石井妙子が書いた小池百合子の「女帝」本は3分の2ほど読んだ。同じ西宮・芦屋地域(いわゆる「阪神間」のイメージの中核をなす地域)を地盤とした政治家でも、故土井たか子はお嬢さん育ちで、小池百合子は成り上がり者なのだが、政治的立ち位置と出自とが一般のイメージとは逆になっている。もっともこれは珍しいことではなく、それは小池以上の「成り上がり者」である橋下徹が右翼にして新自由主義者であることを思えば不自然でも何でもない。
昨日も書いたが、橋下や小池のような「目的のためには手段を選ばない」人間に惹かれる人たちは多いようだ。私は「女帝」本に書かれた小池の冷酷非情な人間性は以前から知っていたつもりであって、実際3年前に小池が引き起こした「排除」騒動をその2か月前に予想してこの日記に書いたことは、自慢話として度々書いてきた。しかし、小池のようなはったりに満ちた、というよりはったりだけで成り立っているような人間が人々に「ワクワク」されるなどして支持される状態ばかりはいかんともしがたい。そろそろ日経以外のマスメディアが都知事選前半戦の情勢調査を発表する頃だろうが、それは間違いなく目を覆わんばかりの悲惨なものになる。
都知事選では小池に大きく引き離された状態での2位争いも注目されるが、この2位争いの片方も、小池同様はったりだけで成り立っているような人間だ。最近そのことがますますはっきりしてきた。たとえば彼は、以前から応援してくれていた岩上安身がちょっとMMTを批判しただけで、岩上から連絡が取れなくなってしまい、岩上がインタビューを申し込んでも、あらかじめ質問を通告してくれと言い出す始末だという。
難しいでしょうね。本命の小池氏が受ける可能性が低いですから。山本太郎氏陣営に、インタビュー取材を申し込んでいますが、質問を事前に送ってください、という回答。これでは、安倍総理や安倍内閣の大臣の会見と同じ。事前の質問どりで、回答が用意される。こんなこと、昔は言わなかった。 https://t.co/YhK5BaNxmY
— 岩上安身 (@iwakamiyasumi) 2020年6月23日
そもそも討論会を受けない小池と、質問を教えてくれ(そうでなければ出ない)という山本とは、私には五十歩百歩にしか見えない。
しかし、ネットでは山本の正体ないし変節(どちらかなのかはまだ見極めがつかない)に気づき始めた人たちも多いようだけれども、世間一般はどうかはわからない。小池「女帝」本で、元朝日新聞の故伊藤正孝(1936-1995)が小池がのし上がる過程で力を貸したことを知って、左派週刊誌だったはずの「朝日ジャーナル」の編集長はそんなことをやっていたのかと呆れたが、現在では昔からひそかな右派週刊誌として一部から悪評を買っていた「週刊朝日」*1が、都知事選告示後に山本太郎インタビュー記事を掲載して山本を「礼儀正しい気配りの人」などと持ち上げているらしい。おそらく同誌はインタビュー内容をあらかじめ山本太郎に通告していたのだろう。こんな記事は立ち読みする気にもならないが、どうせ典型的な提灯記事なのだろう。
昨日の記事に、玉木雄一郎が維新と某新選組にすり寄る発言をしたことを書いたが、今度は府中市の共産党市議・結城亮が嫌韓発言をしたあげくに共産党を「離党」して山本太郎を応援すると言い出したらしい。
魂消た。こんな日本共産党員もいたのか。
— usako (@usakojpn) 2020年6月25日
〈理由は、宇都宮候補が「従軍慰安婦少女像、強制徴用人像を日本の国会議事堂の前にたてて戦争犯罪の教訓を後代に残さなければなければならない」と韓国のマスコミで発言をされていること〉
日本共産党離党 府中市議会議員 結城亮 https://t.co/FtXByIKgfd
おそらく結城の離党届は認められずに除籍処分を受けると思われるが、少し前から「ポスト安倍」の時期には必ず訪れるだろうと予測されていたカオス(混沌)の状況が既に生じているようだ。
そういえば東京ではないが、京都府知事選や京都市長選で共産党の応援を受けていた福山和人も、東京都知事選では宇都宮健児ではなく山本太郎を応援しているらしい。このように、次々と呆れ返るほかない実態が浮かび上がってきている。
これも東京から離れるが、大阪府では新型コロナウイルス感染症の「8割削減」は間違っていた、府での感染のピークはその前に迎えていたではないか、などと言い出し、TBSのnews23がこれを取り上げていた。
だが、大阪では維新の府政・市政に対して厚労省からの強い指導があって、既に3月には外出自粛がされていたではないか。知事の吉村洋文が厚労省からの通達を誤読したのか、それとも誤読したふりをして不仲の兵庫県知事に当てつけたのか、阪神間、つまり兵庫県をターゲットにした自粛要請を出した一件もあった。そして現在は、新自由主義勢力らしく経済優先で、「人と人との接触を抑える」方針をターゲットにしている感がある。しかしそんな維新を、大阪人や阪神間の人間は熱心に支持している。小池百合子を支持する東京の人間ともどもどうしようもない。
安倍政権も専門家会議の廃止を決定した。これも、いかにも「経産省政権」らしい、経済第一・人命軽視の生き方だ。しかも、志位和夫によると専門家会議のメンバーたちも会議の廃止を知らされていなかったとのこと。
驚いたのは、政府が専門家会議の廃止を、専門家会議のメンバーが知らないもとで、決めたことだ。これは一体どういうことか? 組織を改廃するというなら、専門家会議のメンバーの方々が果たしてきた役割に敬意を払い、事前にお伝えするのが、人の道ではないか?
— 志位和夫 (@shiikazuo) 2020年6月25日
おそらく経産省の本音は、現在の東京都に見られるように感染者が増えたとしても、また「8割削減」などをやらされたらたまったものではない、というものであって、安倍政権の施策もそれを反映しているのだろう。もちろん仮説の検証が必要なのは当然だが、その検証が恣意的に行われてはならない。
長らく専門家会議を「御用」呼ばわりする傾向が「リベラル・左派」の間にも強く、彼らはこともあろうにトンデモ医師・上昌広の意見に耳を傾けるなどの誤りを犯してきたが、そろそろ自らの不明を恥じるべき時だ。
そもそも「8割削減」に効果がなかったとしたら、なぜ緊急事態宣言解除後に再び感染者が(特に東京都などで)増えているというのか。そういえば現在大阪府が飛びついている「『8割削減』には効果がなかった」とする説を真っ先に唱えたうちの1人が上昌広だった。上医師はもともと新自由主義的な立ち位置の人なのだが、「リベラル・左派」の人士の多くはこの事実をご存知ないようだ。
「崩壊の時代」の次に来るのは、長く続くかもしれない「混沌の時代」だろうと思う今日この頃。