「異議を唱える者が絶え果てた『崩壊の時代』」(by 坂野潤治)に少しでも抗おうとは思っているものの、オバマの広島訪問を「よかった」とする者が98%(ついでに安倍内閣支持率が前回比7ポイント上昇55.3%)などとする共同通信の世論調査*1などを突きつけられるとさすがに、なんだ、俺は2%なのかよ、と戦意が萎え、キーボードを打つ意欲が著しく殺がれることは否めない。田中康夫のおおさか維新の会からの参院選東京選挙区出馬の話も知っていたが日記に取り上げる意欲が起きなかった。
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20160603/1464910236#c1464956121
id:pomme1919 2016/06/03 21:15
「なんとなくリベラル」のメッキがすっかりはげおちた田中康夫がなんとおおさか維新の会から東京選挙区に出馬だそうです。6人が当選する東京選挙区は自民2、民進2、公明1、共産1となる展開になるようです。自民は2人目の擁立に苦戦していると言われ、最後の1議席を巡り社民・おおさか維新・諸派などの混戦が予想されていますが、このままだと結局は自民が2議席目を獲得しそうです。ならば、小林節はここに立候補すればよいのにと思わずにいられません。
リベラル・左派からは田中康夫のお維からの立候補に驚愕の声があがっていますが、まだ彼に期待しているリベラルが結構多いのですね。私は2008年〜2009年の国籍法改正をめぐることや年越し派遣村を中傷した時点ですっかり見切りを付けていましたが。
リンクを張られた日刊スポーツの記事は下記。
http://www.nikkansports.com/general/news/1656704.html
田中康夫氏「日本変えられる」参院選出馬意思固める
[2016年6月2日6時8分]
元長野県知事で、衆院議員も務めた作家の田中康夫氏(60)が、7月の参院選で、おおさか維新の会から東京選挙区に出馬する意向を固めたことが1日、分かった。地域主権や既得権益の打破など、両者の理念は重なる。激戦の東京で、既存政党にあきたらない「ウルトラ無党派層」の支持を集めたい考えだ。知事時代から政治の透明性を主張。舛添要一知事の政治資金公私混同で都政が混乱する東京に、一石を投じる「参戦」にもなりそうだ。
田中氏は、日刊スポーツの取材に「同じ山の頂を目指す中で、違う登り方(手法)があってもいいのではないか。一緒に日本を変えていける場として、東京があると思う。その一翼を担えれば」と、話した。
(日刊スポーツより)
私が最初に田中康夫に疑問を抱いたのは2007年の東京都知事選でした。当時田中康夫を信頼していた私は、浅野史郎元宮城県知事よりも、田中康夫が出馬した方がもっと良いのではないかと思っていましたが、田中は当時根強かった出馬待望論を嘲笑するかのように、当時まだ放送していた田原総一朗司会の「サンデースペシャル」(テレビ朝日)に出演し、都知事選を肴にして櫻井よしこと何やら親しそうに談笑したのでした。私はこれに腹を立てました。さらに同年の参院選では、2005年の郵政総選挙に合わせて田中が郵政民営化法案に反対して自民党を追われた(石原慎太郎に近かった極右政治家の)小林興起らと語らって設立した「新党日本」から有田芳生らとともに比例代表に立候補し、結局田中だけ当選しましたが、この時にも私は「反自民・反安倍の票を分断する」として田中や有田らを批判する記事*2を書きました。
しかし、それでもこの時点では田中康夫に対しては評価半分、批判半分といったスタンスでした。ところが田中康夫は、ご指摘の通り「国籍法改正反対」で平沼赳夫や城内実らと共闘したり、年越し派遣村を誹謗中傷したり、さらには「反TPP」の名目があったとはいえ稲田朋美と意気投合したりと、極右色をどんどん強めていったので、現在では評価する部分はもはや皆無で、田中康夫といえば「敵」というイメージしかありませんでした。今回田中康夫のお維からの出馬を知って「驚愕」した人たちというのは、「小沢信者」ないし小沢一郎の支持者か、あるいはそこまでは行かずとも小沢への批判をあまり持たない人たちが、小沢に近いとされる田中康夫に対して「味方」という誤ったイメージを持っていたものではないかと想像します。
とはいえ、おおさか維新の会公認での出馬と聞いて、私も田中康夫には「極右」の印象は強く持っていたとはいえ「新自由主義」の印象は薄かったので、驚愕まではしませんでしたが、多少の意外感はありました。
しかし、検索語「田中康夫」で日記内検索をかけてみて、それが私のど忘れに基づく誤解であることを思い知らされました。下記は4年前に書いた記事の再掲です。
橋下が「経済左派」的な主張をしたことなど一度もない/田中康夫もひどいもんだ - kojitakenの日記(2012年5月30日)
「きまぐれな日々」に寄せられたコメントのうち、橋下の経済政策に関するもの。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1255.html#comment14520
橋下の場合、右翼っぽい言動をしたときと左翼っぽい言動をしたときのどちらで支持を集められるかを巧妙に計算しているように思えるのです。
「公務員は組合など作らず服務規程に従って入君が代を歌い、入れ墨などにうつつを抜かさず黙って仕事しろ」と言えば、右翼的な言動が支持されますし、「再分配はきっちりやる。ベーシックインカムだ」などと言って左翼的な支持も取り込もうとしています。
大阪市民全員に君が代斉唱を義務づければ猛反発を受けるでしょうが、相手が教職員だと認めてしまう、悲しいかなこれが日本の有権者のレベルです。
日本の政治家や評論家は新自由主義支持を明確に認めません。長谷川幸洋が「新自由主義者とレッテルを貼る人間は相手にしない」などと述べたように、ネオリベは自分がネオリベであることを指摘されるとすぐにキレます。こういう連中は日本でネオリベが支持されないことを知っているのです。
しかしネオリベは実に大衆迎合的で、ネオリベであることを見抜けない有権者の票をかっさらうのには長けています。橋下はまさしくそういうクズどもを凝縮したようなものです。
私はミルトン・フリードマンを支持しませんが、その主張の存在自体は認めます。彼は自分が新自由主義であることを認めた上で政策を語っているからです。
橋下も河村もみんなの党も「自分たちは新自由主義者である」と堂々と述べるべきですよ。肝心なことだけを隠しておいて、ポピュリズムで票だけは取ろうとする態度は卑怯というものです。2012.05.29 22:09 飛び入りの凡人
いうまでもないが、橋下が「経済左派」的な主張をしたことなど一度もない。橋下は「ベーシックインカム」を「再分配」と僭称するが、フラットタックスと組み合わされた橋下の「ベーシックインカム」は事実上ミルトン・フリードマンの「負の所得税」と同じであり、フリードマンは究極の「小さな政府」を目指すためにこの政策を考案した。「バサーット切る」が口癖の橋下は、フリードマン流を地で行っている。竹中平蔵でさえ所得税増税(累進制の強化)には賛成していることを考えると、橋下の「経済極右」ぶりは日本でも類を見ないほど過激なものだといえるだろう。そんな橋下が「再分配」という言葉を持ち出しただけで「橋下をネオリベときめつけるのは適切でない」というのは、あまりにもナイーブな見方だし、こんな橋下の言葉に騙されるようでは、「経済左派」はいつまで経っても伸びないだろう。
橋下の「右翼」ぶりが中途半端だ、あんなのは本当の「酷使様」ではないと怒る右翼人士が結構いることは、ネトウヨや西田昌司の実例からわかるが、「橋下の経済政策は再分配にも考慮しているから新自由主義者とは言えない」と主張する「経済右派」の論客を私は見たことがない。
という「飛び入りの凡人」さんのご意見はもっともだとは思うが、橋下だの河村だのみんなの党だのといったどぎつい「経済極右」に騙される人たちがあまりにも多い現状に、私は絶望を感じる。
なお、「ベーシックインカム」については、下記のコメントもいただいている。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1255.html#comment14500
そう言えば、生活保護に就いてかのベーシックインカム推進論者の旗頭・田中康夫がこんなこと言っていたんだな。
http://hamusoku.com/archives/2622402.html
「僕の選出選挙区に当たる尼崎市でも、平成19年4月の9095世帯、1万2776人が平成21年10月には1万823世帯、1万4910人。2割も増加し、ニャンと20軒に1軒が生活保護世帯」「職員85人をケースワーカーとして配属する尼崎市では、1人が127所帯も担当する状況です。一旦、受給開始した世帯が生活保護廃止に至る比率は毎年、全体の1割程度に留まるからです」「しかも、大半は死亡に伴う保護廃止。収入増を理由に生活保護から“脱却”する世帯は、尼崎でも全国でも10%前後なのです。何故でしょう?『働きたくても働けない』改め『働けるけど働きたくない』甘えを増長させる、至れり尽くせりな厚遇福祉制度だからです」
https://twitter.com/loveyassy/status/95152681076801537
「生活保護は殆ど全額国の交付税措置。総額313億円の尼崎市の負担は僅か3億円。平松市長は『虚言』?橋下知事も『支持団体』へ遠慮。生活保護には無反応?RT @mtomo0222 大阪市財政難の一つに生活保護費用が。本当に働けない人、新たな仕事先を探している人に限定の法律改正を宜しく。」
ベーシックインカム推進論者でも(新自由主義的な傾向には警戒すべきと一応言っている)比較的"良心的"な田中康夫チェンチェイについてさえ、この有様だったりするんだよね。これでベーシックインカムでも導入された暁には、更に保障や支援を求めようとすればゴネ得扱いにされ、BIだけで暮らしている人間はそれこそ肩身の狭い思いをするというディストピアしか想像出来ない。そのことを幾度もTwitterで指摘した途端、この種のネオリベバリバリな福祉「合理化」論者が少なからず存在していることを棚に上げて、ファナティックな推進論者が粘着して来るんだから・・・・・(嘆2012.05.28 21:42 杉山真大
はてなブックマーク - 生活保護は「働けるけど働きたくない」甘えを増長させる制度-田中康夫:ハムスター速報 より。buhikun 政治, 福祉, 生保
リベラル派と目されていたやすおちゃんが、国籍法→派遣村バッシングと来て、ついには2ちゃんねらのお友達に/財政再建原理主義のシバキ主義者と早く気づけよorz 2010/02/16
田中康夫の「国籍法改正」に関する妄言(あの城内実の "bakawashinanakyanaoranai" *3と同じ側に立っていた)や「派遣村バッシング」はもちろん覚えているが、生活保護に関するこの妄言は知らなかった。これは昨日今日の話ではなく、一昨年(2010年)に話題になったものらしい。すっかり「極右ネオリベラリスト」に変貌あそばされた康夫ちゃん*4をいまだに「リベラル」だと思っている人は結構いるのだろうし、そんな流れから橋下徹が現れ、片山さつきの芸人バッシングが現れ、小宮山洋子が片山に呼応するかのように「生活保護の水準引き下げ」を堂々と口にするに至ったんだろうなと思う。
そういえば思い出したが、田中康夫は「小沢信者」でもある。
そんなわけで、田中康夫は2010年にはもう「新自由主義者」とのレッテルを貼られても仕方ない発言をしていたのでした。そんな田中がいまさら「おおさか維新の会」公認で参院東京選挙区から出馬すると聞いて、それを多少なりとも意外と感じた私の方がうかつだったと思い直した今日この頃。