大阪府や神戸市・阪神間では医療崩壊が深刻化し、「救える命が救えなくなっている」現状は、テレビのニュース等で連日報道されている通りだ。
首都圏ではまだ新規陽性者に占める凶悪なN501Yの比率が半分くらいらしいから*1、関西ほどN501Yの脅威に直面していないため、東京都に近畿3府県とともに緊急事態宣言が発出されても人々の危機感はさほどでもないように見えるが、首都圏でも危機はすぐそこまで迫っている。
東京都にある図書館の閲覧室や大型書店などは、近畿3府県ともどもさっそく今日から閉鎖だと思うが、昨日(4/24)それに備えて買い出しに出たらずいぶんな人出だった。土日で土曜日が通常通り、日曜日から緊急事態宣言となったら当然予想されたことだ。私自身も出掛けていながらこんなことを書くのも何だが、緊急事態宣言を土曜日からにしなかっただけでも、感染者を増やす効果は間違いなくあっただろう。
それよりもっと問題なのは、今回の緊急事態宣言発出に際して政府や東京都知事・小池百合子の最大の関心事は東京五輪開催前にIOC会長のトーマス・バッハの来日の都合に他ならなかったことだ。
以下に、一昨日(4/23)の日テレニュースから、同局の平本典昭政治部記者のコメントを引用する。
もう1つ気になるのは、『今回は延長できないんだ』と言い切った政府関係者の言葉です。この関係者が気にしていたのが、5月17日から予定されているIOCのバッハ会長の来日です。今週半ばに組織委員会の幹部が政府に『緊急事態の東京にバッハ会長を呼ぶわけにはいかない』と伝え、理解を得ていたそうです。五輪に向けて『延長したくない』という思いも見え隠れします
(4月23日『news zero』より)
出典:
https://news.yahoo.co.jp/articles/4601224a49f311cc7d5a9fcb16b07aa1c531518c?page=2
ただ、いずれのシナリオの裏表紙にも「五輪日程」の前提条件があったとみるのが自然だ。国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が5月中旬に来日する方向で調整が続けられており、政府関係者は「日本での動静が世界に情報発信される前に、(五輪に良い影響を与えない)宣言を終わらせておく必要があった」。実際、東京都の小池百合子知事も、バッハ氏を日本に迎える前に解除するスケジュールを政府側に打診していた。
(西日本新聞 2021/4/24 6:00)
一部には、小池は「五輪回避論」に転換したのではないかとの観測もあったが、それは誤りであって、相変わらず小池には東京五輪で自分が目立つことしか頭にないらしいことが、こういうニュースに接するとはっきりわかる。
これには小池と同類の新自由主義者である大阪府知事・吉村洋文も憮然としているらしく、大阪府には少なくとも3週間から1か月程度の緊急事態宣言が必要だと言っている。吉村は昨年春に「大阪には緊急事態宣言は必要なかった」と言った頃とは真逆(まぎゃく)のことを言っているのだが、あの吉村でさえそう言わざるを得ないほどN501Yの脅威はすさまじいということだ。大阪府では新規感染者数自体は頭打ちの傾向にはあるが、これまでに累積した感染者のうち一定の割合が今後重症化する分だけでも医療崩壊をさらに進めてしまう。これは本当の非常事態であり、さしもの吉村も今までと同じようにイキってばかりもいられなくなっているとみるべきだ。
N501Yの脅威については、イギリス在住の方が発した下記4件のツイートに説得力を感じる。
英変異型の感染力と医療への圧迫を目撃して人口の大部分にワクチン接種しないまま映画館や劇場を開放するほどブッ飛んだ国はまだないので科学的根拠はないのではないかと。日本が緊急事態宣言中に文化施設を開けるのはほぼ社会実験なので、かなり貴重な科学的データにはなりそう。。。 https://t.co/AXuBFm8y6q
— kazukazu88 (@kazukazu881) 2021年4月24日
文化が生きるために不可欠かどうかではなく(不可欠に決まっている)、人々が公共交通機関を使って移動するだけでも、社会機能の維持のために働かざるをえない人や高リスク層に感染を広げる可能性があるので、そのリスクを冒してでも開け続けるべきなのかどうかがポイントなので。
— kazukazu88 (@kazukazu881) 2021年4月24日
本当に英変異型は厄介なので、どこを開けるべきか議論するより、今は徹底的に人の移動を減らして、その間にワクチン打ちまくる、そういう政府を選ぶ方が良いですよとしか。。。大阪が医療崩壊しているのを目撃してて、日本の文化人・知識人が美術館開けろ、本屋開けろってぶっ飛びすぎ。
— kazukazu88 (@kazukazu881) 2021年4月24日
オリンピックの代わりに本屋や図書館や美術館になっただけで、議論の方向性は日本政府と変わらない、人々の安全や医療制度の維持の問題が二の次になっているって自覚があるにだろうか。。。
— kazukazu88 (@kazukazu881) 2021年4月24日
このあたりは、緊急事態宣言前の駆け込みで昨夕大型書店に買い込みに行った私自身*2にとっても耳の痛い話ではあるけれども。
しかし、日本国総理大臣や東京都知事らが、人々の安全や医療制度の維持よりも東京五輪の開催に固執していることは、誰の目にも明らかな事実だ。
最後に西浦博京大教授のツイートを再掲する。
Thomas Bach氏の来日が5月に予定されていて、それまでに宣言が終わるよう必死に政治調整しているのなら、僕はこの国って現時点で終わりなんだと思います。僕たちの代表は何を守ろうとしているのか。国民の生命と財産の保護はどうなるのか。どうか、どうか、根も葉もない噂話であって欲しいと思います。
— Hiroshi Nishiura (@nishiurah) 2021年4月21日