kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

投資会社も認める「『Japan is Cheap』という異常」

私がかつて、経団連の役員を輩出ならぬ排出するような大企業に勤めていたので、1995年の日経連による「新時代の日本的経営」が発表される前から、一部の部署で裁量労働制を導入するなどしていた。その後、大々的に成果主義を導入するなどしたが、現在どうなっているかはこの会社を辞めて久しいので知らない。

90年代半ば頃、特に印象に残っているのは、誰かが「要するに会社は社員の給料を下げたいんだよ」と言っていたことだ。この言葉は、単に私が務めていた会社のみならず、日本の多くの企業に当てはまる。今年に入ってからだったと思うが、「過労デフレ」とは言い得て妙だと思った。そういえば前世紀末、私の務めていた企業のさる部署で、単身赴任で月間200時間以上の残業をしたあげくに病気で倒れてしまって障害が残ったのに、その部署の社員たちには「都合により出向元に帰ってもらった」としか伝えられなかったことがあった。私の出張先の関連部署の話で、関係の近い人に聞いた話だから真偽は100%間違いない。このような無法がまかり通っていたのが(おそらくその体質は今も変わっていないだろう)、日本の「大企業」なのだ。なお、上記の無法きわなりない上司は、業者と癒着して社の事業を毀損したあげくに事業の頓挫が見えてきた段階になって会社を辞めたが、それは単なる自己都合退職に過ぎず、何らの懲戒処分を受けなかった。ましてや出向者を過労による発病と障害に追い込んだ責任など何も取っていない。

こういう企業の従業員に対する暴挙を、長年日本政府というか自民党政権は甘やかしてきた。また日本国民も我慢し続けてきた。今年に入ってから、安倍政権は「働かせ方改悪」の一つである「高プロ」を法制化し、それに対して日本国民は先般までの安倍内閣支持率上昇で応えた(さすがに最近では内閣支持率はやや下落基調に転じているが)。マゾヒズムの極致としか言いようがあるまい。

日本企業の無能な経営陣が従業員を搾取し続けた結果生まれたのが、「ジャパンイズチープ(Japan is cheap)」の現状だということだ。

下記は昨日(10月17日)付の『広島瀬戸内新聞ニュース』*1に引用された今年9月7日付の「バフェット・クラブの金言」というサイトのコラム。今の日本は、投資会社からも下記のように見られているということだ。

https://www.sparx.jp/buffettclub/column/14.html

「Japan is Cheap」という異常
2018/09/07

先週のバフェットクラブ、「カタリスト(触媒)を探せ」の最後で、「異常なことは続かない」という言葉を紹介しました。そこで今回は、私が長く「異常」だと思い続け、繰り返し社内で話している「Japan is Cheap」という言葉を、ご紹介させていただきます。

エポックメイキングだった宅配便の値上げ

昨年度、宅配便会社が約30年振りに次々に値上げを発表しました。このときの驚きは、今も忘れることができません。値上げのきっかけは、業界大手のヤマトホールディングスで賃金未払い問題が起きているという報道でした。

国土交通省の統計によれば、宅配便の個数は、バブルの頃に比べて、3倍以上増加しています。反して、従業員の労働環境は厳しくなる一方であり、労働の対価である賃金さえもないがしろにされてきたということになります。

日本に住んでいるのであれば、宅配便サービスを利用したことがないという人は極めて稀でしょう。不在時でも無料の再配達サービスがあること、その再配達時間まで細かく指定できること、常温だけでなく保冷状態で宅配してくれることなどサービスは至れり尽くせりです。

さらには、街で見かけると配達員さんが挨拶をしてくれることもあります。こうしたサービスを廉価で受けることができるのは、おそらく日本だけでしょう。

利用者は、いつの間にかこれが当たり前だと思っていましたが、実はそれが「異常」であったということで、いま価格の見直しが行われるプロセスに入ったと私は考えています。

チョコレートも安い日本

20年近いデフレを経験した日本には、このような「異常」がまだまだ沢山見られます。これもずっと申し上げていることですが、日本ではチョコレートの価格も非常に安くなっています。

ここ数年、スパークスを訪れるお客様や知人に、ゴディバと森永製菓のチョコレートのブラインドテストをしてもらいました。ほぼ同じ形をしたチョコなので、包装紙をとると見わけがつきません。

そして、「どちらがおいしいか」と聞くと、大体、半分がゴディバ、半分が森永と答えます。実は、この2つの商品のグラムあたりの価格を比べると、ゴディバの方が約8倍高いのです。

これまで学んできたバフェットさんやマンガーさん流にいえば、「ゴディバにブランド力がある」という話になるのかもしれません。菓子業界も、品質と価格のギャップが大きすぎるという認識を共有しており、新しい価値、例えば、機能性を訴求する商品などを市場に投入し、値上げに取り組もうとしています。

財布の紐が固い消費者を相手に、新しい価値を提供することを価格に転嫁しながら、実質的な値上げを図っています。

賃上げによる日本型資本主義を

日本経済が長期的に膠着状態に陥っているのは、日本の賃金がなかなか上がらないこともひとつの要因です。アベノミクスの恩恵を受けた企業の業績は好調で、企業が過去最高の現預金や内部留保を持つなかで、日本の労働分配率は米英独仏といった先進国に比べて低いままでした。一般国民の賃金上昇なくして持続的な成長はないと数年前から申し上げてきたのは、こうした理由からです。

幸い明るい兆しも出てきています。日銀が毎月発表しているサービス価格指数の推移をみると、冒頭申し上げた宅配便などの運輸業がけん引する形で指数が上昇基調にあります。今年夏・冬のボーナスも上昇基調にあり、平均年収も3%ほど増加すると予想されています。

この確率は消費者物価指数(いわゆる物価)の上昇を上回るようになってきています。最低賃金を引き上げる自治体も相次いでいて、企業から一般国民への富の分配気運も高まってきました。

政府も実質賃金の上昇を促すような減税を今こそ実施するべきではないかと思います。企業がさらなる賃上げを考えるような税制面でのインセンティブ政策を打ち出せば、さらにこの流れが加速するのではないでしょうか。

スパークスのコーポレートミッション「世界を豊かに、健康に、そして幸せにする」の実現のために、私たちも投資会社として、長いデフレという「異常」からの脱却に向けて、少しでも貢献したいと考えています。

( COLUMN / バフェット・クラブの金言 2018年9月7日)


上記は投資会社のコラムだから安倍政権の経済政策に対する見方は大甘であって、なんとかのミクスなるこの日記の「禁句」を用いているにとどまらず、たとえば政権がデフレを止めるどころか「過労デフレ」を悪化させることにしかならない「高プロ」を法制化したり、自滅して失敗したとはいえ裁量労働制の業務対象範囲を企図したりしたことなどへの批判は一切書かれていない。こういった問題点が少なからずあるコラムだと思うが、長年のデフレが「『Japan is Cheap』という異常」を招いたという指摘は正しい。

思えば、この日記のコメント欄にも数年前、「貧乏人にとってデフレはありがたい」などと書いた年収自慢の「リベラル」が現れた。コテンパンにけなしてやったら、その後来なくなったが。

前回の記事(「ジャパンイズチープ」に落ちぶれてしまった日本経済 - kojitakenの日記)にも、コメント欄に「中国の最低賃金(月給)いくらか知らないんだろう。」と書いてきた愚か者がいた*2。そりゃ中国は貧富の差が極端に激しい階級社会だから低所得層の給料は安いに決まっているが、誰が中国の話なんかした。この人間の度し難い奴隷根性には、激しい軽侮の念以外の何も感じない。なお、この人間はかつて共産党支持者だったが右翼に転向したらしい。

安倍政権ともども、こういう「年収自慢の『リベラル』」や「奴隷根性の『転向者』」たちが、この国を悪くし続けているということだ。