このところ「リベラル」批判にばかり傾きがちだが、安倍晋三がまだ大統領にもなっていないトランプに「謁見」を求めてそれが実現した「朝貢外交」には、古代の昔から中国に対して行ってきた行為を、21世紀になっても(相手こそ違え)繰り返しているのだなあと嘆息しないわけにはいかない。
また、それを報じる日本の保守(あるいは右翼)系マスコミもひどかった。たとえば『夕刊フジ』は安倍がトランプを「攻略」したなどと嬉しそうに書いていた。この夕刊紙は、トランプ当選の日に暴落した日経平均株価が翌日その下げ幅を上回る暴騰を見せた時にも鬼の首を取ったように喜んでいたので、やっぱり右翼は右翼が好きなんだなあと呆れたのだった。
まあ夕刊フジはその程度だろうが、目を覆うばかりだったのが日経で、TPP反対を掲げて大統領選に当選したトランプに翻意を促したに違いない安倍晋三の懇願が、あたかも実現可能性が高いかのような論調で記事を書いていた。
このあたりになると、日本の支配層に近い体制側メディアの頽廃もここまできたかと呆れるほかない。自分たちの都合しか考えておらず、トランプやその周辺、それにトランプを大統領に当選させたアメリカ社会に働く力を分析してトランプの出方を予測するという冷静な姿勢は全く見られず、ひたすら安倍政権にすり寄っているだけの怠惰で安易な紙面作りしかできていないのだ。
そうではなく、体制側メディアであればこそ、広い視野を持った論評が求められると思うのだが、日経の報道はそうではなく、ひたすら安倍晋三やその政権や官僚たちと一緒になってトランプに懇願しているかのようで、そんな程度の新聞を日本の「エリートビジネスマン」たちがありがたがっているかと思うと、この国の前途には限りなく暗い展望しか持てない。リーダーたちがこんなていたらくだから、七十数年前には気の狂ったような戦争を始めて、それをいつまでも止められなかったのだろうが、当時の指導層の世代から3世代ほどあとの現在になっても、この国のリーダーたちの心性には大きな変化は見られないようだ。
そこで「リベラル」の現状へのぼやきに戻るが、久々にネットを見渡してみても相変わらずの惨状だ。
まず本論に行く前に、小池百合子に熱中する「リベラル」について書いておくと、最近しばらく揶揄してなかった某「リベラル」のブログは、小池百合子に関して
何だかメディアの応援体勢も、ちょっと引き気味になっている感じもするのだけど。もっとメディアや都民、国民の後押しがないと、このまま押し込まれてしまうかも知れない。
などと書いていた*1。要するにもっとメディアは「『反・鮫脳(シンキロー)』に頑張る小池知事を応援し」てほしいと言っているわけで、今さらながらに開いた口が(以下略)。
小池及びその周辺に関しては、昨日コメントをやり取りしている最中にみつけた、「しんぶん赤旗」の記事を引用した日本共産党東京都委員会のサイトに掲載された挙げておく。小池(の側近)ばかりか、小池塾とやらの行使を断ったとかいう橋下徹の呆れた極右ぶりがうかがわれる記事だ。
小池都知事任命の野田特別秘書:都議時代に帝国憲法復活に賛成 – 日本共産党東京都委員会
by jcp-tokyo · 公開 2016年8月3日 · 更新済み 2016年8月31日
東京都の小池百合子知事は2日、特別秘書に元都議の野田数(かずさ)氏(42)を任命しました。特別秘書は知事が任命し、議会の同意は不要。専用の公用車がつきますが、都は特別秘書の給料額は「個人情報だ」として公開していません。野田氏は2009年に自民党で都議に当選しましたが、12年に離党し、橋下徹大阪市長(当時)と連携する「東京維新の会」を結成。12月の総選挙に「日本維新の会」(当時)から立候補し落選しました。
12年9月都議会で同氏は、「我々臣民としては、国民主権という傲慢(ごうまん)な思想を直ちに放棄」して、現行の日本国憲法を無効とし大日本帝国憲法の復活を求める時代錯誤の請願に紹介議員となり、賛成しました。(日本共産党、自民党、公明党、民主党などの反対で不採択)
また、9月議会一般質問で「日本政府や軍が『従軍慰安婦』なるものを、暴行・脅迫・拉致を行い強制連行した事実はない」、「正しい知識と正しい歴史観を東京都の子どもたちに教えるべきだ」と主張しました。
(「しんぶん赤旗」2016年8月3日付より)
「テレビはもっと小池知事を応援してよ」という意味の文章を書いた上記のブログ主は、当然ながら小泉純一郎に対する批判を最近はほとんど行っていない。しかし、「トランプはクリントンよりマシ」と言い出さないだけまだマシかもしれない。
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20161119/1479531039#c1479553068
id:mtcedar 2016/11/19 19:57
小泉に対してさえ脱原発人士だからと追及の手が鈍る"リベラル"も"リベラル"なら、トランプを早速親密ぶりをアピールする安倍も安倍だし、トランプを"良い右翼"だと賞賛する"古い左翼"も大概にせよと思いたくもなりますなぁ。
http://blogs.yahoo.co.jp/otsuki1936/32909127.html
俎上に挙げられた老物理学者・大槻義彦の記事は下記。
『悪い右翼』と『良い右翼?』
2016/11/19(土) 午前 9:04
安部*2総理は大統領選で当選したトランプのところにおしかけた。まだ正式な大統領になっていない人物との『首脳会談』だから異様、異常である。それというのも安部総理はことのほか不安なのだ。何がそんなに不安なのか?
それは日本に米軍基地が無くなり、アメリカの核の傘が消滅することだ。私がこの欄で『トランプさん、バンザイ』と叫んだそのものが安部には不安なのだ。沖縄から米軍が撤退してしまうことは安部閣下には許せないことなのだ。
そこで正式な大統領に就任前でもかまうものか、と意気込んで、安部のトランプ参りと相成った。この会談の『成果』とは何か?安部総理曰く『開襟の会談だった』と一言。さっぱり分からない。
明らかにトランプは右翼である。トランプ政権に指導者として入閣する面々が毎日のように報道されているがその中の人物は右翼、超右翼と知られた人物も多い。安部総理
も名だたる右翼を隠そうともしない。防衛大臣、文科省大臣、はてはNHK会長人事まで右翼のオトモダチではないか。
日本の右翼とアメリカの右翼、仲良くやれないはずがないのだ。しかし、安倍総理にはこれが不安なのだ。それは考えれば当然なのだ。右翼思想は根本的には『国粋主義』
である。逆に言えば『反グローバリズム』。自国の利益だけを追求、内に閉じた政治、経済。
日本の右翼自民、公明の政治家、平和憲法のもと、アジアの混乱も中東の混乱も『われ関せず』。朝鮮戦争もベトナム戦争もイスラエル戦争も見て見ぬふり。その限りで大
変結構な政治であった。
そこでこれからでも遅くない。アメリカ右翼も日本、韓国の支配からテを引き、NATOからも脱退。アメリカがこれまでやってきた世界支配の経費をすべて国内の富とし
てため込む。その限りで結構なことではないか。その意味でアメリカ トランプ政権は良い右翼。一方、そのアメリカからの『縁切り』にあわて、憲法改正して独自核兵器を
持とうとする日本右翼は『悪い』右翼。
相変わらずつまんないこと書いてますなあ。でも私はこの御仁を、狭いご自身の専門分野においてはもちろん一流の人なんだろうけれど、テレビに出てきて自然現象を何でもかんでもプラズマのせいにしてしまう言動が既に「トンデモ」だとみなしてますし、政治や経済について頓珍漢なことを書くのも、まあ自然現象に関してもアレな人だからなあ、としか思いません。
腹が立つのはやっぱり文系の人たちですね。いろいろ見渡してみると、最近ではすっかり影が薄くなった元痴漢・植草一秀がトランプ万歳を叫んでました。
反グローバリズムがトランプ新大統領を誕生させた: 植草一秀の『知られざる真実』(2016年11月9日)
反グローバリズムがトランプ新大統領を誕生させた
米国大統領選でトランプ候補が勝利した。(略)
米国を支配する巨大資本は、死に物狂いでクリントン当選を誘導したが、主権者はこうした巨大資本の誘導に抗(あらが)った。
主権者の勝利、レジスタンスの勝利である。
この選挙に際して、一貫してトランプ氏の当選見通しを提示し続けた副島隆彦氏の見事な洞察力が改めて輝きを放つ。
今回大統領選の最大の特徴は、マスメディアがクリントンへの投票誘導を全面的に展開したことである。
そして、もう一つの特徴は米国の主権者がこのメディア誘導を跳ねつけたことにある。
(略)
米大統領選の結果にもっとも強い衝撃を受けているのが安倍政権官邸である。
安倍首相は150%のスタンスでクリントン支持を示してしまっている。
トランプ大統領誕生で安倍政権は行き詰まる。
リスク管理の基本の基本を誤った結果である。
安倍晋三がまだ大統領に就任してもいないトランプを相手にさっそく「朝貢外交」をやってのけた時点で、早くも植草の予想はもののみごとに外れた。
また、上記引用文中で植草が副島隆彦を絶賛していることにも注目したい。
私はもう見たくもないので副島のそれでなくとも見づらいサイトは訪れなかったが、「きまぐれな日々」にいただいた下記コメントを思い出した。
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1454.html#comment19964
既成政治を(右から)ぶち壊す!
外人とか女とか障がい者に「配慮し過ぎた」から偉大な我が国は衰退したのだ!
と叫ぶタイプのポピュリストがお好きな人は海外にもいたのだなあ、世も末だなあ、という感想しかありませんね。
小沢関連で言えば、もちろん小沢を持ち上げてる連中はトランプ支持、ヒラリーよりマシを連呼している。
「エスタブリッシュメントやネオコンやユダヤ人との戦い」などと息巻いてる連中(リチャードコシミズや副島)などもトランプの勝利で世界は救われたとか言ってますね。こういうタイプの馬鹿たれもトランプ勝利にわいてますし、高確率で小沢や山本の支持者。
アメリカも病んでますが、日本なんか反自民反安倍の「リベラル」ですらこうした有様ですし、アメリカ以上にお先真っ暗だと感じます。
2016.11.14 21:48 竹下
副島隆彦というのは、小沢一郎の政治資金集めパーティーで「ティーパーティー」を宣伝していた男だ。
- 小沢一郎の資金集めパーティーで「茶会」を宣伝していた副島隆彦 - kojitakenの日記(2011年8月21日)
また、副島の下記の行状も記録したことがある。
副島やその弟子筋の中田安彦(「アルルの男・ヒロシ」)は、小沢一郎を日本版ティーパーティーのリーダーに担ぎ上げようとしていた「リバタリアン」に属する人たちである。
一方、トランプはティーパーティーの支持を受けて大統領選を勝ち抜いた。
- 米保守派ティーパーティー、トランプ氏支持を表明 - WSJ(2016年9月23日)
米保守派ティーパーティー、トランプ氏支持を表明
反クリントン氏の決意がトランプ氏への疑念を克服
By ALLISON KITE
2016 年 9 月 23 日 09:43 JST
米保守派の草の根運動「ティーパーティー(茶会)」系で著名な団体の一つが、共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏を支持すると表明した。この団体はこれまで、トランプ氏が真の保守主義者であるかや、同団体の活動理念への関心度合いについて疑念の目を向けていた。民主党候補のヒラリー・クリントン氏をホワイトハウスに近づけまいとする決意がこうした疑念を克服した格好だ。ティーパーティー運動の一環として財政的に責任ある活動を提言する政治団体「ティーパーティー・パトリオッツ」が設立したスーパーPAC(政治資金団体)の「ティーパーティー・パトリオッツ・シチズンズ・ファンド」は22日、トランプ氏と共和党上院議員候補のために、選挙結果を左右する重要な激戦州にボランティアの活動要員を派遣すると発表した。
同団体でチェアマンを務めるジェニー・ベス・マーティン氏は声明の中で、「ヒラリー・クリントンはティーパーティーが象徴する全てのことと対立している。政策、政治、私人としてのあらゆる面でだ」と述べた。「一方、ドナルド・トランプはわれわれが核としている価値観を守るために戦うと約束した。この2人から選ぶとすれば、選択肢などないも同然だ。われわれはトランプを選ぶ」
少なくとも今年5月までは、マーティン氏をはじめとするティーパーティー系の指導者らはトランプ氏の出馬を冷ややかに受け止めていた。トランプ氏が大統領には強い権力を持たせるべきだと確信していることや、保守派が重視している問題に対する順応力が同氏にあるかどうか、また財政赤字が膨らみかねない政策案を打ち出していることに懸念を抱いていたためだ。
マーティン氏は5月、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し、「トランプ運動とはつまり、トランプ氏についてのことでしかない。われわれは主義に基づいている」と述べた。
だが、クリントン氏との二者択一に直面し、マーティン氏の団体はトランプ氏を選んだ。マーティン氏は声明で、「単純な事実はこうだ。上下院で共和党が多数派を占め、ドナルド・トランプがホワイトハウスに入れば、ティーパーティーのメンバーと支持者が好む政策案が法制化される可能性がはるかに高まる」と述べた。
一方、「リバタリアン」を自他ともに認める副島隆彦や中田安彦はもちろん、植草一秀の本職は「スリーネーションズリサーチ」という投資コンサルティング会社の社長だ。
つまりトランプもティーパーティーも副島隆彦も植草一秀も、みな富裕層の利害を代表する立場の人間だ。
そんな人たちの思惑に「小沢信者」たちや、それに引っ張られた「リベラル」たちが乗っかってしまっているのが今の日本の喜劇的な状態といえる。
ここまで書いてきて、さすがにあほらしくなってきた。