kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

西浦博教授が「アメリカが感染制御を止めた場合のリスク」を指摘/日本国内の新型コロナウイルス感染症の致死率が5.16%に上昇(2020/5/26)

 少し前にも書いたが、私は現在話題の前東京地検検事長・黒川弘務を懲戒処分にすべきかどうかとの議論にはたいして関心がない。少し前に書いた通り、私は下記『広島瀬戸内新聞ニュース』記事の第2案に賛成だからだ。

 

hiroseto.exblog.jp

 第2案は

おっさんの任期を延長したことが違法だったと認めるなら、5月1日にただのおっさんだったわけだから、懲戒の対象にはならない。そのかわり、2月7日の63歳の誕生日に遡って給料は返していただく。

 というものだ。安倍晋三は、これくらい検察に譲歩しなければ検察の許しを得ることなどできないということがなぜわからないのだろうか。安倍や菅義偉は未だに「閣議決定は間違っていなかった」などと虚勢を張っていて、これは要するに、チャンスがあればまたいつでも検察の人事を思い通りにやってやるぞ、という意味だ。こんな態度をとり続ける限り、河井夫妻の立件、それも少なくとも克行、おそらくは案里の逮捕も不可避だろう(但し逮捕は通常国会閉会後になるのではないかとは思う)。権力闘争の何たるかを知らない「21世紀のルイ16世またはチャウシェスク」の前途は限りなく暗い。

 前々から痛感していた通り、WHOにはよほど「安倍ジャパン」のマネーが行き渡っているのか、それとも欧米にしか関心がなくてアジア諸国はどうでも良いと思っているのか、日本に対する評価が異常に甘く、安倍政権はそれを利用しようとしているようだが、下記朝日新聞デジタルの記事にある通り、日本は欧米諸国と比較すると確かに新型コロナウイルス感染症の感染者及び死亡者は少なく抑えられてはいるが、中東を除くアジア・オセアニア諸国の中では下から数えて3番目とのことだ。日本より成績が悪いのはフィリピンとモルディブしかない。

 

www.asahi.com

 以下上記記事(有料だが無料部分がかなり長い)を引用する。

 

「不可解な謎」 欧米メディアが驚く、日本のコロナ対策

坂本進、半田尚子

 

 日本は新型コロナウイルスの流行抑止に成功していたのだろうか。各国のデータを分析し、人口10万人当たりの感染者数や検査件数、死者数を比べた。当初は日本の検査体制や、強制力のない緊急事態宣言の効果を疑問視していた欧米メディアは、現在の状況を驚きとともに伝えている。
 朝日新聞は主要7カ国(G7)について、それぞれ10万人当たりの累計感染者数と感染の有無を調べる検査件数を比較した。検査件数は各国の政府発表に基づいた。米国は各州の発表をまとめた民間の集計値を用いた。また、累計死者数は、世界的にみて比較的被害が抑えられているアジア・オセアニア地域の国々を選び、10万人当たりの人数を比べた。
 この結果、日本はG7で、10万人当たりの感染者数が13・2人で最も少なかった。一方、検査数も最少の212・8件で、最多のイタリアの約4%だった。英国は1日20万件の検査をめざし(日本の目標は1日2万件)、自宅などへ約80万件分の検査キットを郵送している。実際に個人が検査したかが不明なため、今回の比較時に郵送分は含めていない。ただ、含めた場合は1・5倍近い5013・0件まで増える。
 また、10万人当たりの死者数は、アジア・オセアニア地域の多くの国々で日本の0・64人より少なかった。たとえば、初期の水際対策が奏功した台湾の累計死者は7人で、10万人当たりでは0・03人だった。
 英オックスフォード大に拠点を置き、各国の感染データなどを集計している団体「Our World in Data」によると、日本は5月23日時点で100万人当たりの感染者数が世界208カ国・地域のうち多い順から136番目。同じく死者数は94番目だった。中東を除いたアジア地域で日本よりも死者数が多かったのはフィリピンとモルディブだけだ。
 一方、欧州疾病予防管理センター(ECDC)がまとめた各国データを朝日新聞が集計したところ、日本は、G7の中で最も感染拡大の速度を抑え込めていた。感染者が人口1千万人当たり1人以上になってからピークに達するまで、米国やフランス、ドイツが35日前後だったのに対し、日本は52日だった。
 また、G7で1日当たりの新規感染者数の推移をみると、最も多かった時期で、米国やイタリアは1千万人当たり900人を超えていたが、日本は50・9人(4月17日)だった。
 新型コロナウイルスを抑え込んだかに見える日本の状況を、海外メディアは驚きと共に伝えている。強制力のない外出自粛やPCR検査数の少なさにもかかわらず、日本で感染が広がらなかったことに注目し、「不可解な謎」「成功物語」などと報じている。(後略)

 

朝日新聞デジタル 2020年5月26日 11時00分 )

 

出典:https://www.asahi.com/articles/ASN5V3CQQN5TUHBI00S.html

 

 日本で問題だったのは、PCR検査数の少なさと病院のベッド数の不足だ。PCR検査の足りなさの指標になるのが致死率であって、新型コロナウイルス感染症の真の致死率は1%未満、多く見積もっても0.5%程度だと考えられるから、少なくとも現在発表されている死亡者数を陽性者数で割って得られる「見かけの致死率」を0.5%で割った数以上の倍率だけ、実際に感染した人がいると見積もられる。韓国の場合は2.4%を0.5%で割って得られる4.8倍という数字に、発表された感染者数1万1千人強を掛けた、約6万人以上感染者(回復者を含む)がいると思われるし、日本の場合は5.2%を0.5%で割った10倍強という数字に、発表された感染者数約1万7千人を掛けた約17万人以上の感染者がいると考えられる。もちろん、見逃された死亡者がいればこの数字はもっと多くなる。

 日本では一時東京都などでPCR検査の陽性率が高止まりして、検査数を増やしても陽性率が下がらない時期があった。明らかに検査数が不足していたのだ。また、今なお続く死亡者数の高止まりから、この感染者数の恐ろしさが実感される。ようやく退院できた梨田昌孝氏の例に典型的に見られるように、闘病が長く続く患者さんが多いために、ベッド数がすぐ満杯になってしまうのだ。現在異常な持ち上げられ方をしている大阪維新の会が、橋下徹の府知事及び市長時代にベッド数を削減しまくったことに対しては、橋下自身も認めていることでもあるし、もっと厳しく批判されなければならない。

 また、昨日もっとも気になったのは、西浦博教授がインタビューに答えて指摘した下記の懸念だった。

 

toyokeizai.net

 このインタビュー記事は長いので、私がとても気になった部分を抜粋して以下に紹介する。

 

8割おじさん・西浦教授が語る「コロナ新事実」
アメリカが感染拡大の制御を止める可能性

野村 明弘:東洋経済 解説部コラムニスト

 

(前略)集団免疫率が一般的な数値より低くなることが最近示された。具体的には従来の式に頼らずに定義を変えて、1回目の流行終了後、2回目の流行を起こさないときの閾値として集団免疫率を計算している。すると、1人当たりが生み出す2次感染者のばらつきが大きい場合は、基本再生産数2.5では、集団免疫率は60%でなく、20~40%くらいで済むことになる。これが4月27日付のイギリスの研究論文の内容だ。
また、年齢別の異質性を考慮した5月6日付の別の研究論文もある。こちらも集団免疫率は40%程度(基本再生産数2.5のとき)で済むという内容だ。こうした研究結果は、従来のように「人口の6割が感染しないと感染拡大は収まらない」と想定しなくてもよいことを意味する。これはかなり重要なことだ。


――ただ、20~40%といっても高い数値ですね。日本では、本当の感染者数は、PCR検査の陽性者数である確定感染者数の10倍以上いると言われますが、それでも20~40%よりは全然少ないでしょう。集団免疫率の推定値が下がったとしても、対策をせずに自然に集団免疫に達することに任せるという方向に転換するのは難しいのではないですか。

 

そのとおりだ。日本は現在、大規模になりかけた流行をいったん制御しつつある段階だが、抗体検査などの結果を踏まえると、おそらく全人口の1%に至るかそうでない程度のみが感染し免疫を持っている状態だろう。逆に言うと、国民の99%以上はまだ感受性を持ち、感染する可能性があるということだ。
しかし、集団免疫率の推定値が下がったということは、いつかどこかの国が戦略を大きく変えてしまう可能性があることを意味する。例えば、感染拡大の制御がうまくいっておらず、死者が多数出ていて、一方で経済の再開の要望が強い国ではありうる戦略転換だ。
具体的には、欧米で経済再開の動きが進むが、とくにアメリカではどんどんそちらに向かって政策が進んでいる。いずれ集団免疫を自然に獲得する方向に舵を切る可能性がある。


アメリカが感染制御を止めた場合のリスク

 

――もしそうなると、世界の新型コロナ対策の流れは変わりかねません。

 

ここからは数理疫学の専門分野を離れてしまうが、仮にアメリカが感染拡大の制御を諦めれば、経済を回すために他国にも「門戸を開けなさい」と迫るのではないだろうか。そうなれば、日本に影響がないはずはない。
もしそうなれば、日本国内でせっかく感染拡大を制御できていても、海外との人や物の移動が再スタートとなり、感染再拡大に火がつきかねない。
感受性人口がまだまだ膨大にいる日本と、感染者をたくさん持つ国が1週間に何便ものフライトでつながってしまうわけだから。実際に6月からこの動きはある程度始まりそうで、アメリカのエアラインがカリフォルニア州と日本を結ぶ週3便を再開するという話が出ている。
集団免疫率が従来の想定の半分強で済むことによって、海外の国の戦略が変わってしまい、日本独自の対策だけでは話が済まなくなる可能性がある。人の移動を遮断できないと、集団人口単位の政策は効果を失うのが、感染症対策の特徴だ。国際協調のあり方を含めて、この問題について多くの人に考えてもらいたいと思っている。(後略)

 

東洋経済オンライン 2020/05/26 5:25)

 

出典:https://toyokeizai.net/articles/-/352503?page=3,https://toyokeizai.net/articles/-/352503?page=4

  

 このインタビューはなかなか示唆に富んでいて興味深い。今回の新型コロナウイルス感染症で西浦教授が想定した基本再生産数2.5の場合、集団免疫を獲得した場合、つまり緊急事態宣言による人々の行動の制限などの対策をとらなかった場合の感染率は従来60%と想定されていた。これを日本の2018年の人口である1.265億人に当てはめると、感染者は7590万人になる。これに対して西浦教授が「対策を取らなかった場合の死者数」として当初示した数字は42万人だったから、単純に考えると、これを7590万人で割った0.55%という数字を西浦教授は想定していたことになる。やはり真の致死率はその程度なのだろう。

 ところが、基本再生産数が2.5の場合の集団免疫率は20%から40%程度であることが最近わかり、このことからアメリカなどが集団免疫を獲得する方向へと政策転換する可能性があるというのだ。

 安倍政権がトランプの言いなりであることを考えれば、上記引用文中赤字ボールドで示した部分は、大いに懸念されるところだというほかない。

 右翼のみならず左翼においても、西浦教授を「御用学者」として貶める人は少なくないが、私は間違った態度だと考えている。そういうことを言う人たちは、そもそも「指数関数的増加」の何たるかを理解していない論外の人たちであるというのが私の本音だが、もう少し虚心坦懐に専門家の意見に耳を傾けた方が良い。そして今、西浦教授は重大な懸念を表明している。

 上記の懸念を解消するためにも、安倍晋三には一日も早く内閣総辞職をしてもらうほかはない。

 

 NHKの報道によれば、昨日新たに確認された陽性者は30人、死亡者は9人で、累計はそれぞれ陽性者16662人に対して死亡者860人で、致死率は5.16%になった。下記はNHKニュースへのリンク。

 

www3.nhk.or.jp