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カルロス・ゴーンを逮捕

このニュースには驚いた。あの悪名高き「コストカッター」カルロス・ゴーンが逮捕された。

日産ゴーン会長ら2人逮捕 東京地検、金商法違反容疑 :日本経済新聞

日産ゴーン会長ら2人逮捕 東京地検、金商法違反容疑
2018/11/19 18:10 (2018/11/19 20:11更新)

東京地検特捜部は19日、仏ルノー日産自動車三菱自動車の会長を兼務するカルロス・ゴーン容疑者(64)ら2人を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕した。ゴーン会長は自身の報酬を過少に申告した疑いを持たれている。日産は同日、ゴーン氏に「複数の重大な不正行為」が認められたとし、ゴーン氏の会長職などを解くことを取締役会で提案すると発表した。

ゴーン氏が刑事訴追された場合、経営責任を問われるのは必至。販売台数で世界2位を誇るルノー・日産・三菱自連合にとって大打撃となりそうだ。

地検特捜部は19日、関係先として横浜市の日産本社などを家宅捜索した。

関係者によると、自宅の購入代金などを同社側に全額負担させる一方、報酬として計上していない疑いがあるとして地検特捜部に日産の関係者が相談していた。同社側が負担した金額は数十億円に上るとみられる。こうした不正には日産の代表取締役のグレッグ・ケリー氏も関与していたという。

3社の有価証券報告書などによると、ゴーン氏は2017年度、日産から7億3500万円、三菱自から2億2700万円、ルノーから740万ユーロ(約9億5千万円)の役員報酬を受けている。

日産は19日、内部通報を受け、数カ月間にわたって内部調査を進めていたことを明らかにした。開示されるゴーン氏の報酬額を少なくするため、長年にわたり、実際の報酬額よりも少ない金額を有価証券報告書に記載していたことが判明したという。

ゴーン氏については日産の資金を私的に支出するなどの複数の重大な不正行為が認められ、ケリー氏がそれらに深く関与していることも分かったとしている。

日産は「これまで検察当局に情報を提供するとともに、当局の捜査に全面的に協力してまいりましたし、引き続き今後も協力してまいる所存です。株主の皆様をはじめとする関係者に多大なご迷惑とご心配をおかけしますことを、深くおわび申し上げます」などとするコメントを発表した。

カルロス・ゴーン氏は1954年にブラジルで生まれ、78年にミシュランに入社した。85年にブラジルミシュラン社長に就いた後、89年には北米ミシュラン社長に就任。96年にルノーに入社し、副社長に就いた。

99年、販売不振などで経営危機に陥っていた日産の筆頭株主になったルノーから日産に派遣された。同年10月、3年間で1兆円のコスト削減などを柱とする日産リバイバルプランを公表し、その後、日産の業績はV字回復。2000年に日産の社長に就いた。01年に最高経営責任者(CEO)となった。17年にCEOは退任した。

16年には、三菱自の燃費不正問題をきっかけに日産が三菱自に出資し、ゴーン氏は三菱自の会長に就いた。

日本経済新聞より)

カルロス・ゴーンとは、特に日本においてはグローバル資本の象徴のような存在だった。

この男が日産にやってきた1999年は、それこそ当時流行の全盛を極めていた新自由主義思想が、まだたいした批判を受けていなかった頃であり、竹中平蔵田原総一朗司会のテレビ番組ででかい顔をして得意げにしゃべり、のち「和製英語」であることが広く知られるようになった「グローバル・スタンダード」なる言葉がマジックワードとして通用していた。そんな時代の惰性力が、2001年に小泉純一郎内閣という稀代の新自由主義政権を生み出し、それが高い支持率を誇るという悪夢のような21世紀の幕開けをもたらした。その弊害は現在も続いており、今や共産党までもが新潟県知事選に「野党共闘」の候補を応援にやってきた小泉を「熱烈歓迎」する醜態を演じるようになった。世の中を動かす最大の力である「惰性力」の恐ろしさを痛感する。

そんな時代の象徴ともいうべきゴーンが、苛烈なリストラを主導していながら自らが私利私欲に起因する犯罪行為の容疑で逮捕された。これは政治のみならず経済(経営)の世界においても、権力は必ず腐敗することを示す例であるとともに、新自由主義経済思想が根本的に間違っている*1ことをはっきり示すものだと思う。

それにしても、日産に送り込まれて19年も経った今になってゴーンが逮捕されようとは夢想だにしなかった。「平成」の終わりなどどうでも良いが、時代の転換点にさしかかったのかもしれない。

呆れるのは、このニュースまでをも「スピン」だという、いつもの「小沢信者」系陰謀論者たちだ。その代表格はおなじみ田中龍作である。


さしものこたつぬこ(木下ちがや)氏でさえ田中を批判した。

https://twitter.com/sangituyama/status/1064509492002320385

また変な陰謀論が...

田中龍作ジャーナル | またスピン、ゴーン会長逮捕 入管法改悪の目くらまし

5:23 - 2018年11月19日


https://twitter.com/sangituyama/status/1064515918674321413

この事件、陰謀でもなんでもなく、ゴーン会長の長年にわたる独断的かつ特権的な支配に対して、日産社内からも怒りがあがっていたことに起因するんでしょう。あれだけ冷酷な労働者の首切りをやりながら、自分は莫大な不正蓄財をやっていた。グローバル資本家への怒りが爆発したんですよ。

5:49 - 2018年11月19日


まあ田中龍作を代表とする「小沢信者」どもは、教祖が小池百合子とつるもうが橋下徹とつるもうが一切お咎めなしなのだから、基本的にグローバリズムだの新自由主義だのへの批判的視座など持ち合わせがないのだろう(そもそも、小沢一郎自体「元祖ネオリベ」のような人間だ)。だから十八番の陰謀論を開陳するしか能がない。

もちろん、原因としてではなく結果として、安倍晋三自民党がゴーン逮捕の機に乗じてとっとと強行採決しちまえ、と考えてそれを実行する可能性は高いが、それはそれとして批判すれば良いだけの話だ。なにかといえば脊髄反射的に「スピンだ」と言い出しては世の信用を失って失笑を買うばかりの田中龍作ら「小沢信者」どもは、それこそリベラル・左派の側からきっちり批判して、彼らの影響力を無化しなければなるまい。

それができないからいつまでも負け続けるのだ。

*1:民主集中制と同じくらい間違いだ、と言いたい。