「薔薇マークキャンペーン」が下記のツイートを発信した。
薔薇マークキャンペーンが目指す"反緊縮"の経済政策のイメージ図です。
— 薔薇マークキャンペーン (@the_rose_mark) May 8, 2019
詳しくは、こちらを。
【薔薇マークキャンペーン×マガジン9】考えよう、経済のこと。松尾匡さんに聞く「反緊縮」ってなんですか?(その1)社会福祉分野に、大胆な公金支出をhttps://t.co/6dBlRwrJkC pic.twitter.com/As7TKfGUaa
私はずっと、この「薔薇マークキャンペーン」というのは金融政策ではなく財政政策のキャンペーンなのだと思っていたが、上記ツイートに描かれた漫画はそれをはっきり示すものだろう。
だが、このキャンペーンには発信のやり方に問題があるともずっと思っていた。政治関係の意見を発信するツイートを眺めていると、金融緩和やデフレのキャンペーンであると思い込んでいる人間が多数いるし、そういう人たちはよく、「共産党は異次元の金融緩和に党として反対しているのに、なぜ『薔薇マークキャンペーン』は共産党候補を推薦するのか」と言っている。これは、「薔薇マークキャンペーン」の発信者の側が、自らのキャンペーンの性格が正しく伝わるような発信をしていないことに問題がある。
また、小沢一郎系の山本太郎(国民民主党には加わらなかった)が松尾匡に心酔していることもあって、上記ツイートからリンクされた下記記事にも山本太郎への言及がある。
ところが、山本太郎が絶対に批判しようとしない小沢一郎は、かつて直間比率(直接税と間接税の比率)を「是正」して、直接税を大減税して消費税を大増税するという主張を長年にわたって展開していた。それは小沢が民主党代表になったあとの2006年までは間違いなく続いていたし、その後も小沢は、直接税の大減税を売りにした河村たかしの「減税日本」を大々的にバックアップした。小沢の長年の主張については、たとえば新自由主義者の音喜多駿が2012年に小沢に言及した新自由主義者の音喜多駿が書いた記事がネット検索で引っかかる。
以下音喜多の記事から引用する。
日本改造計画 / 小沢一郎著
http://amzn.to/Jop25G彼の代表的な著作でして、政治家としての彼の思想は
ここに概ね書いてあると思って良いでしょう。一節によると、日本の政治を学ぶ教科書として
アメリカの大学の授業でも取り上げられてるとか…ホントかよ?
そんなに面白く…ゴホンゴホン!さて、著作の中から彼の代表的な主張を
いくつか取り上げてみるとこんな感じになります。■
・新自由主義(規制緩和による経済改革)
・日米同盟重視(アメリカとの協調路線)
・国連中心主義(積極的な自衛隊の海外派遣)・自由貿易(ただし、ブロック経済型の一部自由貿易には反対)
・二大政党制(小選挙区制度の導入による政治・選挙制度改革)
・消費増税による税制改革(代わりに法人税、所得税を下げて直間比率を是正)etc..
■
特にこれらの主張の核となっているのは、一番最初に挙げた新自由主義でしょう。
著作の中のまえがきでは、「アメリカのグランドキャニオンには(観光客の安全のための)柵がない」
ということを例に挙げ、続く本論の中でも日本社会がいかに過保護に守られているか、
規制が多すぎるかに触れ、規制緩和・民間の競争による経済活性化を訴えています。
直接そういう表現はしていませんが、かなり「小さな政府」思考であると言えるでしょう。
上記は、何も小沢の自民党時代にとどまらず、小沢が「国民の生活が第一」というスローガンを掲げて民主党代表に就任してからもしばらくの間保っていた主張だ。民主党が大勝した2007年の参院選前にも、小沢は消費増税を民主党の公約に入れようか迷っていた時期があったが、結局入れなかった。その後、小沢は何も説明しないまま消費増税反対に舵を切り、2009年の「政権交代選挙」となった衆院選ではそれを大きく打ち出した。
しかし、その一方で相変わらず直接税減税を叫び続ける名古屋の「減税日本」を応援し続けたのだから、要するに小沢には一貫した経済政策がないということだ。
以上のような経緯があるのに、山本太郎や「薔薇マークキャンペーン」推進者が何も説明しないから、「薔薇マークキャンペーン=減税真理教」であるかのような誤解がまかり通っている。「薔薇マークキャンペーン」批判者のツイートを見ていると、同キャンペーンがまるで「減税日本」の同類であるかのように言われている。これは明らかに誤解だと思うけれども、これについても山本太郎や「薔薇マークキャンペーン」推進者が何も説明しないことに最大の原因があると私は考えている。
たとえば前記リンクの「マガジン9」の松尾匡へのインタビュー記事を読むと、記事の終わりに下記のように書かれている。
消費税増税はむしろ一番後回しでよくて、法人税を増税したり、累進所得の累進性を強化したりと、薔薇マークキャンペーンで提言しているように、大企業・富裕層への課税強化が優先されるべきだと思います。
記事はそれまで消費税増税の悪影響をずっと言い続けてきて、それなら税収を増やす方法についていつ言い出すかと思ったら、最後の最後になってやっと言った。この「大企業・富裕層への課税強化」というのは、かつての小沢一郎の主張や現在も河村たかしが言い続けていることとは正反対のベクトルを持っている。
それを付け足しのようにしか言わないから、「薔薇マークキャンペーン」が河村たかしのような「減税真理教」の同類であるかのようなツイートが広く流布され、それを信じる人たちを多数生み出してしまうのだ。
これは、松尾匡が自らに賛同してくれる山本太郎に忖度していることに大きな原因がある。また山本太郎は小沢一郎に忖度している。ついでに書くと、松尾匡は高橋洋一や田中秀臣に代表される「リフレ派右派」を強く批判できないという非常に大きな弱点もを持っている。
私は「薔薇マークキャンペーン」の方向性に基本的に賛同する立場の人間だが、現在のキャンペーンの発信のしかたにはあまりにも大きな問題があると思うので、ここに苦言を呈する次第。