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病気は「自己責任」か 小泉進次郎氏ら自民グループ「健康ゴールド免許」提言の波紋(毎日)

今日(11/28)の毎日新聞夕刊の「特集ワイド」に載った記事は、父親譲りの過激な新自由主義者小泉進次郎の本性を焙り出したものといえる。

http://mainichi.jp/articles/20161128/dde/012/010/003000c

特集ワイド
病気は「自己責任」か 小泉進次郎氏ら自民グループ「健康ゴールド免許」提言の波紋

毎日新聞2016年11月28日 東京夕刊

 健康管理をきちんとした人は医療費を割り引きます−−。小泉進次郎衆院議員が実質的に仕切る自民党小委員会が10月、「健康ゴールド免許」なる新たな制度の導入を提言した。優良運転者に与えられる「ゴールド免許証」の“医療介護版”というが、患者団体からは「病気は自己責任?」と根本から疑問を投げかける声が出ている。何が問題なのか−−。【小林祥晃

 「予防に努力した人と努力しない人を分けて、医療費負担額に差をつける? それでは病気になった人への制裁ですよ」。「認知症の人と家族の会」代表理事の高見国生さん(73)は、こう言って「健康ゴールド免許には反対です」と話した。ネット上では、今年9月に「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!」と男性フリーアナウンサーが主張した問題と絡め、「同じ考え方をきれいに表現しただけでは」と指摘する意見も目立った。

 提言したのは、今年2月に設置された自民党の「2020年以降の経済財政構想小委員会」。茂木敏充政調会長直属の「財政再建特命委員会」の下部組織で、政府の社会保障改革の工程表が射程に入れていない、20年以降の財政のあり方を議論してきた。若い世代へのアピールを意識し、メンバーの約20人は当選3回以下の若手。発足時に事務局長を務めた小泉氏(現在は委員長代行)が人選し、提言とりまとめで中心的役割を果たしたとされる。

 健康ゴールド免許は、小委が10月26日に発表した提言「人生100年時代の社会保障へ」の3本柱の一つ。茂木政調会長は「野心的な内容」と評価しており、政府・与党の政策論議に反映される可能性はある。

 提言が自己責任論と受けとめられ、批判が上がっていることについて小委員会事務局長を務める村井英樹衆院議員は「自己責任とは全く考えていない。誤解です。頑張った人の負担を下げることは、そうでない人にペナルティーを科す意味でもありません。自助努力が難しい方には配慮が必要だと考えていますし、全体を読めば分かってもらえるはずですが……」と話す。

 しかし、格差社会での受益や負担のあり方を発言している井手英策・慶応大教授(財政学)は「『中流』から転落しないようにと多くの人が必死になっている格差社会では、自己責任論が広がりやすい。そんな状況で努力した人・しない人と区別する政策は、社会のさらなる分断を招きかねない」と懸念する。

 前出の高見さんも「病気になるリスクを区分して負担が変わるというのでは民間保険と同じ。そんな論理を持ち込んだら公的な保険制度が成り立たない」と指摘し「医療保険を運営する側の政府・与党が保険を使っている人と使っていない人を対立させるような提言をするのは疑問」と語る。

 ゴールド免許は「無事故無違反」の実績に対して与えられる。では、健康ゴールド免許では「健康管理に努力した、しなかった」を、何を基準に判断するのか。

 小委は「あくまで構想段階で、細かな制度設計は導入が決まってからの話」としながらも、例として「健康診断を継続的に受けたり、禁煙を続けたりしていること」などを挙げ「努力した人の負担を現行の3割から、例えば2割にする」と説明している。また、その前提として「生活習慣病、がん、認知症」は、健康管理次第で「予防や進行の抑制が可能なものも多い」という認識を示している。提言の説明資料には「健康管理に努力した人が報われる医療介護へ」というキャッチコピーも書かれていた。

 しかし、腎臓病の患者団体の関係者は「同じ食事、同じ生活でも、病気になる人もいればならない人もいる。仕事で酒の席が多い人もいる。自己管理ができないから病気になるわけではない」と首をかしげる

 提言は、膨張し続ける社会保障費に対する現役世代の危機感の表れでもある。村井議員は「もし医療保険財政が破綻したら、医療を必要とする患者さんが一番困る。今の医療制度は維持しなければいけない。そのためにも、今後は皆で病気予防に努めることが重要です。決して『医療費削減ありき』ではありませんが、自助を促すインセンティブは、医療を守るために必要なのです」と力説する。

 しかし、前出の井手さんは「それでは財政の存在理由がなくなる」と批判し、次のように解説する。

 「財政は、医療や教育、道路や河川の整備、消防、警察など、誰もが受益者となる事業の費用を共同で負担するためにあります。これらは『自助』では成り立ちません。それをやるために人間は国家や政府をつくり、財政を発達させてきた。経済学者の故宇沢弘文さん(東大名誉教授)の言う『社会的共通資本』のためにこそ財政があるのです」

 ノーベル賞に最も近い日本人経済学者と称された宇沢さんは「人間が生きる上での基盤となる医療や教育、司法、自然環境などは市場原理に委ねられない」という「社会的共通資本」という考え方を提唱した。井手さんは「頑張った分だけ報われる市場原理的な正義は否定しませんが、それは唯一の正義ではありません。格差が広がり過ぎた時に是正するのも正義です。二つの正義を両立させ、頑張りたい人は誰もが頑張れるよう、基盤を整えることが大事です」。

 宇沢さんの思想を講演などで伝えている長女で内科医の占部まりさんは、医師の立場から「今は、患者がホームレスであろうとお金持ちであろうと、ほぼ平等に医療を受けられる。それは医療が社会的共通資本として守られているから。この制度は破綻させないでほしい」と話す。その上で「誰もが病気になりたくないと思っていますが、健康にいいことだけをして生きるのも難しい。ですから、金銭的なインセンティブのみで医療のコストが減らせるとは思えません。皆が心身ともに健康に暮らせるような施策を進め、医療費が削減されるのが理想です」と語る。

 11月上旬、国会で本会議終了後の小泉氏に健康ゴールド免許に対する批判について尋ねると、即答した。「最近、社会保障改革は議論が盛り上がっていないよね。これを機に国民的議論になったらいい。賛否両論上がるのは大歓迎ですよ」

 では、もっと議論を深めようじゃないか。国の医療制度維持のために、国民が分断される。提言はそんな結果を招くのではないか。

提言の概要

▽中長期的に医療介護制度の持続可能性を担保するためには、「病気にならないようにする」自助努力を支援していく必要がある。

▽医療介護費用の多くは、生活習慣病、がん、認知症への対応。これらは、健康管理を徹底すれば、予防や進行の抑制が可能なものも多い。

▽現行制度では、自助を促すインセンティブが十分とは言えない。今後は、健康診断を徹底し、早い段階から保健指導を受けていただく。健康維持に取り組んできた方が病気になった場合は自己負担を低くする。

▽運転免許証では優良運転者に「ゴールド免許」が与えられる。医療介護版の「ゴールド免許」を作り、自己負担額を低く設定することで、自助を支援すべきだ。もちろん、自助で対応できない方には、きめ細かく対応する必要がある。

 *自民党「2020年以降の経済財政構想小委員会」の提言より抜粋

毎日新聞より)

最近前原誠司のブレーンになった井手英策のコメントが出ているが、そういや井手氏は故宇沢弘文(後期)の孫弟子に当たるんだったな。「共助」への傾斜が強い点が懸念される井手氏だけれど、この記事でのコメントは無難だ、というより小泉進次郎らがひど過ぎる。

こいつやこいつの親父の悪口が言えなくなった、いまどきの括弧付きの「リベラル」は、こいつや親父の言動を直視して、そんなやつらになびくおのれのふがいなさを猛省してもらいたいものだ。