kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

日馬富士の暴力沙汰は言語道断だが貴乃花にも排外主義が懸念される

相撲の暴力沙汰、具体的には元横綱日馬富士(既に引退し、巨額の退職金を手にするらしい)が同じモンゴル出身力士の貴ノ岩をリンチしたらしい件、これまで何も書かなかったが関心がなかったわけではない。

ただ、この件に言及するとなると、どうしても昔(1982年)、千代の富士(故人)が北天佑(同)の弟をリンチした一件が「おとがめなし」に終わった一件を思い出さずにはいられず、これに言及すると長くなる。八百長についても、千代の富士の疑惑は長年週刊誌(最初はポスト、のち現代も参戦)に追及され続けてきたが、数年前に八百長力士らが物証をつかまれるまでは、ずっと誰に対してもおとがめなしだった。

貴乃花についても、1994年に横綱に昇進した時の口上に用いた四文字熟語の「不惜身命(ふしゃくしんみょう)」*1に悪態をつきたくなる気持ちを抑えられない。

要するに私は、モンゴル出身力士を中心としたグループの腐敗(暴力沙汰のほか八百長疑惑もある)は問題だし日馬富士の暴力沙汰は言語道断だが、それを招いたのは長年の相撲協会と日本人力士たちのグループのあり方を容認・放置してきた「悪しき惰性」だろうと強く思う。それを無視して、今になってモンゴル出身力士集団への非難の大合唱に加わる気になど「さらさら」ならなかった次第。

下記記事を読んで、つい上記のような繰り言を発してしまった。

貴乃花親方の協会不信は分かるし白鵬の言動もおかしい。しかし国家主義や反モンゴル主義に騒動が回収されては不味い : 広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)(2017年12月1日)

貴乃花親方の協会不信は分かるし白鵬の言動もおかしい。しかし国家主義や反モンゴル主義に騒動が回収されては不味い


貴乃花親方の行動は「協会不信」ということで、説明が付く。だから協会ではなく、警察に被害届を出した。
日本相撲協会は、八百長をなくす気も陰湿な暴力体質をなくす気もないのではないか?
そういう不信感はよくわかる。
八百長や暴力をなくすというテーゼにだけなら貴乃花親方を支持できる。
学校、会社、政治含め、日本社会全体が、こういう悪しきムラ社会的なものは打破しないといけないと思う。
白鵬は「貴乃花巡業部長の巡業には行きたくない」と発言したという。また、優勝インタビューでの行動も「自分が暴行現場にいた当事者」とはとても思えない。
ただ、気になるのは次の2点。
1,貴乃花親方が「日本国体を担う相撲道の精神」などと発言されていること。
2,ネット上で、「以前は韓国(または中国またはアメリカ)は嫌いでもモンゴルは好き」という層が雪崩を打ってモンゴルバッシングに走っている傾向が見えること。


1,については、腐敗への怒りの勢い余って、「天誅!」に走った青年将校のような危うさを感じる。「国体」というのは「国民体育大会」ではなく、国のあり方、それも戦後の「基本的人権の尊重、国民主権、平和主義」を三本柱とした「国体」ではなく、基本的には戦前の国のあり方のことだからだ。今後、「反腐敗」「反ムラ社会」的なものを指向する流れが貴乃花親方を通じて「国家主義的」なものへ回収される危険は頭の片隅に入れておいた方が良い。


2,については、今の国際情勢を考えると日本の国際的孤立にもつながりかねないと思う。ちなみにモンゴルは1カ国で非核地帯を宣言している国だ。むしろ、この非核地帯に日本も南北朝鮮も入れてもらうという方向の外交を考えたいときに、日蒙関係の悪化は避けたいと思う。
八百長も陰湿ないじめも相撲ではモンゴル勢が確かに中心的だが(番付が上の人が多いからそうなる)、一般社会ではほかでもない日本人がそういうことをやっている。そのことへの反省もなく、モンゴルバッシングに走ればしっぺ返しを食らう。


相撲はいまや、世界に広がっている。女性で相撲をやる人も東欧を中心に増えている。
国家主義や、モンゴルバッシングに回収されることなく、近代スポーツとして相撲が発展することを、心から願いたい。


そりゃ「不惜身命」なんて言う奴なら簡単に「日本国体を担う相撲道の精神」と言い出しかねないよなあ、と思った。

よって、モンゴル出身力士集団の腐敗は問題だが、かといって貴乃花親方に肩入れする気になど到底なれない。

ことに「モンゴルバッシングに回収」なんかされた日にはどうしようもない。

日本の排外主義的右翼ばかりか、彼らに煽動された日本国民の多くは、いまにモンゴルも台湾もベトナムも全部敵に回してしまいかねない。それは、収縮・衰退期の国の国民が犯しがちな誤りだ。あろうことにそんな風潮を煽りかねないのが安倍政権や自民党やその他の右寄りの政党だ(希望の党自由党もそれに含まれ得る)と私は考えている。

そういえば昔、ネット仲間と忘年会を両国のモンゴル料理店でやったことがあった。あの店に、その年の夏場所に37歳で優勝した旭天鵬(現大島親方)がいたっけな。「崩壊の時代」が始まった、と坂野潤治が断定した衆議院選挙が終わったばかりの2012年12月のことだった。

*1:なんでも貴乃花はこの言葉を緒形拳(故人)に教えてもらったらしい。http://nozawa22.cocolog-nifty.com/nozawa22/2008/10/post-c058.html(2008年10月10日))参照。