍晋三には「衆参同日選挙に勝てる自信がなかった」という以外の仮説は、今のところ思い浮かばないのである。これも、現在の各党の政党支持率からすればにわかには信じ難い仮説ではあるが。マスコミの世論調査も敵わない精度を誇るとの都市伝説まで生まれている「自民党の独自調査」の結果はどんなものだったのだろうか。

とにもかくにも、参院選が単独で行われることが決まったが、衆参同日選挙はなくとも、年内の解散総選挙は間違いなく行われるとの観測が、永田町ウォッチャーはもとより、当の永田町の住民たち(たとえば福島瑞穂ら)からも出ている。この日記のコメント欄常連である杉山真大(id:mtcedar)さんはよく中曽根政権時代の1983年に中曽根が衆参同日選挙を行わず、6月の参院選の半年後の12月に解散総選挙を行った例を挙げるのだが、1983年6月の参院選では自民党が勝ったけれども、同年12月の衆院選自民党過半数割れの敗北を喫した。余談だがこのとき日刊ゲンダイは「田中曽根 退陣へ」との大見出しを掲げた。まだ日刊ゲンダイを今ほどには嫌っていなかった*1私はうかつにもそれを真に受けてしまってバカを見た。中曽根は新自由クラブと連立を組むことで危機を回避したのだった。これ以降、参院選衆院選が同年の違う日に行われた例はない。しかもその最後の事例では自民党は予想外の敗北を喫している。だから、永田町の声というのもあてにならないのではないかとも思う。

とはいえ、今回の参院選自民党が勝てば(自民が議席を増やすこと自体は確定的だが、ここでは安倍晋三が示したという「与党が改選議席過半数を超えれば勝利」*2というラインを仮に示しておく)、衆院選でも勝てるだろうと思った安倍晋三が年内の解散総選挙に踏み切ることは大いにあり得るので、結局は「なんでもあり」といったところだろうか。

ところで、野党は相も変わらず迷走している。3日前の時事通信は、下記のような冴えない記事を配信していた。

http://www.jiji.com/jc/article?k=2016053100618&g=pol

民進、幻の統一名簿構想=他党に打診も「実現困難」

 民進党岡田克也代表が、夏の参院選比例代表を統一名簿で戦う構想を社民、生活両党に伝えたものの、実現困難との判断に傾きつつある。名簿を届け出る政治団体の名称について調整が難航したためで、岡田氏は31日、記者団に「ほとんど検討の余地がないほどハードルが高い」と語った。

 統一名簿構想は、生活の党の小沢一郎代表が提唱し、社民党が賛同。両党は民進党にも参加を呼び掛けていた。岡田氏ら同党執行部は「衆参同日選となった場合の対応が複雑」として消極的だったが、その後、同日選はなくなったと判断。小沢氏らに「統一名簿を考えてみたい」と伝えた。
 具体的には、名簿を届け出る政治団体名に「民進党市民連合」など「民進」の党名を盛り込むことを条件とした。しかし、総務省に問い合わせたところ、「既存政党と類似している」として認められない可能性が高いことが分かった。小沢氏は「民主国民連合でどうか」と再検討を促したが、岡田氏から前向きな返答はなかったという。
 岡田氏は、野党勢力の拡大に向け統一名簿の有効性は認めたが、「民進」の党名へのこだわりを捨てられなかった格好。社民、生活両党は民進党抜きでも構想実現を目指す構えだ。 (2016/05/31-20:29)

時事通信より)

「『民進党』の党名にこだわる」岡田克也はいったい何を考えているのだろうか。「民進党」とは、そもそも泡沫政党だった旧維新の党の江田憲司の案に旧民主党が押し切られた名称であり、そんな党名にこだわる旧民主党の支持者がどれくらいいるのかさえ疑問だ。私の大嫌いな小沢一郎のいう「民主国民連合」の方が「民進党市民連合」よりはマシだろうと思うのだが、これは「社民、生活両党に統一名簿を打診しましたけど断られましたよ」という岡田克也の(「アリバイ工作」のような)エクスキューズだと考えるべきなのだろう。実際問題、共産党と同様にいまや固定票(=連合票)頼みの民進党にとって、統一名簿にはさしたるメリットはない。

そういや小林節はどうするのだろう。私は氏の撤退を予想しているし、いくら比例代表制とはいっても1議席も得られない場合には「票の分断」になるので、1議席以上の議席獲得の見込みがあるとは到底思えない「国民怒りの声」は撤退すべきだとも思うのだが。

あと、id:axfxzoさんのコメントにもあったが、TBSの「NEWS23」が悪しき「星浩カラー」を出し始めた。

http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20160601/1464736973#c1464791402

axfxzo 2016/06/01 23:30

いや、永田町の声、与党の人々のは年内解散は百パーセントだと、福島みずほさんも最近、話してましたよ。
それはそれとして。
なんだ、この23という番組は?
野田をつかって星が増税の筋を貫けと主張(笑)。
安倍の新しい判断なる発言、三党合意の反故などは確かにおかしいと言えばおかしい。
でも、この局面で増税ゴーなのか?
といった、そもそもな疑問もさることながら、この報道のやり方にすごく嫌な感じ。
だって、野田の所属する政党は共産党社民党、生活と共同して、安倍晋三よりも先に増税をやめろとやったではないか?
それなのに、わざわざ野田を引っ張り出して、増税やれよと言わせるって、野党も野党だよねと批判しているようなものである。
批判をマスコミがやることは誰も否定できることではない。
でも、嫌な感じと思うのは、折角の自民党叩きのチャンスに冷や水をかけるやり方ってところ。
安倍晋三が大嫌いなことと、消費増税をロボット的にやることにとりあえずストップかけたことは別。
一般論としても、三党合意をやり直す機会にもなったので、結果論としても、よくはないが責められるテーマにもならないだろう。野党にとっても軽減税率やインボイス、さらには累進課税の強化、タックスヘイブンのことなど、一から論戦を挑み直す好機になるではないか。
星がダメというか、ある意味で危険な奴なのだと再認識できた瞬間でもあった。
野田って、安倍晋三よりも不人気なことは確実だろう。安倍の場合は、好き嫌いがハッキリと分かれる奴だが、野田は広範に、あいつは要らないという印象(笑)。有り体に言えば遠巻きに野党叩きやっているように見えるんですけどね。星さん。

そりゃまあ星浩といえば、野田政権時代の2012年6月1日付で朝日新聞の「東京本社オピニオン編集長兼論説主幹代理」になって、野田政権は「決められる政治」をやれ、消費税率を引き上げる三党合意を早く決めろ、という社説を書き続けた*3男ですからね。そんな星がキャスターになった時点で今のような主張をすることは見えていたと思いますよ。野ダメ(野田佳彦)が出演した一昨日の番組は、テレビをつけてはいましたがほとんど寝ぼけていたので、野ダメや星が何を言ったかはほとんど覚えていませんが、私は、ああ、野ダメを番組に呼んだか、いかにも星浩のやりそうなことだなと思いました。しかも昨日(2日)も、消費増税をしなければ社会保障が心配だというトーンのニュースを、サブキャスターの皆川玲奈に読ませていました。安倍晋三との距離感においては、報棄ての後藤謙次よりはまだマシかとも思われる星浩ですが、税と社会保障の問題ではダメダメって感想です。

なお、参院選では「立憲主義」を論点にしたスローガンを野党が連呼して安倍政権や自民党を論破して勝つ、というシナリオはもはやあり得ないことは明らかだろう。

国民の信頼を失いつつある自民党が、思ったほどの議席を獲得できない可能性はあるにせよ、「自民が負けた」といえるほどの議席数になる可能性はほとんどないと思う。野党も「左」系メディアを含むリベラル・左派も、一方では上記の「NEWS23」の星浩的(TBS・朝日新聞的)消費増税論、他方では昔ながらの「税金=悪」的(野田佳彦河村たかし小沢一郎らが大好きな「民のかまど」を例に引く素朴な「反税金主義」とでもいうべきか)議論のいずれかかしか見られないに等しい現状のままでは、自民党政治はいつ果てるともなく続き、日本は衰退し続けるほかはないとの展望しか持てない*4今日この頃なのである。

*1:以前にも書いたように、1981年の日本シリーズ報道によって既に日刊ゲンダイへの不信感が芽生えてはいたが。

*2:http://www.jiji.com/jc/article?k=2016060100915&g=pol

*3:朝日新聞の社説は無記名だが、その手の論調の社説が載るたんびに、これは星浩が書いたのではないかと疑りながら読んでいたものだ。

*4:現に、安倍晋三は2012年の政権復帰以来、日本国民の「反税金主義」につけこんだ動きをしているようにしか見えない。