kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

自民党が参院選の選挙公約に「10月の消費税増税」を明記した

 昨日(6/8)、読書ブログに公開した記事を書くのに時間がかかって書きそびれたのだが、自民党参院選の公約を発表し、目立たない形ではあるが今秋に予定通り消費税の増税を行うことが明記された。

 

https://www.asahi.com/articles/ASM675RZKM67UTFK01C.html

 

自民公約、10月の消費増税明記 「早期改憲」盛り込む

 

 自民党は7日、参院選公約を決定し、発表した。10月の消費税率10%への引き上げを明記したほか、憲法改正の実現を重点項目に掲げるなど、おおむね2017年衆院選公約を踏襲した内容となった。外交分野では党の主張をにじませた。

 

 参院選公約は「日本の明日を切り拓(ひら)く。」をキャッチフレーズに、①外交・防衛②経済③社会保障④地方⑤防災⑥憲法改正――の6項目を重点項目に挙げた。

 17年衆院選公約では、重点項目に入った教育無償化の財源として消費税率10%についても記したが、今回の重点項目からは消費税の文言が消えた。具体的な政策を網羅した「政策BANK」のなかで、「本年10月に消費税率を10%に引き上げます」と記した。

 党内では、消費増税に否定的な声があり、増税延期を掲げて衆院を解散する衆参同日選論もくすぶる。公約について議論した7日の総務会でも「景気・経済動向についていろんな議論がある。G20での米中の議論や、これから出てくる(経済指標の)数値を見ていく必要があるのではないか」との声が上がったという。

 岸田文雄政調会長は公約発表会見で、「いま現在、消費税は予定通り引き上げるべきだと考えている。政府はリーマン・ショック級の出来事がない限り引き上げると強調しているが、少なくとも現在、遭遇していない」と説明。衆参同日選になった場合の公約修正について問われると、「仮定に基づいて答えることは控えないといけない」とだけ述べた。

「力強い外交」、党内の不満に配慮か

 公約のトップに掲げたのは外交だ。安倍晋三首相とトランプ米大統領のゴルフ時の写真や、ロシアのプーチン大統領との写真をちりばめ、「力強い外交・防衛で、国益を守る」とうたう。

 特徴は、外務省が4月に公表した19年版外交青書と違いがあることだ。

 19年版外交青書は、18年版にあった「北方四島は日本に帰属する」との表現を削除。対北朝鮮でも「重大かつ差し迫った脅威」「圧力を最大限まで高めていく」との記述がなくなった。ロシアとの領土交渉進展への期待や、北朝鮮から前向きな対応を引き出すための対応とみられている。

 ところが、党公約では北方四島について「わが国固有の領土である」と明記。対北朝鮮についても「国際社会と結束して圧力を最大限に高める」と表記した。

 背景にあるのが、自民党内にくすぶる不満だ。先月の党の会合では、外交青書に対し、「(ロシアとの)交渉が何も進展していないのにメッセージだけ弱めている」「ロシアから文句を言われ、自発的に日本の基本原則を捨てた」などと批判が相次いだ。岸田氏も青書には異論があったとされ、7日の公約発表では「従来の政権与党の訴えていた中身、表現とまったく違いはない」と述べた。

改憲の期限は設けず

 憲法については17年公約と同様、9条への自衛隊明記を含む党の「改憲4項目」を列挙した。そのうえで、17年にあった「党内外の十分な議論を踏まえ」という部分を、「党内外での議論をさらに活発に行う」と変更。「衆参の憲法審査会において、国民のための憲法論議を丁寧に深める」との文言を加えた。

 安倍首相は20年の改正憲法施行を公言しているが、公約では期限は明示せず、「早期の憲法改正を目指す」との表現にとどめた。

 1月からの通常国会自民党改憲4項目の国会への提示をめざしたが、その前段階の国民投票法改正案をめぐって野党側との調整が不調に終わった。党幹部は「参院選を前に憲法論議は進まない」として参院選後にある次期国会で仕切り直す方針に転じている。

 参院選では、首相が改憲発議に必要な3分の2議席を確保できるかも一つの焦点となる。

自民党参院選公約のポイント

【外交・安全保障】

北朝鮮に対する制裁措置の厳格な実施とさらなる制裁の検討

○わが国固有の領土である北方領土問題の解決に向けた日ロ平和条約締結交渉を加速

普天間飛行場辺野古移設を着実に推進

憲法

○初めての憲法改正への取り組み強化

○党内外での議論をさらに活発に。衆参の憲法審査会で、憲法論議を丁寧に深めつつ、早期の憲法改正を目指す

消費税

○10月に消費税率を10%に引き上げ

○ポイント還元の実施、プレミアム付商品券の発行などにより対策

社会保障・子育て】

○人生100年時代へ「3つの100」を実現(人生100年型の年金▽100人100色の働き方改革▽保育受け入れ100%)

在職老齢年金の廃止・縮小

厚生年金の適用拡大

○勤労者皆社会保険の実現(社会保険の適用拡大)

【経済】

○中小企業・小規模事業者の第三者承継を含めた支援策の検討

原発・エネルギー】

原発依存度の可能な限りの低減。2050年に向けたエネルギー転換・脱炭素化

○立地自治体の理解と協力を得て原発を再稼働

 

朝日新聞デジタルより)

 

 普通に考えれば、これで安倍政権は今年10月の消費税増税を予定通り実施するとともに、衆参同日選挙をやる可能性が低くなったといえる。

 ただ、過去二度行われた衆参同日選挙の2回目は、中曽根康弘による「死んだふり解散」だった事実が頭に引っかかってはいる。あれは渡邉恒雄ナベツネ)の入れ知恵によるもので、土壇場まで「衆議院解散はない」と見せかけた中曽根が、突然衆議院を解散した。

 上記朝日新聞デジタルの長文記事も、よく読むと岸田文雄

衆参同日選になった場合の公約修正について問われると、「仮定に基づいて答えることは控えないといけない」とだけ述べた。

と言ったと書いている。また、この記事を書きながらBGMのように流している『サンデーモーニング』でも解散と衆参同日選挙の話をやっている(3番目の話題として取り上げられている)。

 しかし、私は消費税増税の撤回と解散・衆参同日選挙の可能性は低いと思う。それには理由がいくつかある。

 まず、消費税増税に関しては、既に消費税増税ありきで進んでいる事項が結構ある。また、安倍晋三は四選を視野に入れて財務省を敵に回したくないと思っているのではないか。さらに、仮に消費税増税を予定通り行うことを明らかにして参院選を戦っても十分自民党が勝てるくらい現在の野党に勢いがない。また、5月20日に発表された2019年1~3月期の実質国内総生産GDPでも予想に反してプラス材料になった。

 それから衆院解散については、これは誰も指摘していないが、安倍晋三には2017年に小池百合子(と前原誠司小沢一郎)を潰した「成功体験」が忘れられないのではないか。

 思えば、2016年の参院選前にも、安倍晋三衆院選との同日選挙にするのではないかとの声がかまびすしかった。しかし安倍は衆議院を解散しなかった。すると、衆院選の1か月後に行われた東京都知事選に当選した小池百合子のバブル人気が発生し、括弧付きの「リベラル」たちを「ワクワク」させた(笑)。その勢いは翌年夏の東京都議選で「都民ファ□ストの会」が自民党をKOするところまで続き、街宣に出た安倍晋三は罵声を浴びた。図に乗った小池百合子は、前原誠司小沢一郎と共謀して国政進出を図ったが、この局面で前年に安倍晋三衆議院を解散せず、衆参同日選挙を行わなかったことが効いた。安倍は小池一派が衆院選の準備が整わないうちに衆議院解散を打ち、小池一派を潰すとともに、前原誠司民進党を分裂させることにも成功した。こうして「安倍一強」体制がさらに確固たるものになったのだった。

 この成功体験があるから、今は解散権を温存しておきたいという気持ちが安倍晋三に働いても不思議はない。

 もちろん33年前の中曽根康弘にあやかりたいという気持ちの方が安倍晋三に強いことも十分あり得るし、その際に参院選の公約をちゃぶ台返しできるくらいの独裁権力を現在の安倍晋三は持ってしまっているから、そちらの可能性もあるが。

 現在のように権力を批判する言説が絶え果てた「崩壊の時代」においては、独裁権力者は何でもできてしまうという身も蓋もない結論に、今回もまた行き着いてしまった。